手帳の選び方、1週間の組み立て方法、自分の軸のつくり方……。時間管理の達人たちが試行錯誤の末にたどりついた実践的なテクニックと、その背景にあるセオリーを披露する。

▼田中和彦さんのメソッド

ワークライフバランスという言葉が普及したせいか、自分の時間を仕事とプライベートの2つに分けて考える人が増えてきました。しかし人生は2分法で切り分けられるほどシンプルではありません。会社で働く自分、遊んでいる自分以外にも、もっと多様な自分がいるはずです。

リクルートの副編集長時代は、分刻みで動いていたにもかかわらず、なんとか時間を捻出して映画のシナリオ学校に通っていました。そのときの自分は、仕事する自分でも、趣味を楽しむ自分でもない。「いつか映画の仕事をしたい」と願って地道に努力を続けていたもう1人の自分でした。

念願かない、いまでは映画のプロデュースも仕事にしています。夢が実現したのは、未来の自分に対して時間の投資を続けてきたから。忙しくなると目の前のことだけに気を取られがちですが、ときには長い時間軸で自分を見つめ直すことも必要だと思います。

いますぐ結果の出ないものに時間を費やすのは無駄だと感じる人もいるでしょう。しかし、結果的に無駄に終わったり、紆余曲折があってもいいと思っています。最近の若い人は、最短距離で正解を求めようとしすぎます。

あるトークライブで、歌手の矢沢永吉さんが「近道をしたら、近道に潰される」と言っていました。時間管理は、近道して楽をするためだけでなく、寄り道して人生を広げるためにも活用していただきたいですね。

田中和彦(プラネットファイブ代表取締役)
1958年生まれ。一橋大学卒業後、リクルートに入社。人事課長、広報室課長、転職情報誌4誌の編集長を歴任。映画プロデューサー、キネマ旬報社代表取締役を経て、現在は人材コンサルタント、映画、出版のコンテンツプロデューサー。