時事通信フォト=写真

中国共産党中央規律検査委員会書記 王岐山(ワン・チーシャン)
1948年、中国山西省生まれ。西北大学などで歴史学を専攻。88年中国農村信託投資公司総経理。93年中国人民銀行副総裁、94年中国人民建設銀行頭取。広東省副省長、海南省党委員会書記、北京市長などを経て、2007年中央政治局委員。12年より現職。


 

「尚方宝剣」。古代中国で、皇帝からこの剣を賦与された臣下は「先斬後奏の権」、つまり皇帝に諮らずとも独断で大臣を斬首刑に処す強権を得た。「トラもハエも退治する!」の掛け声で始まった習近平政権の反腐敗キャンペーンの陣頭指揮をとる王氏はこの剣を与えられた、と言われている。党内序列は6位だが実質は習近平総書記に次ぐ影響力を持つとも。

元筆頭副首相の姚依林の女婿で太子党(2代目政治家)に分類されるが、保守派ではない。家柄より実力でチャンスを勝ち取ってきた。大学では歴史学専攻、農村政策研究から金融畑に進み、アジア金融危機時の銀行改革や広東の不良債権処理の功績で中央政界に進出。国際会議では金融通として温家宝前首相がかすむ存在感を見せ、リーマン・ショック時は4兆元の財政出動という大胆な策で国内外を驚かせた。

習近平政権で政治局常務委員入り後は、金融・経済担当を外され、司法・汚職取り締まり担当となった。金融担当にすれば活躍しすぎて李克強首相が拗ねると懸念されたからだとか。だが金の流れの裏側を知ったこの男ほど汚職取り締まりに向いている人物はなかった。地方官僚から金融界、大国有企業幹部、大臣に至るまでと腐敗粛清のムチは容赦ない。地方では拷問死すら出た。目下のターゲットは周永康・前政法委書記(元政治局常務委)。不文律であった政治局常務委は罪に問われない、という共産党的伝統秩序への挑戦だ。

メディアにほとんど露出せず、政界の「怪才」とあだ名される男の本音がどこにあるかは、まだわからない。中国政治最大のがんである汚職利権構造に本気でメスを入れる党内改革の旗手との期待もある。だが政治の左旋回が見える中、恐怖政治の再来を予感する声もある。
 

(時事通信フォト=写真)
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