そうなれば“異次元の金融緩和”などせずとも、市中にお金が回るようになる。実需をともなっているので、ダブついていたモノも動き出して、現役世代の新しい雇用の場も生まれる。「自分たちが高齢になった場合に支えてくれる子どもを産んでいく必要があることに、現役世代が気づくきっかけになるかもしれません」と藻谷さんは話す。

最近、高齢者の仲間入りをした団塊の世代が、自分たちの親の世代から相続を受けるケースが増えている。ほとんどの場合、彼らはその相続した資産を使わずにため込んでしまう。そこで相続税の見直しを提案するのが学習院大学経済学部教授の鈴木亘さんである。

「毎年85兆円も発生している相続資産に対して、相続税収はたったの1兆4000億円。それならすべての相続資産に対して一律に15%の相続税を課税すれば、12兆7500億円の税収増につながります。消費税を5%引き上げた際の税収増に近い規模になるのです。そうでなければ、払い込んだ以上にもらっていた年金と同額分を、相続資産から戻してもらうことも検討してもいいのではないでしょうか」

永濱さん、藻谷さん、鈴木さんの3人の意見に共通しているのは、高齢者の間に退蔵された資産を還流させていこうということ。さらに高齢者から現役世代へ所得を移転させていくことも重要だ。それには団塊の世代のリタイアで浮いた人件費を現役世代に回していくことがポイントになる。年金の支給開始年齢引き上げにともなう定年延長や再雇用などで高齢者の雇用がいつまでも維持されたままだと、現役世代に雇用の機会が回ってこない。