どんな仕事人生を歩むのか、女性にはいろいろな選択肢があるだけに、悩みは深い。そんなときは、目の前のことだけではなく、遠くに視点をもっていきたいもの。生涯で考えたら、どの働き方が理想なのか。その判断材料になるお金のこと、そして“自分の軸”に沿ったキャリアの積み方について、考えてみましょう。(アドバイスしてくれる人:はぴきゃり代表取締役・金澤悦子さん、ファイナンシャルプランナー・大竹のり子さん)

[キャリアコース3]正社員→非正規社員

生涯年収:8738万円(退職金なし)年金:7.5万円/月
30代で平均年収が183万円といわれる非正規社員は、生涯収入が少ない。20~30代のときは引く手あまたの派遣社員も、年齢を重ねると難しくなる傾向がある。

※正社員女性11.0%が「理想の働き方」と回答

●労働者派遣法の改正で正社員になりやすくなる?

非正規社員の正社員化を実施あるいは検討する企業は増えている。また、9月に臨時国会に提出された労働者派遣法の改正法案では、専門26業務と一般業務の区分けがなくなり、業務に関係なく派遣先で働ける期間が最長3年に統一される内容となっている。これが実現すれば、派遣で働く女性にとっては、業務を問わず正社員になれるチャンスが広がる可能性が高まるといわれている。

●キッパリ契約解消の企業も増加中!

非正規社員の正社員化が注目される一方で、派遣社員を受け入れられる3年という期間が過ぎれば、キッパリ切るという企業も増えているのだそう。その場その場でしっかりと成果を出し評価されていくことが、今まで以上に求められると言えそうだ。正社員を目指すなら、登用の実績がある会社かどうか、どんな人材を求めているか要チェック。社員になりたい意欲も伝えて。

●130万円の壁を気にせず働いたほうが良い

2015年秋から501人以上の会社ではパート社員でも年収106万円以上なら社会保険に加入できるようになる見込み。保険料なしで夫の社会保険に加入できる上限の130万円に年収を収めようとするパート労働者が多いが、今後この傾向が変わる可能性が高い。「“130万円の壁”は崩れかかっていますので、社会保険を気にして仕事をセーブする時代ではありません」(大竹さん)

さまざまな職種や企業を経験できるのは、派遣社員のメリット。でも、経験を糧にする気持ちがなければ、キャリアは積み上がっていかない。「個人情報の問題もあり、重要な仕事には携わらせてもらえない派遣社員は、仕事ぶりをアピールするチャンスすら得られないのが現実。なんとなく続けていると、いずれ年齢制限という壁に阻まれるでしょう」(金澤さん)

●パート・アルバイトで心も満たされるか?

働き続けたくても、年齢が上がるにつれてだんだんと仕事が見つかりづらくなるのが派遣社員のつらいところ。正社員への登用のルートを歩めればいいが、そうでなかった場合は、パートやアルバイトの仕事を探すことが現実的な選択肢となる。「お金のためだけでなく、仕事を通じて心も満たされたいという人にとっては、難しい選択になるかもしれません」(金澤さん)

キャリアを積むコツ

「出産を機に、正社員から派遣に切りかえた人がいますが、40歳で契約が切れてからは全く仕事がこなくなった。年齢が上がると上司が年下になるケースが増えるため、雇いにくくなるのでしょうね」と金澤さんはずっと派遣で働き続けることの厳しさを語る。

【写真左】はぴきゃり代表取締役 金澤悦子さん【写真右】ファイナンシャルプランナー 大竹のり子さん

「そうは言っても育児や介護といった問題があるので、非正規で働かざるをえない状況は女性にはありがち。それでも終わりは必ず来ますので、常に自分はどうありたいのかを、考えておいてほしい。ちなみに派遣の仕事がこなくなった彼女は、自分の軸を探して未経験で飛び込んだ分野で正社員として働いていますよ」(金澤さん)

逆に非正規の働き方を有効利用するという手もあると続ける。

「派遣として働いて、自分の興味のある業界を見てみるといいんです。どうせ毎日を過ごすなら、それを自分の武器になるように意識する。将来のキャリアのためと思ってやるだけで後々全然違ってくるものですから」

マネー管理&投資のコツ

「非正規社員といっても、契約社員や派遣社員であれば通常は社会保険に加入できるので、ここは正社員と変わりませんが、大きな違いは退職金の有無。非正規は年間の契約なので退職金が積み上がっていかないんですよね」(大竹さん:以下同)

だから、退職金がないことを前提にマネープランを立てなければならない。

「たとえば住宅ローンを組むときに退職金で一括返済といった方法がとれないので、それを見越して65歳までにローンが終わるようなプランにするとか、ボーナス払いをやめてきちんと月々の給料で解決するようにするとか、そういうリスクヘッジは大事です」

不動産を買うタイミングも重要。

「ローンを組める、組めないが全く違うので、正社員のうちに買ってから辞めたほうがいいでしょう。夫婦で共同名義にする場合も同じです。家計は、いつ職を失ってもいいという覚悟のうえで、旦那さん1人の稼ぎでやっていけるような組み立てが必要です」

はぴきゃり代表取締役 金澤悦子
東京都出身。1991年、リクルート入社。営業に従事し、新人MVP賞を受賞。広告営業局局次長、広報室室長を歴任するも、仕事との距離感がつかめず心と体を痛めてしまう。これをきっかけに、「幸せに働くってどういうこと?」という問いへの答えを求め、2001年、総合職女性のためのキャリア転職マガジン「ワーキングウーマンタイプ(現ウーマンタイプ)」を創刊、編集長に就任。05年独立。
ファイナンシャルプランナー 大竹のり子
1975年生まれ。編集者を経て独立。だれもが気軽に利用できる女性による、女性のためのマネー相談サービスを実現したいとの思いから、2005年、エフピーウーマンを設立、代表取締役に就任。経営の傍ら、講演や執筆、TV出演など、幅広く活躍している。『マネーセンスを磨けば、夢は必ずかなう!』(東洋経済新報社)などお金の分野での著書は40冊以上。