睡眠の質を上げるコツは何か。数多くのビジネスパーソンのスリープコーチを務める角谷リョウさんは「誰にでもできる身近な方法がある。それは“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの分泌を促すこと」という――。

※本稿は、角谷リョウ、サトウ未来『働く女子のための睡眠革命』(光文社)の一部を再編集したものです。

人工知能のコンセプト
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幸福は「3段重ね」でできている

まずは結論からお伝えします。

あなたの人生のモヤモヤを振り払い、元気ハツラツで幸せな毎日を手に入れるたったひとつの答え。

それは、「セロトニンを出す」。

ただこれだけ! 今日からつらいとき、眠いとき、何かにチャレンジしているとき、幸せってなんだっけ? と遠い目で思ったら「セロトニンを出す!」と唱えてください。とにかく基本にして最大の目標、そして最適解である「セロトニン」の5文字を脳に強く焼きつけましょう。

さて、いきなりですが「幸福には種類があり、3つの段階を順に追うことではじめて得られる」とご存じですか?

【図表1】幸せの三段重理論
出典=『働く女子のための睡眠革命』(光文社)より

簡単にいえば、種類の違う3つの幸福を3→2→1と順を追ってかなえていくことで、はじめてすべてが手に入る――これは精神科医・作家の樺沢かばさわ紫苑しおん氏が提唱した考え方で「幸せの三段重理論」と呼ばれています。

「セロトニン」「オキシトシン」「ドーパミン」はそれぞれ脳内の神経伝達物質で、別名“幸せホルモン”とも呼ばれます。これら3つのホルモンがしっかりと分泌されてこそ真の幸せを感じられている状態で、それをかなえるためには優先順位があるというわけです。

“自分ファースト”に生きるのが最短ルート

仕事ができても、家庭が崩壊していたら意味がありません。家族と仲よしでも、健康をないがしろにしていたら長い時間をともに過ごせません。そもそも健康でなかったら、人間関係を築く余裕も仕事に精を出す底力も生まれません。

真の幸福を手に入れたいなら、何をおいてもあなたの心身をリカバーすることが最優先なのです。

多くの人が間違いやすいのが、この「順序」。

現代女性の多くは、今おかれた環境で「仕事の結果を出したい」「忙しくても家族を大事にしたい」……そう願っています。

だからといって「私が身を削って仕事・家事・育児・介護をがんばりさえすればいい」は、本当の解決策にはなりません。

「自分が心身ともに健康である」ことこそが第1段階で、それをクリアしなければ、家族との関係も、仕事での成功も手に入れることはできない。

つまり、すべての幸せを手に入れる最短ルートは“自分ファースト”に生きることなのです。

無理なく始められる“セロトニン生活”

セロトニンは精神を安定させるなど、心身の健康に重要な働きをします。また“睡眠ホルモン”と呼ばれる「メラトニン」の材料にもなる=「しっかりと寝て心身をリカバーする」のに欠かせない存在でもあります。

そしてなにより「セロトニンは出しやすい」!

じつはセロトニンは、環境や食生活を少し意識するだけで簡単に分泌されます。なんなら「あ~、お風呂って気持ちいい~♥」程度でもちゃんと顔を出してくれる、律儀な(?)ホルモンなのです。

●寝室を真っ暗にする
●アロマを楽しむ
●ぬいぐるみを抱きしめる
●整腸剤を毎日飲む
●朝の光を浴びながら歩く
●ゆっくりとお風呂に入る

こんなレベル。ぶっちゃけ「意外と簡単じゃん?」と思いませんか? だから“セロトニン生活”は無理なく始められるうえに、効果も感じやすいのです。

晴れた日にベッドでストレッチ
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セロトニンは“友”を連れてくる

さらに、セロトニンを分泌させる生活は、ほかの2つのホルモン「オキシトシン」「ドーパミン」の分泌をも引き連れてきます。

たとえば「アロマを楽しむ」「ぬいぐるみを抱きしめる」などのリラックス効果をもたらす行動は、そもそもオキシトシンの分泌にも深く影響していますし、オキシトシンが分泌されると、やる気をみなぎらせるドーパミンまで伴うという好循環に突入するのです。

先述の例のように「セロトニンが少ないのにドーパミンだけが先走っている」と、体力が気力に追いつかず疲れはててしまいますが、セロトニンもしっかりと分泌されたうえでなら話は別。何かの依存症に陥ったりメンタルダウンしたりすることなく、ドーパミンのメリットだけを受け取ることができます。

セロトニンの分泌だけを意識して生活すれば、オキシトシンとドーパミンも勝手についてくる。お得ですね(笑)。

3つの幸福すべてを手に入れる第1歩こそがセロトニンだという意味が、わかっていただけたでしょうか。

セロトニンを出すには「順序」がすべて

そんなセロトニンを分泌しやすくするポイントは3つ。「環境づくり」「腸活」「温活」です。

前節で挙げたのはほんの一例ですが、これから紹介するアイデアは、おそらく目新しいものではないはず。なんなら過去に試したことがあるかもしれませんね。

でもそれ、今も継続できていますか? できているとしたら、それらのおかげでぐっすり眠れていますか?

「健康によさそうだからやってはみたけど、効果がよくわからないからいつの間にかやめてしまった」……たいていはこのパターンではないでしょうか。

なぜいまいち変化を感じられなかったのか。それは「順序」を気にしていないからです。

またもや出ました「順序」!

先ほどの「幸せの三段重理論」と同じように、じつは「セロトニンを出すための3つのコツ」にも優先順位があるのです。

【図表2】「セロトニンを出すコツ」の優先順位
出典=『働く女子のための睡眠革命』(光文社)より

この順で行わなければ意味がありません。期待した効果も出にくいでしょう。

3~4割は「環境づくり」で解決する

まず真っ先にすべきは、ぐっすり眠れるような「環境づくり」。

なぜなら「モノを買い(替え)さえすればいい」のですから。心身ともに疲れていても、着手できそうですよね。

眠れる環境が整って気力・体力が少し回復したら、次は「腸活」へ。腸は脳と密接に結びついているため、早い段階で腸内環境を整えることが、セロトニン分泌のカギとなります。

そうしてさらに体力・気力が復活してきたら、いよいよ「温活」。体温を調節する機能を取り戻し、体内リズムにメリハリをつけて、セロトニンをしっかりと出せるようにするのです。

この「順序」を知らないと、どれも中途半端に終わるパターンにハマってしまいます。幸福への道すじは“点”ではなくつながった“線”で、進むべき順序があるととらえてくださいね。

角谷リョウ、サトウ未来『働く女子のための睡眠革命』(光文社)
角谷リョウ、サトウ未来『働く女子のための睡眠革命』(光文社)

セミナーでお伝えすると、睡眠に不調を抱える人の3~4割がこのSTEPだけで安眠できるようになる、まさにお手軽にして最強のエントリーコースが「環境づくり」。

しかも正直、このSTEPがいちばん楽しいし、いちばんラク。ここだけの話――「健康のためだから!」と堂々とモノを買えるって、オイシくないですか? ここではまず“楽しさ”をじゅうぶんに味わってください。

すると、次のSTEPに進む気力がわいてきます。セミナーを通しても、疲れはててゾンビ状態の女性が環境を整えていくうちに笑顔に変わる、その過程をたくさん見てきました。くり返しますが、これがセロトニン分泌の第1歩です!