女性活躍推進と言われる割には、身の回りで活躍する女性はあまり増えていない。たまに昇進する人は「私が私が」とでしゃばりな女性ばかり……そんな風に思ったことはありませんか。「私も活躍する場が欲しい」そう考える人が、やるべきこととは?
女性が活躍している、という記事を目にするたびに「いいなー、私も活躍する場所を与えてほしい」と、愚痴をこぼしている人はいませんか。
前回のコラム(関連記事:「女性は採りたくない」中小企業が今もそう考える理由)にも書きましたが、いま国を挙げて、女性に活躍してほしい、役職者の女性を増やそうと躍起になっています。ということは、本来なら、これまでに比べ活躍の場所がたくさん用意される可能性が高いはずです。実際、以前よりも女性の管理職や役員の数は増えているのですが、現場にいるみなさんは「女性社員が抜擢されている」という実感をあまり感じていないのではないでしょうか。
「私が私が」と前に出たがるタイプの女性しか、活躍していない?
こういう話をすると「うちの会社は組織として、女性を登用する仕組みが形骸化しているし、社員にやりたいことをやらせる風土もない。活躍している女性を見ていると、それこそ、『私が私が』と積極的に前に出るタイプばかりです」と言う女性がいます。
筆者は、人のスキルを可視化する仕組みを製品化する、という仕事をしている関係で「どういう人が優秀で、どういう人が優秀に見えるのか」(この2つ、似ているようで全く違うのです。その話は、また別の機会に)を明らかにする実験をいろいろとやっているのですが、「なるほど」とうなってしまう結果が出ることも少なくありません。
実験結果の中でも興味深かったのは、「よく見える人は良く見える」という結果でした。もうちょっと分かりやすくいうと「よく見える人、目立つ人は優秀そうに見える」ということです。
例えば、売上をたくさん上げている組織に所属している社員は、そうではない組織に所属していて、スキルはほぼ同じという社員よりも優秀だと評価されます。また、評価をするマネージャーと席が近くて仕事ぶりがよく見えている人と、レイアウトの関係でマネージャーから席が遠かったり、仕事ぶりが見えない人を比べると、後者の評価が低いという結果もありました。
つまり組織の中で、良くも悪くも上司(以外の人も)から「よく見えている」人は、「優秀だろうと思われる」ようなのです。つまり、「私にやらせてくれ」と大きな声を張り上げる、目立つ人は、結果として“良く見えてしまう”可能性がある。もちろん、目立たなくても優秀な人を拾い上げる仕組みがある、もしくはそういう資質を持っている人がいる組織なら話は別なのですが、残念ながらそういう組織はまれです。
真面目にコツコツ仕事をしているだけでは、やりたいことはできない
たとえあなたが優秀で才能があったとしても、見えるところに立ってくれないと、組織や上司(正しくは人材を登用する担当者)はあなたを見つけ出してくれません。「日々黙々と仕事をしていて、その成果を着実に積み上げていれば、いつか誰かが私をキラキラと輝ける場所に置いてくれる」と、もし思っているとしたら、それは幻想。そんな白馬に乗った王子様みたいな、人を見る目に優れた上司は、まず存在しません。
もちろん「特にやりたいことはない」「今の仕事に満足している」という人は、特に問題はありません。けれども「やりたいことはあるが、やらせてもらえない」と愚痴っているなら話は別です。
最初に、やりたいことを周囲にきちんと伝えられているか、そのチェックから始めてみましょう。心に秘めた思いというのは、周囲には分からないものなのです。
まずは言葉にして、周囲に公言する。将来的には「こういう仕事がしたい」とハッキリ言う。そうすると「あなたって、そんなことがやりたかったのか」と驚かれたり、逆に知っていう人からは「できるように応援する」と激励されたりと、さまざまな反応が得られるはずです。
そのリアクションを見れば、あなたの思いが周囲にちゃんと伝えられているのかどうかは確認できます。もちろん、上司との面談の場などでは言っているという人もいるでしょうが、それだけでは弱い。もっと徹底的に周知するのです。「やりたい」と声に出して言いましょう。
そうすることで、その仕事に取り組めるポジションに空きが出た時に、周囲の誰もが「ああ、あの人がやりたがっていたな」と思うはず。そう、自分のやりたいことを周知することによって、まず一歩リードできるのです。
機会は案外与えられている、が、それを見落としがち
もちろんそのポジションについたら、仕事がまっとうできるだけの能力を身に付けておかなければならない。それは言うまでもありません。そう考えて、まずはスキルを磨いたり、できることを増やしたりすることからスタートしがちです。資格を取る人も多いですよね。
しかしその努力を実らせるためには、多少図々しいと思っても、「やりたい」という意欲を前面に押し出して機会を少しでも増やしておかなければならない。「自分が~自分が~」と、前に出てポジションをゲットしてしまう人を見ると「あんな肉食系にはなりたくない」などと揶揄(やゆ)しがちですが、やりたいことをやるための手段としては、極めて筋が通っています。誰にも見えない場所でなにかを言っても、それは単なる独り言。厳しいようですが、なにも得ることはできません。
「そこまで自分を押し出して、売り込む勇気はない」という人でも、チャンスはたくさん転がっています。例えば、組織の中のナレッジを共有したり、新しいアイデアを募集したりといったイベントを定期的に開催しているという企業はたくさんあります。そういう場を積極的に利用するのも手です。
いま所属している組織以外に活躍の場を求めるという方法も、当然あります。ソーシャルメディアなどを利用して、自分が取り組んでいること、将来関わりたいことを発信することで、どこかから声が掛かるといったことも、それほど珍しいことではなくなりつつあります。
「やりたいことをやりたい」とあなたは周囲に伝えられているか
そう考えると、機会はたくさん、あなたの周囲にはゴロゴロと転がっているのです。それを見落とすことなく、チャンスを貪欲に生かすことが、やりたいことができるようになる、たった一つの方法なのかもしれません。「能力があってもやりたいことなんてできない」と悩んでいる人がいたら、まずは「やりたいことを周囲に知ってもらう」ことから始めてください。
逆に、それすらできないとしたら、自分のやりたいことは「本当にやりたいことだったのか?」と自問自答するべきでしょう。厳しい言い方ですが、「やりたいことがある」というセリフが「何かから逃げる言い訳」になっているはずですから。
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。