2013年10月22日(火)

秋葉原はなぜカレーの街になったか

秋葉原☆マネタイズ【第30回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
梅本 克 うめもと・まさる
デジタルハリウッド大学客員准教授 Ph.D.(経済学)

梅本 克

1967年生まれ。1998年、ヴァンダービルト大学(米国テネシー州)卒。米国留学時より少女漫画の翻訳活動を通して日本文化の普及に努め、2005年にアジアアニメーション産業組織体(AAO)を立ち上げて、アジア各地でコンテンツ産業の育成や若手クリエイターの支援を行う。これまで国内外で多くのアニメ、ロリィタファッション、ヴィジュアル系など、日本のポップカルチャーに関わるイベントをプロデュースし、現在は秋葉原に活動拠点を置いて、新しい文化の創造と発信を通した地域活性化プロジェクトに携わる。趣味は仏像鑑賞とコスプレプロデュース。柔道二段と茶道石州流奥傳の資格を持つ。主な関心は秋葉原における趣味文化の経済学。

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梅本 克=文(デジタルハリウッド大学客員准教授)
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神保町と秋葉原の「カレー比率」は同じ

「どうぞ召し上がれ!」(コスプレイヤー=みるる、撮影=YU-SUKE)

旅先では、どこにでもある大手チェーン店ではなく、その地域にしかない飲食店に立ち寄ることが私の楽しみです。地元の飲食店を見れば、その地域の特徴が見えてくるからです。

秋葉原には多くの飲食店が集まっていますが、今ほど乱立するようになったのは、あまり昔の話ではありません。神田青果市場が秋葉原にあったときは、そこで働く人たち向けの飲食店が周辺に集まっていましたが、市場が1989年に大田区に移転すると、飲食店が一気に少なくなります。1996年にビデオで発売された秋葉原を舞台としたアニメの中で、「秋葉原は」「メシ屋が少ない」という合言葉が登場するくらい、秋葉原には飲食店が不足していました。2000年以降は、観光地化と再開発が進むにつれて急激に飲食店が増え始め、今の姿になっています。

秋葉原にはいろんな種類の飲食店がありますが、多く目につくのはカレー店です。秋葉原を含む神田はカレー激戦区と言われ、カレー専門店や名物カレーを持つ飲食店が数多くあります。なぜ神田にはカレー店が多いのか。その理由として「本を読みながら、片手で食べられるから」という通説があります。しかしこれは、古書街である神保町でなら説得力があるかもしれませんが、秋葉原ではどうもしっくりきません。私は秋葉原で本といえばマニアックな同人誌を思い浮かべます。貴重な「宝物」が食事中に汚れてしまってはたいへんなので、カレーを食べながら気軽に同人誌を読む姿は想像しがたいのです。

神保町と秋葉原のカレー店を実際に歩き回って調べてみました。神保町でカレーを扱う店は82店舗。秋葉原では110店舗ありました。古書街としての神保町エリアはおよそ東京ドーム7個分あり、秋葉原は約9個分の広さなので、面積あたりの店舗数はほぼ同じ数になります。

次に、「本を読みながら、片手でカレーが食べられる」のは喫茶店だろうと思い、カレーを提供する喫茶店を探しました。神保町には11店舗あり、全体の13%になります。それに対して、秋葉原には6店舗、全体の5%しかありません。反対に店内では落ち着いて読書ができないような大手チェーンのカレー店を探してみると、神保町は14店舗で17%になるのに対して、秋葉原は38店舗で35%もあります。やはり、読書をしながらカレーを食べるには、秋葉原よりも神保町の方が適しているのでしょう。

では、なぜ秋葉原にもカレー店が集まったのでしょうか? それは、その地域とカレーという料理の特徴が関わっているように思えます。

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