政府が鳴り物入りで女性管理職の数値目標を設定し、女性活用の掛け声は勇ましい。本誌では男女1000人にアンケートを実施し、管理職への意欲や管理職になるために必要な条件などを尋ねたところ、笛吹けども踊らずという、なんとも寂しい状況が浮かび上がった。結果をもとに、一体何が女性の管理職進出を阻んでいるのか。その心理的、物理的側面を読み解いた。

イラスト=網中いづる

調査概要:楽天リサーチの協力を得て、インターネットを通じて女性一般社員250人、女性管理職250人、男性管理職500人を対象に調査を実施。期間は2015年5月19日~22日。

政府は2020年までに女性管理職の割合を30%に引き上げる目標(いわゆる「2030(にいまるさんまる)」)を掲げているが、その管理職候補となる女性たちは、実際のところ、現状をどう感じているのか。編集部では、女性一般社員250人、女性管理職250人、男性管理職500人の計1000人にアンケート調査を行った。

Q:管理職になりたいですか?

●管理職になりたくない、興味がない/82%
●管理職になりたいと思っている/14%
●管理職になりたかったがあきらめた/4%

【管理職になりたくない理由】
家庭と両立難しそう/責任が増えるだけでお給料は上がらない/キャリアパスに管理職がなかった/女性の管理職がいないから/出世したいと思わない/現在の仕事量で十分/女性は管理職になれない職場に勤めているから/管理職の人たちが魅力的じゃない/拘束時間が長くなる/現場が好きだから

まず驚くべきは女性一般社員に「管理職になりたいですか?」と尋ねたところ、「なりたくない・興味がない」と答えた女性が82%と圧倒的だったことだ。「管理職になりたかったがあきらめた」という人を含めれば、約9割が管理職という選択肢を切り捨てていることになる。その理由については、「負担が増えるだけでメリットがない」「責任を持ちたくない」「家庭と両立できない」「能力がない」などの否定的な声があふれた。これでは「2030」どころではない。

では、どんな女性が管理職に就くべきだと思っているのだろうか。

イラスト=網中いづる

そこで、女性が管理職になるために必須だと思うものを聞いてみると、6割以上の女性が「実力やスキルへの自信」を挙げた。裏を返せば、管理職になりたくないのは「スキルが足りないと思っている」からだ。これは管理職を増やすのに必要な施策として、約3割の女性が「トレーニングプログラム」を挙げていることとも呼応する。

一方、男性管理職にも同じ質問をしたところ、「実力やスキルへの自信」と答えた人は男性ではわずか17%であった。「男性管理職はスキルの有無にかかわらず、ある一定の年数が経てば昇進するのが普通だと思っています。女性ほどスキルが必須という思い込みはない」とリクルートマネジメントソリューションズの荒川陽子さんは分析する。

Q:男性管理職に聞いた、女性が管理職になるために一番必要なのは?

●仕事のやりがい(141人/500人)
●実力やスキルへの自信(86人/500人)
●上司のサポート(15人/500人)

同様に、先の質問で「上司のサポート」を必須とした女性が26%いたのに対し、男性管理職ではたったの3%と大いにギャップが見られた。上司であるはずの彼らの認識だが、少々心もとない結果となった。

女性だけでなく男性の意識改革も大事

さて、企業は女性を管理職として育てるためにさまざまな施策を講じているが、実際女性から「これは使える!」と思われているものはどういったものなのか。

グラフを見てほしい。「女性管理職を増やすために企業が行う施策のうち、効果があると感じるのは?」という質問の結果はご覧のとおりだ。

グラフを拡大
Q:女性管理職を増やすために企業が行う施策のうち、効果があると感じるのは?(複数選択)

男女の温度差が大きく表れたのは、「女性管理職を育てるための男性向け研修等を行う」という項目。女性管理職は3割以上が選んでいるが、男性では12ポイントも低い。荒川さんは、「女性に対してどれだけ施策を打っても、現場の男性上司の意識が変わらない限り事態は動かない。男性上司向けの研修は増えてはいても、彼らが女性をサポートして引き上げるというところにまでは至らないようです」と残念がる。

また、効果があると感じる施策のうち、「ワークライフバランスのための制度を設ける」「仕事と家庭の両立支援のための福利厚生制度の充実」は女性に非常に支持されていた。彼女たちはライフイベントを企業側から支えてもらう必要性を痛感しているようだ。そうした施策を打っている企業ならまだしも、あまり力を入れていない企業では、女性が管理職への道をあきらめることになりやすいのかもしれない。

ちなみに、優秀な女性をロールモデルと規定している会社も多いだろうが、効果があると感じている女性は12%程度だ。現在ロールモデルとして高い地位にある女性たちは、男女雇用機会均等法の実施で総合職として採用され、男性同様の長時間労働をこなし、厳しい時代を「勝ち抜いてきた」世代。現在の20代、30代から見れば“スーパーウーマン”すぎて、共感が持てないのも無理はないだろう。

荒川陽子
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ営業統括部 営業1部2グループ マネジャー。2003年HRR(現・リクルートマネジメントソリューションズ)に入社。12年より女性活躍推進をテーマとした商品の開発、サービスラインアップの構築を行うプロジェクトに携わる。