2013年10月1日(火)

この街は「観光立国」のモデル(後篇)

秋葉原☆マネタイズ【第27回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
梅本 克 うめもと・まさる
デジタルハリウッド大学客員准教授 Ph.D.(経済学)

梅本 克

1967年生まれ。1998年、ヴァンダービルト大学(米国テネシー州)卒。米国留学時より少女漫画の翻訳活動を通して日本文化の普及に努め、2005年にアジアアニメーション産業組織体(AAO)を立ち上げて、アジア各地でコンテンツ産業の育成や若手クリエイターの支援を行う。これまで国内外で多くのアニメ、ロリィタファッション、ヴィジュアル系など、日本のポップカルチャーに関わるイベントをプロデュースし、現在は秋葉原に活動拠点を置いて、新しい文化の創造と発信を通した地域活性化プロジェクトに携わる。趣味は仏像鑑賞とコスプレプロデュース。柔道二段と茶道石州流奥傳の資格を持つ。主な関心は秋葉原における趣味文化の経済学。

執筆記事一覧

梅本 克=文(デジタルハリウッド大学客員准教授)
1
nextpage

200万人の外国人観光客

「あなたと会うと景色が鮮やかに見える」(コスプレイヤー=みるる、撮影=龍道)

数台の大型バスが秋葉原の中央通り沿いに止まり、大勢の中国人旅行者がバスから降りて免税店へ急ぎ足で入っていきます。レトロゲームやアニメグッズの店舗では、欧米人たちが真剣に品定めをしています。駅前の免税店によると、今年7月には95か国からの訪日旅行者が店舗に訪れたそうです。

日本政府観光局(JNTO)の発表によると訪日外国人旅行者数は今年3月以降、毎月85万人を超え、年間で1000万人を超える可能性が高まってきました。NPO法人秋葉原観光推進協会(ATPA)によると、訪日旅行者の約2割は秋葉原に訪れているということなので、今年は200万人を超える外国人旅行者が秋葉原を訪れると見込まれます。

これまでも外国人旅行者を見かけることができた秋葉原ですが、特にここ5年間、急激に外国人旅行者の存在が目立ち始め、観光地化が進んでいます。特定地域の観光ビザ緩和措置による影響もありますが、お土産用の電化製品を購入するために日本の代表的な電気街である秋葉原に訪れるだけでなく、日本のポップカルチャーのメッカというイメージが「秋葉原ブランド」として海外に認知されてきたこともあります。最近では、免税店を訪れる外国人から「メイド服を着てみたいのですが、どこでレンタルできますか」という問い合わせが目立ってきたそうです。

2003年の小泉内閣の時、訪日外国人旅行者を倍増の1000万人に増やすという数値目標を掲げた「観光立国」宣言と共に、訪日観光を推進する「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が開始されてから、今年で10年になります。その間に、2007年には「観光立国推進基本法」が制定され、2008年には観光庁が設置されました。今年6月には「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」が策定され、さらに倍増の2000万人の訪日旅行者の実現を目標に掲げました。

日本政府が「観光立国」を目指し、訪日観光に力を入れる理由には、まず、経済的な理由があります。訪日観光では、海外の消費者が日本を訪れて日本の商品やサービスを購入するわけですから、輸出による外貨獲得と同じことです。ホテルや免税店のような観光に係わる業種の所得が増えるだけでなく、関連ビジネスでの新たな雇用と投資が増え、さらには、私たちの暮らしにつながる税収の増加や他の産業への波及効果にも貢献します。観光庁の訪日外国人消費動向調査によると2012年の訪日外国人の旅行消費額は1兆861億円。今後、少子高齢化と人口減少が進む日本において、訪日旅行客が増加し国内市場の縮小を補完してくれることは、とてもありがたいことです。

もうひとつの理由は、日本のブランド戦略、つまり日本にとって望ましいイメージを海外の人たちに持ってもらうためです。日本に居るとなかなか気づかないのですが、海外のメディアでは、日本の情報はほとんど目にすることはありません。今はインターネットで情報を簡単に得ることができますが、偏り、誤った情報も溢れてかえっています。日本について正しく知ってもらい、好感を持ってもらうことは、民間レベルでの交流から、日本製品の販促活動、外交まで、とても重要なのです。

PickUp