出世は見込めず、そもそも会社の将来もどうなるやら。これからを考えるだけで、気持ちが滅入ってしまう――。ベストセラー『考えない練習』で読者から圧倒的な支持を得た名僧が、あなたの日頃の迷いに対して、考え方の筋道をわかりやすく説く。

思うように貯金ができない理由は「使ってしまうから」でしょう。「給料が少ないから貯まらない」と思うのは錯覚で、給料が多くても、たくさん使ってしまったら貯まりません。まずは「自分がなぜお金を使ってしまうのか」を考える必要があります。人は自分の力を実感しようとしてお金を使うことが多いのです。自分の消費は常日頃の「無力感」によるストレスを忘れようとしてのものではないかと、心の内を探ってみましょう。

概して現代人の消費は「ストレス解消のため」であることが多いように思われます。なかでも嗜好品の消費は、とくにストレス解消作用が大きいものです。たとえば、甘いものは精神をリラックスさせる働きがあり、お酒は神経を麻痺させます。なぜそうしたものが欲しくなるかというと、それだけ緊張している=ストレスがあるからです。

仏教的に申しますと、「欲望」は「苦しみ」から生じます。ストレスは心に苦痛を与えるもの。一方、欲望はそれを抱いたときにも満たしたときにも、心に大きな刺激を与えます。ゆえにストレスがたまると、その苦痛を紛らわそうとして、刺激をくれる欲望がわいてくるのです。

つまりストレスが大きくなればなるほど、欲望が増大することになります。ちなみに、嗜好品以上にストレス解消に役立つのが性行為で、人によっては性産業に散財することもあるでしょう。

このように見てきますと、無駄な消費を避けるためには欲望を減らすこと、それにはストレスフルな仕事のやり方を回避することも重要だとわかります。

休むときには頭を切り替えることが、仕事のストレス解消になります。スポーツや登山など身体を動かすアクティビティは頭の切り替えに有効です。なお、甘いものやお酒を飲食するなとは申しませんが、癖になるのは問題です。仕事帰りの一杯がパターン化すると、お酒によるストレス発散の快感を味わいたいがため、無意識のうちに仕事のストレスを増やしたりもするのでご用心ください。

月読寺住職・正現寺住職 小池龍之介
1978年生まれ。東京大学教養学部卒。正現寺(山口県)と月読寺(神奈川県)を往復しながら、自身の修行と一般向けに瞑想指導を続けている。『考えない練習』『ブッダにならう苦しまない練習』『もう、怒らない』など著書多数。