テレビ局の名物社員の退社がたびたびニュースになっている。テレビ業界でなにが起きているのか。元テレビ東京社員で桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「人気番組を作ってきた実力者ほどテレビ局を離れつつある。その直接の原因はYouTubeやNetflixの台頭ではない」という――。

テレビ界の人材流出が止まらない

私は、プレジデントオンラインで2回にわたって、ドラマ「セクシー田中さん」問題を検証してきた。なぜテレビは原作を改変したのか――。そこにはテレビ局の構造的な欠陥やクリエイターの劣化という原因が潜んでいることを指摘した。

第1回は、「マネタイズ」や「視聴率主義」「ドラマ偏重」、第2回は「リスクマネージメント」や「想像力」の欠如などの理由を挙げた。

だが、テレビ業界はいまもっと大きな問題に直面している。それは「人材流出」である。テレビ局を辞める有力社員が後を絶たないのだ。番組というコンテンツを人の力で創り出すテレビ局にとって、人材がいなくなることは死活問題である。私はそういった「人材流出」による「人材不足」もドラマ「セクシー田中さん」問題が起こった大きな理由のひとつであると考えている。

ジンバルカメラオペレーターのシルエット
写真=iStock.com/welcomia
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そこで今回は、テレビからどんどん有力な人材が離れてゆく理由とその背景に迫ってみたい。その際に、以下の視点に沿って分析をおこなってゆく。視点を決めることで、問題の輪郭がよりクリアに見えてくるだろう。

① 2022年、23年に人材流出が集中したのはなぜか?
② 辞めた人の収入は? テレビ局を辞めるともうかるのか?

キー局アナ、有名テレビマンが続々退社

昨年2023年は、テレビ局人気アナウンサーの退社ラッシュが続いた。フジテレビの三田友梨佳氏、NHKの武田真一氏、テレビ東京の森香澄氏、朝日放送のヒロド歩美氏、日本テレビの篠原光氏、みな各局の看板アナである。

私が在職していたテレビ東京においても、2021年に「ゴッドタン」の佐久間宣行氏、2022年に「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の上出遼平氏、2023年に「家、ついて行ってイイですか?」の高橋弘樹氏、「YOUは何しに日本へ?」の村上徹夫氏が退社した。学生が働きたい企業「就職ブランドランキング」で何度も全企業中1位を獲ったフジテレビにおいても、年間で5人以上の自己都合退職者が出ているという。

なぜ「大物P」「名物社員」と言われるテレビマンたちが次々とテレビ局から離脱しているのか。この現象は、2022年から23年に顕著化している。では、なぜ2022年、23年に人材流出が集中したのか。最初に挙げた、①の視点による検証である。

私はその原因は、「コロナ禍」にあると見ている。