【入稿用】FV_公認会計士_資格取得編

医師、弁護士と並んで「日本の三大国家資格」といわれる公認会計士。ここ数年、公認会計士試験の受験者は右肩上がりに増えている。その中でも全合格者の6割以上を輩出しているのが、公認会計士試験受験指導のトップ校で東京・新宿に本拠を置く「CPA会計学院」だ。ビジネスパーソンが今後のキャリアを考えるとき、公認会計士試験の受験は選択肢の一つとなりうるのか。同校を運営するCPAエクセレントパートナーズ経営陣に、公認会計士試験に関する最新情報と今後の見立てについて聞いた。

意外と知らない!? 公認会計士試験とは

近年、公認会計士試験の人気は右肩上がりである。公認会計士・監査審査会によれば、2回の短答式試験のいずれかに出願した受験者数は2015年の1万人強から2023年には2万人を超え、2024年には21,573人と過去10年で最多となった(2024年時点)。中でも受験者数が急増したのは、新型コロナ禍が落ち着いた2022年度のことだ。それまで年間1万4,000人程度だった受験者数が、同年度には1万8,000人以上へと大幅に増加している。

【入稿用】会計士1
※出願者数:第Ⅰ回短答式試験、第Ⅱ回短答式試験のいずれにも願書を提出した受験者を名寄せして集計したもの(人)
※最終合格率:論文式試験合格者数/願書提出者数(%)
※公認会計士・監査審査会「公認会計士試験合格者調」(平成27年~令和6年)とCPAエクセレントパートナーズへの取材を基に編集部作成


「CPA会計学院は2001年創設で、公認会計士講座として通学コース、通信コース、併用コースの3コースを提供しています。新型コロナ禍もあって2020年以降は通信コースの受講生も増え、当学院の公認会計士試験合格者は2024年度には973名、全合格者の60.7%を占めるまでになりました」

そう説明してくれるのは、公認会計士資格スクール「CPA会計学院」を運営するCPAエクセレントパートナーズの取締役、齊藤慶三資格取得支援事業本部長だ。

同社ではほかにも簿記や会計ファイナンスを無料で学べるeラーニング「CPAラーニング」を提供し、会計ファイナンス人材特化型求人サイト「CPAジョブズ」や、会計ファイナンス人材の生涯支援プラットフォーム「CPASS」を展開するなど、会計ファイナンス人材の育成とキャリア支援に注力している。

「公認会計士試験は一次試験にあたるマークシート方式の短答式試験と、二次試験として計算問題や記述問題を含む論文式試験からなります。短答式試験は5月と12月の年2回、論文式試験は8月に行われます」と齊藤取締役。

ここ数年の短答式試験の合格率は12%弱、論文式試験は30%台後半で、トータル合格率は令和6年度の場合、7.4%という難関試験だ。また正式に公認会計士として認められるには公認会計士試験合格に加え、3年間の実務経験と修了考査の合格が必要になる。

試験人気の背景には「働き方の変容」も

公認会計士試験の特徴の一つは、受験者数の増減にかかわらず合格者数は社会からの公認会計士に対するニーズにより決定されるため、合格できるかどうかは相対評価であること。そのため近年の受験者数増加を受けて合格率は低下し、2024年の7.4%は過去10年で最低となっている。

「受験者増加の背景には、新型コロナの影響があります。大学の部活動やサークル活動が制限され、アルバイトもできなくなって時間を持て余した学生が、『せっかくなら資格を取ろう』と考え、受験者が増えたとみられます」(齊藤取締役)

学生だけでなく社会人の受験者も増えており、そこにもコロナ禍の影響がある。

「リモート勤務の普及で通勤時間が減り、自分のキャリアについて考える余裕が生まれ、『この機会に資格を取っておこう』と考える人が増えたようです」(同)

公認会計士試験は受験まで2年かけて学習する人が多く、CPA会計学院でも2年コースが中心だ。このため新型コロナが拡大して対面授業が中止になった2020年の2年後から受験者数が急増したとみられる。そして増加傾向は現在も継続している。

コロナ禍はまた、公認会計士試験講座における対面から通信への転換を促した。CPA会計学院では現在、東京を中心に5つの校舎を展開しているが、通学コースと通信コースで、学べる内容やカリキュラムはほぼ同じになっている。

「通学コースと通信コースの違いはライブ受講の回数に制限があるかどうか、校舎の教室を利用できるかどうか、教材を郵送で受け取るか校舎で受け取るかといったわずかな差にすぎません。通信型の学習が主流となったことで、社会人でも継続的に学びやすい環境が整ってきたと思います」(同)

社会人受験生のポジションとリアル

通信型が主流となったとはいえ、公認会計士試験合格に必要な勉強時間は3,000~5,000時間とされ、仕事と勉強を両立させなければならない社会人にとって、かなりハードルが高い。

公認会計士試験の合格者の平均年齢はここ数年、24歳台数カ月で落ち着いている。そこからもわかるように、多くの受験者は大学在学中から学習を始め、卒業前後に合格を果たしている。

「受験者全体の傾向としても、10代で勉強を始めるなど、より若い世代の割合が増えています」(同)

CPA会計学院が公認会計士を目指す理由について入学者に行ったアンケートによれば、学生の受験生の場合、「公認会計士は高収入で安定しているから」という回答が多かった。「もし就職した企業でうまくいかなくても、資格があれば他の道で生きていける」というリスクヘッジも動機としてあるようだ。

一方、同じアンケートでも社会人や大学卒業後の受験生の場合、「資格を取得することにより、様々なキャリアへの挑戦の道が拓ける」という選択肢の広がりに魅力を感じる人が多かった。

「社会人受験生の場合、就職後に『今の仕事が思っていたのと違った』『資格を取って別の道に進みたい』と考え、24、5歳から勉強を始める層が一定数います。また公務員など社会人として7~8年勤めた後、『資格を取って新たな道に進みたい』と考え、30歳ぐらいから勉強を始めるケースもあります」(同)

合格するための能力と活躍するための能力は異なる

公認会計士試験は、どのような人に向いているだろうか。

「勉強が長期にわたるので、まずはコツコツと学習を続けられる人ということになります。それには向上心が原動力となってきます」(同)

必要な能力としては学習期間が長期にわたるため、学習計画を立て、それを実行していく力。そして「自分はここが弱いな」と気づいたらその部分を重点的に復習するなど、必要に応じて計画を柔軟に修正していく力だという。

「ただ試験に合格するための能力と、合格後に活躍するための能力は少し異なります。合格後に活躍する人の特徴としては、会計そのものというよりビジネス全体に関心があるという点が挙げられます。企業のビジネスモデルや収益構造に興味を持ち、どうやって利益が生まれるのかというお金の流れを理解している人の方が社会で活躍している割合が高い気がします」と齊藤取締役は分析する。

「文系・理系で言えば、現在の公認会計士試験受験生の大半は文系で、社会人受験生もほぼ文系出身者です。会計やファイナンスでは数字を扱いますが、基本的に四則計算が中心で、文系でも問題なく対応できます。理系出身の受験生が少ないのは、文系出身の受験生と比べて理論や技術への関心が高く、ビジネスへの関心が薄い傾向があるからかもしれません。ただ『理系出身で公認会計士試験に合格した人は優秀な人が多い』と言われていますし、技術のわかる会計ファイナンス人材に対しては社会的なニーズも強くあります。高専卒で公認会計士となり、活躍している人もいますよ」

社会人受験に追い風? 公認会計士試験のバランス調整

2025年6月に公認会計士・監査審査会から公表された方針によれば、今後は短答式試験の合格率を高め、論文式試験の合格率を相対的に下げる方向でバランス調整が行われる。

公認会計士試験のうち、一次の短答式試験は全科目を一度に合格しなければならない。大量の暗記が必要で、試験直前の詰め込み学習も重要になる。時間を確保しやすい学生に有利な試験といえる。

一方、論文式試験は科目合格制も採用されているため、短答式試験に合格したあと、3年間のうちに1科目ずつ合格することもできる。勉強時間に制限がある社会人にとっては短答式試験に比べ学習計画を立てやすい試験といえる。

「管轄官庁である金融庁も、学生だけでなく、社会人をはじめとする多様な層の方が公認会計士を目指すことを望んでいます。試験制度の見直しも、そうした多様性を促す意図を反映したものであり、我々としても前向きに受け止めています」(同)

実務で多忙な社会人にとっても、今後は公認会計士試験は以前より挑戦しやすい試験環境となるとみられている。決して生易しい道ではないが、公認会計士という仕事、会計ファイナンスという分野に興味がある人は、ビジネスパーソンの今後のキャリアの一つとして、早い段階で具体的に検討してみる価値はあるだろう。

(取材協力=齊藤慶三 執筆=久保田正志 図版作成=大橋昭一)