睡眠の質を上げてくれる「腸活」とは何か。スリープコーチの角谷リョウさんは「腸は脳と密接に結びついているため、腸内環境を整えることが快眠の重要なカギとなる。『腸活』は毎日無理なく続けられることが大事」という――。

※本稿は、角谷リョウ、サトウ未来『働く女子のための睡眠革命』(光文社)の一部を再編集したものです。

目を覚ました後、ベッドで伸びる女性
写真=iStock.com/oatawa
※写真はイメージです

整腸剤で手っ取り早く腸内改善

腸内環境を改善することは、質の良い睡眠に深く関わっています。

じつは、この「腸活」にも、簡単なチートテクがあるのです。

それは「整腸剤を1日3回飲む」だけ!

非常に簡単ではありますが、腸内環境を改善する方法としては折り紙つき。なにせ、毎日飲むだけで善玉菌を腸へと送り込めるのですから。

もちろん腸内環境をよくする食事も大事ですが、最優先は「毎日無理なく続ける」こと。

もうすでに毎日じゅうぶんがんばっているあなたですから、とりあえず「飲むだけ」でいい整腸剤に頼るのもアリなのでは?

「薬を飲む」ことに抵抗を感じるかもしれませんが、整腸剤は、胃腸が不調な人にまずは処方するという医師もいるほど、効果的で安全性の高いもの。腸を刺激するわけではなく、もとから腸にある菌を成分とした薬です。

さらにいえば、近年「サプリメントの健康効果は科学的に証明されていない」という見方が大きくなってきています。

効果があやふやで高額な美容サプリを飲み続けるなら、手ごろな金額の整腸剤で腸を整えるほうが、よほど合理的ではないでしょうか。1カ月分で1000円程度と、家計にもやさしい価格で手に入りますよ。

くだものや肉類はセロトニンを増やす

市販の整腸剤には、菌種(乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌)やその配合の異なる、さまざまな商品があります。

とりわけおすすめは「酪酸菌(宮入菌)」入り。腸内を弱酸性にする酪酸をつくり出すことは、この酪酸菌にしかできません。悪玉菌を抑え、善玉菌がすみやすい環境をつくるのに役立つのが酪酸菌なのです。エラい!

整腸剤は便秘薬や下痢止めとは別ものですから、選ぶ際は間違えないようご注意くださいね。少なくとも1カ月は続けて、腸の調子をチェックしてみましょう。

ところで、20代のころと体型が変わってきたことを気にして、くだものや肉類を制限していませんか?

もしもそうなら、睡眠のためには間違いなく「もったいない」!

なぜならくだものや肉には、食べるだけで“セロトニンを増やす”とされる食材が含まれているからです。特にセロトニンの材料となる「トリプトファン」や、セロトニンがつくられるのを助ける「ビタミンB6」は、積極的にとっていきたいですね。

“セロトニン・フレンドリー”なメニュー

まず、なんといってもおすすめは「バナナ」。

トリプトファンやビタミンB6、善玉菌のエサとなる食物繊維などが含まれた、腸活界の“優秀選手”。しかも「安い・簡単・持ち歩ける」の継続しやすさ“3冠王”!

セロトニンを増やすためには特に、朝に食べるのが効果的とされています。時間のない朝でも、バナナ1本くらいならなんとか食べられそうではないですか?

また、トリプトファンは動物性タンパク質にも多く含まれるので、牛肉(特に赤身肉)や鶏むね肉、赤身魚などもおすすめ。「肉を食べると胃もたれする」という人は、胃腸がかなり弱っている可能性があるので、まずは卵をファーストチョイスにしてみても。

「毎朝、卵料理(目玉焼き、卵焼きなど)を取り入れる」とルールを決めてしまえば、メニューを考える手間も省けて続けやすくなりそうです。

果糖やカロリーを気にする人がいるかもしれませんが、ここで挙げた食材は食物繊維を含んでいたり、代謝を上げる効果があったりするため、太りにくいと考えられます。先入観によるダイエットよりも“セロトニン・フレンドリー”な食事を優先しましょう。

バナナと卵
写真=iStock.com/anujaree
※写真はイメージです

セロトニンを出しやすい食材ベスト4

手っ取り早く腸に善玉菌を送り込める整腸剤をファーストチョイスとしておすすめしましたが、より自然なかたちで食事からとりたいという人に、ぜひ取り入れてほしい食材があります。

まずは「オリーブオイル」。香りの作用がセロトニンの分泌を促します。腸の働きをよくして便をなめらかにし、便秘を防いでくれる役割も! 調理用の油として、バターや植物油から替えてみましょう。加熱せずそのまま野菜にかけて塩を振れば、ドレッシング代わりにもなります。

乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を直接摂取できる「ヨーグルト」も、継続してとりたい食材です。とりわけ「手作り」はおすすめ。市販の高機能ヨーグルト1カップと牛乳1Lを混ぜたら、あとはヨーグルトメーカーにおまかせ(実働1分!)。市販品の菌はそのままに砂糖の量を抑えられるので、オリゴ糖などで甘みを加えてもいいですね。手作りによって「いつでも冷蔵庫にヨーグルトがある」状態にしておけば、ラクにルーティン化できますよ。

菌そのものをとれるのは「納豆」も同じ。納豆に含まれる納豆菌は悪玉菌を抑えたり、乳酸菌のエサとなるオリゴ糖をつくったりと、腸活の心強い味方です。粒をよくかんで食べましょう。

最後に、砂糖の代替品として「オリゴ糖」を挙げておきます。はちみつもよいのですが、腸でエサとなって善玉菌を増やしてくれるオリゴ糖がモアベター! 消化吸収されずに大腸まで届くので、血糖値が上がりにくく、エネルギーに変わりにくいのもポイントです。

「よくかむ」ことを食事のお約束に

セロトニンを出しやすい「食べもの」の次は「食べ方」のお話。あなたは食事の際、ひと口ずつよくかんで食べていますか?

角谷リョウ、サトウ未来『働く女子のための睡眠革命』(光文社)
角谷リョウ、サトウ未来『働く女子のための睡眠革命』(光文社)

「当たり前でしょ」とツッコんだ人、それがそう当たり前でもないのです。特に女性の間でやわらかいパンや“とろける食感”が人気の今、よく思い返せば「しっかりとかむ」機会は減っているはずです。

セミナーで「朝食のパンをごはんに替えてみて」とアドバイスすると、とてもつらく感じる人がいます。それくらい、やわらかいパンに慣れた人が粒食のごはんに切り替えるのには、労力がいるということ。

しかし毎食「しっかりとかむ」ことは、セロトニンを出すのにとても有効なのです。

「食事への感謝」もセロトニンの味方

20分ガムをかんだらセロトニンの分泌量が増え、メンタルが上向いたという実験結果もあります。ですから、まずはいつもの食事を「ひと口ごとにしっかりとかむ」ことを意識づけたいですね。

じつは中高齢男性よりも20~30代の女性のほうが口臭が深刻だという調査結果があるのですが、よくかんでたっぷり唾液を出すと、口臭予防にもなるというおまけつきです(笑)。

とはいえ「よくかむ」ことは単純に思えて、じつは難易度の高いアイデアのひとつです。ぜひともトライしてほしいですが、なかなか難しいという人は、まずは「食事の前後にあいさつをする」ことから始めてみて。

なんと「いただきます」「ごちそうさま」と声に出すだけでも、セロトニンの分泌が促されやすくなります。

「感謝する」という行為は、それほど脳にプラスの作用をもたらすのですね。だまされたと思ってぜひ!

女性
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです