女性を本気で伸ばしたい会社と口先だけの会社は、どこが違うのでしょうか。どうすれば見極められるのでしょうか。
「女性管理職比率」や「役員比率」だけでは見えてこない、企業の“本気度”がわかる独自の格付け方法を編み出しました。

入るのは難しいけれど、入ってしまえば活躍の道がある企業

※狭き門型とは? 格付けのA~Cの定義とは?
【あなたが働く企業はどのタイプ? 6つのタイプ別「企業の特徴」http://woman.president.jp/articles/-/788】を参照

このタイプの企業は、入社するには狭き門ですが、そこをくぐり抜けると、あとはキャリアが築きやすいといえます。

こちらにもキャリア万全型の企業と同様に、地方銀行と放送局が入っていますが、それ以外は以下2つの特徴のどちらかを持つ企業となります。

[1]ニッチ領域でトップクラスの実績を誇る(医学書院、ニチバン、YKK、任天堂)
[2]派手さはないけれど、B to B領域で大きなビジネスを手がける(新日鉄住金エンジニアリング、芙蓉総合リース、KDDI、オージス総研)

●社員を大事に育てる会社が多い

どちらもかなり専門的な知識が必要。そのため、理系や専門教育を受けた人のみに採用が絞られるため、女性が入りにくいという事情があります。

ただ、こうした企業は、その分野での知識や経験の積み重ねが重要になるため、一度入った社員を大切に育てます。そのため、入り口は狭いけれど、入ればキャリアは明るいという先憂後楽なタイプになるのです。

リケジョじゃないから自分には関係ない、と思う人もいるかもしれません。しかし、ニッチ・専門領域の企業でも、人事や経理、総務などの管理部門では、文系出身者でも入社は可能です。

会社全体に社員を長く面倒見る姿勢が根付いているために、管理部門で採用された場合でも、エンジニア同様に、じっくり育ててもらえるでしょう。

●目立たない“穴場企業”に注目!

こうした企業は、そのビジネスの規模はかなり大きいのに、外資系企業やベンチャー企業のように目立ちはしません。だから、若い世代の注目を浴びて、いつでも新しい人材が採用できるというわけにもいかないのです。

その分、入ってくれた人たちを大切にするのでしょう。

目立たないから見落としがちだった、B to B大手やニッチ領域におけるトップ企業の管理部門で働く、という新しい選択肢が見えてきそうですね。

社員が告白! データには出ない本当の話

Aさん:医学書院 20代女性「30代半ばになると年収1400万円、残業はありません」
Bさん:KDDI 30代女性「同じ成績の男女がいたら、女性のほうが有利に出世します」
Cさん:YKK 30代男性「既婚率66.6%という高さには、実はカラクリがあるんです」

※取材協力者は「キャリコネ」を運営するグローバルウェイを通じて募集。

出版界といえば、仕事のやりがいはあるものの、ネットに押されて経営は苦しく、長時間労働が当たり前というイメージがあるが、医学・看護分野の老舗出版社、医学書院は正反対だ。

まず、「就職四季報 女子版」によると、月平均残業時間が14.7時間と1日当たり1時間にも満たない。同社に勤務している女性Aさんに尋ねたところ、実態もその通りだという。

「出版、特に編集の世界は朝が遅いのが当たり前ですが、うちでは朝9時から仕事をしています。著者となる医師は朝しかつかまらないので、それに合わせる面もあります。女性は日没前に退社する人が多く、その後の時間を家事や育児、趣味の時間にあてています」

驚くのは待遇のよさだ。月給は標準的な額だが、ボーナスが年間で10カ月分も出るので、30代半ばで年収は1400万円になる。しかも、管理職になるまでは、査定なしの完全年功序列制。誰でもそこまではいけるわけだ。定期的に改訂され、一定の収益が見込める看護関連の教科書・参考書が収益の柱となっているからこその厚遇だろう。

組合が強く、産休や育休制度も充実している。育休明けの社員が復帰する場合、休職期間が1年以内の場合は元の部署に、それ以上の場合は本人の意向を尊重して決めるというルールが明文化されている。

●部長以上は土日も働くワーカホリック

「部下をもってバリバリ働きたい」という女性にお薦めなのが、auで知られるKDDIだ。2015年度末までに、女性課長比率を7%に引き上げる目標を掲げているからだ。

「役職者となるには、まず課長補佐になり、試験を経てマネジャーにならなければなりません。さらにその人たちから優秀な人が課長に選ばれ、部下がつきます。現在、課長補佐の中から優秀な女性が選ばれ、特別な研修プログラムが提供されています。女性という理由だけでマネジャーになれるわけではありませんが、同じ成績の男性と女性がいたら、女性のほうが有利なのは確かでしょう」(女性Bさん)

子育て期の女性にも配慮する。「子どもがいる女性は保育園に迎えに行く時間までに帰れます。残業は多いですが、NO残業デーが月2回。通信会社なので在宅勤務の環境が整っており、いったん帰って子どもを寝かせ、仕事を再開する人も多いです」

ただ、問題はその先にある。「部長以上になると仕事量が半端なくて、土日もなく働けるワーカホリックな人でないと務まりません」

頑張って課長になり、その後、部長になっても、それに耐えられる女性ばかりではないだろう。

●仕事か私生活か究極の決断を迫られる

長く働ける会社であれば、安心してキャリアを積める。女性の勤続年数が21.2年と男性より長く、女性の既婚率も66.6%という高さを誇るのが、世界的ファスナーメーカー、YKKだ。

ただこの数字にはカラクリがあるようだ。「技術系の拠点が富山県黒部市、管理系・営業系が東京都にあり、それぞれの組織風土が違うんです。トップメーカーだけに競争相手がいないのでマイペースで働けてなかなか辞めない。それが黒部です。しかも富山は共働きが非常に多い地域。片や東京は顧客や海外との折衝役ですから、相手に振り回される仕事も多い。黒部の数字が大きく影響しているデータではないかと思います」(男性Cさん)

同社では採用時から、転勤ありのグローバル社員と、なしのローカル社員とに分かれる。役職や給料をアップさせたかったら前者しかない。その場合、海外勤務が必須だ。

「入社3年後に赴任し、5年間を海外で働くというのが一般的なキャリアパスです。その時期は女性にとっては結婚や子育て期にあたるので、仕事か私生活かという究極の決断を強いられることになります。とはいっても、仕事ができるなら男女関係なく上にいけるのも事実で、女性だから、という差別はありません」

将来は富山に住みたい人が結婚、出産を経て長く働く。片や男女差別のないグローバルな仕事で男勝りにバリバリ働く。そのどちらかを目指す人にはお薦めである。