「税逃れ」をめぐる訴訟で、国税庁側の敗訴が相次いでいる。5月9日には、日本IBMグループ内での株取引を「租税回避のため」とした国税庁側の主張が東京地裁に退けられ、約1200億円の法人税課税が取り消された。同じ日、大阪高裁でも競馬で1億5500万円を儲けた男性の脱税事件で、国税側の主張が退けられ、5億7000万円の脱税額が5200万円に大幅減額された。

2つの判決が確定したら国は税金を返却したうえ、金利分を還付加算金として相手側に支払わねばならない。過去には加算金だけで400億円も支払ったケースも。支払い原資はむろん血税だ。

財政難の中、少しでも税金を取りたい国税庁の気持ちはわかるが、徴税の結果、一度国庫に収められた税金が利子付きで国庫から出ていくとしたら本末転倒だ。

「過去の敗訴は課税自体が無理筋といわれたものがほとんど。日本IBMについても国税庁内では“課税は難しい。課税して不服申し立て訴訟を起こされたら勝てない”という声が出ていた。判決には庁内に驚きはなく、負けは織り込み済みといった雰囲気でした。というのも、課税したIBMの株取引は取引当時の税制で認められたスキームだったからです」(全国紙の国税庁担当記者)

それならなぜ課税したのか。実は、IBMが使ったスキームはその後の法改正で使えなくなっていたのである。

「IBM側が会計処理した当時の法律だと非課税だったが、その後法律が変わったからという理由で課税したようなもの。2005年に海外在住の武富士創業者長男への財産贈与について、国税庁は約1330億円を追徴課税したが、これも負け戦は覚悟のうえ。予想通り最高裁で敗訴し1330億円プラス400億円の金利を長男側に払った。海外在住者への相続税は00年の法改正まで非課税で贈与は改正前の1999年に行われた。法的には不利だったが、国税側は“露骨な税逃れで金額も大きい”と主張し課税した。事件は大きく報じられ、同じ手法を使うと徴税されることが社会に浸透。国税側はそれで満足。今後も同じ狙いで無理筋でも課税するはず」(別の国税庁担当記者)

余分な加算金を負担させられる国民のことなど眼中になさそうだ。

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