森林は「宝の山」

農地は富を生み出す「打ち出の小槌」ですが、地方にはさらに大きな「宝の山」が眠っています。それは森林です。

山梨県の県土面積は、4465.27km2ですが78%が森林で、そのうち人工林の割合は44%となっており、主な樹種はヒノキ、スギ、カラマツ、アカマツです。

立木に使用する木材1m3あたり500円、その間の付加価値を計算し住宅に使用する木材が1m3あたり8万円とすると、8万円/m3×15億3248万3066m2で約122兆5986億4531万円になります。全部がきれいな木材にならないとしても、それぐらいの資源が眠っているのです。しかしこの資源は利用されないままになっています。

どうして利用されないかと言うと、木材を切り出して、板にして、材木店を経由してハウスメーカーが購入して家を建てるとなると、最終的に木材1本が数千円になってしまうからです。だったら外国産の板を買ったほうが安いということで、日本の森林の木はずっと切られないで放置されていたのです。

ところがここに来て円安で輸入木材の価格が高騰しています。それでも流通コストを考えると国産の木材はまだ割に合いません。しかし流通コストがかからなければどうでしょうか。都会に直販の木材で家を建てるのは、結局運送費がかかることになりますが、DIYで家を建てたい山梨県内の人は、直接買えるなら買いたいと考えます。空き家は数十万円で買えますから、木材も自分で山から切ってきて、それでリノベーションすれば、ものすごく安く家を建てることができるからです。難しく聞こえるかもしれませんが、それほど難しいことでもありません。実際、私や私の知り合いはそうやって家を建てているのです。

林業
写真=iStock.com/blew_i
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家や農機具はタダ同然で手に入る

空き家になってしまった農家を買うと、嬉しいことにまだまだ使える農機具その他の機械も一緒に付いてきます。円安が進んでモノの値段は高くなる一方ですが、使える機械や家は放置され、タダ同然で手に入るのです。

空き家とか放置農地などと聞くと「負の遺産」、もっと言えば「ゴミ」と思うかもしれませんが、そういうものを積極的に探して、新たな価値を生むように作り直す――いわば「戦略的ゴミ拾い」が農FIREの秘訣の一つです。私も4万円で購入した機械で、年間1000万円以上の売りが立っています。タダ同然で手に入れた機械がまだまだ使えて、しかも富を生み出してくれるのです。

農業にも補助金はありますが、それを使おうとすると最新の機械を買うことになります。そこで銀行がお金を貸してくれるのですが、気がつけばとても返せないような金額になっていることがよくあります。だからまだまだ使える機械があれば、壊れているところを修理して、積極的に活用することを勧めたいのです。

また今はメルカリ等の二次流通が発達していますから、中古品を安く手に入れることが本当に簡単にできるようになりました。あるいは最新のテクノロジーを活用したい場合でも、たとえばIoTのセンサーは秋葉原などで安く手に入りますし、それらを制御するコンピューターであるRaspberry Pi(通称、ラズパイ)も新品が数千円で購入できます。IoTのシステムを自作している人は多く、意外とハードルは低いのです。

いろいろなモノが安く手に入るわけで、利用しないともったいないと言えます。

ちなみに私が4万円で買った機械は、スチームコンベクションオーブン(スチコン)と呼ばれるものです。温度管理が完璧にできるため、ホテルやフランス料理店などで食材をムラなくきれいに焼くのに使われている、まさにプロ用の機械です。家庭用だと数万円のものもありますが、業務用は数十万円から百万円以上します。私が購入したのはもちろん業務用で、運営する店舗や加工場で大活躍しています。