農村エリアの物件は不動産屋では買えない

私の住む山梨県は中山間地域が多いため、全国2位の空き家率となっています。県庁所在地の甲府駅から歩いて10分ぐらいのところで、既に空き家がけっこうあるのです。

2021年から「BASHIKA村」というコミュニティを主宰しています。その拠点として甲府駅から徒歩15分ぐらいのところにある山沿いのかなり広い土地を購入しました。いくつもの農家が高齢化で農業を辞めてしまったので空いた土地をまとめて購入したのですが、かなり安く買うことができました。地主から直接買ったら、評価額の10分の1以下の値段だったのですが、むしろ喜ばれました。

BASHIKA村で行ったイベントの様子
筆者提供
BASHIKA村で行ったイベントの様子

地方暮らしのブームは何回か来ています。最近ではちょうど団塊世代が一斉に定年退職した15年ぐらい前にブームがありました。その人たちが購入したのは別荘地が多かったため、高齢化により維持できなくなった別荘が現在売りに出ています。そこにコロナ禍での二拠点生活ブームが重なって、長野などの別荘が今人気で、出物があればすぐに売れる状況です。

ただ別荘は高いのです。農家の5倍も6倍もします。ではなぜ別荘ばかり売れるのかと言うと、不動産屋を介して売買されるからです。出物があるという情報がすぐに伝わるわけです。ところがずっと安い農村エリアの空き家はほとんど売れていません。これは一部不動産屋に回る物件もあるのですが、多くの物件は不動産屋に回らないからです。不動産屋を介さず、直接の口コミで「今度あそこが空き家になるみたいだよ」という情報が伝わってくるのです。

移住すれば空き家情報が入ってくる

だから私のように実際に農業エリアに住んで、農地を借りて農業している人間には情報が入ってきますが、都会の人にはなかなか情報が入らないことになります。元々安いということもありますが、さらに不動産屋に仲介手数料を払う必要がないので、情報さえあれば空き農家は安く手に入るのです。

住宅は私たちでも買えますが、農地については認定農業者しか買えません。したがってはじめは農地は借りることになります。ただ農業をするためには拠点が必要なので、拠点として空き家を購入することになります。

水上篤『資金300万円で農FIRE』(かんき出版)
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なぜ不動産屋に情報が回らないかと言うと、ここは閉鎖的と捉えられるかもしれませんが、地方の人はやはり「素性」をしっかり押さえておきたいんですね。「よそ者が来るのは仕方ないとしても素性のわからない人はごめんだ」という感覚です。都会の人のように簡単に引っ越しできないので、これは仕方のない話です(県によって温度差はありますが)。

とは言うものの、空き家問題はシビアな問題になってきています。これは漁村の事例ですが、漁港の周りに300軒の家があって、そのうち200軒が空き家というところがあります。そうなると海上保安庁などが警戒しているのは、空き家に外国人が勝手に住みつくことなのだそうです。素性が知れないどころの騒ぎではなく、そもそも勝手に空き家に住みつく人たちですから、仮にそれが日本人であったとしても治安の面で問題があると考えられます。

そういった問題の解決の糸口に農FIREがなればという気持ちもあるのです。

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