どんな仕事人生を歩むのか、女性にはいろいろな選択肢があるだけに、悩みは深い。そんなときは、目の前のことだけではなく、遠くに視点をもっていきたいもの。生涯で考えたら、どの働き方が理想なのか。その判断材料になるお金のこと、そして“自分の軸”に沿ったキャリアの積み方について、考えてみましょう。(アドバイスしてくれる人:はぴきゃり代表取締役・金澤悦子さん、ファイナンシャルプランナー・大竹のり子さん)

[キャリアコース2]正社員→退職→再就職

生涯年収:1億2125万円(うち退職金486万円)年金:11.4万円/月
出産、育児でいったん離職し、子育てが一段落してから再就職するパターン。再就職後はキャリアアップの可能性はあるものの、生涯収入も年金もブランクなしに比べると大幅にダウンする。

※正社員女性13.4%が「理想の働き方」と回答

●将来の就職先を確保するために会社員時代にすべきこと

大手の転職サイトなどでは、キャリアのブランクが長いことや、年齢などの条件だけで再就職の道が閉ざされてしまうケースも。「いったん退職する道を選ぶなら、何か1つでも誇れる成果を上げること。とくに自分で仕事を生み出してやり遂げた経験があると有利。また、再就職のチャンスを得るために、同業の社外の人や取引先とつながっておくことも大切です」(金澤さん)

●国が力を入れる「主婦戦力化」の波に乗る

キャリアにブランクのある女性を対象にした「中小企業新戦力発掘プロジェクト」が2013年からスタート。これは、4時間以上、週3日から時間と日数が選べるインターンシップだ。期間中は国から5000~7000円の助成金が受け取れ、実習終了後は合意が得られればそのまま就職も可能。13年度は、延べ3252人が参加し、そのうちの47%が就職につながっているという。

●ブランクがあっても再就職できる職種は?

「薬剤師や学校の先生など、資格や免許が必要な専門職は多少のブランクがあってもやはり強いですね」と大竹さん。そんな専門職の人がスムーズに再就職するためには、「再就職するまでの期間に、たとえば薬剤師ならドラッグストアのパートとして働いてみたり、学校の先生なら学習塾で講師としてアルバイトをしてみるなど、肩ならしができるといいですね」(大竹さん)。

●仕事がゲットできるブランク期の過ごし方

「とにかく子どものサッカークラブでも何でも積極的に参加していく。そこで自分のやりたいことを言いふらしているとチャンスが巡ってくることもあります。前向きな人が集まるビジネススクールもおすすめ。女性は再就職も転職も、口利きが重要です」と金澤さん。MBAだけでなく、コーチングを学んだり、キャリアカウンセラーの資格を取るのもおすすめとのこと。

●管理職への道は残されているか?

たとえば、夫の海外転勤などのやむを得ない事情によって退職した場合。ブランク期間に語学を習得したり、MBAや資格を取得したりしてスキルアップをしている場合などは、管理職にキャリアアップして活躍するのも1つの選択肢に。反対に、逃げでキャリアを手放した場合には、管理職はもちろん、再就職自体が厳しくなり「キャリア迷子」になってしまうことも。

キャリアを積むコツ

「正社員をいったん辞めて再就職するのは、思っているほど簡単ではない」と大竹さんも金澤さんも口をそろえる。

【写真左】はぴきゃり代表取締役 金澤悦子さん【写真右】ファイナンシャルプランナー 大竹のり子さん

「キャリアがある人ほどそれなりにいい条件のところに再就職できると思いがちですが、自分のイメージと現実にはギャップがありますね」(大竹さん)

「経験のある仕事に就くとしても、以前とは勝手が違っているので、もう一度やり直すというくらいの謙虚な姿勢が必要。それができずに最終的にもめるケースが多いですね」(金澤さん)

そんな高いハードルを乗り越えて再就職するには“声をかけてもらえる自分”をつくっておくことが大切だ。

「ブランクがあっても再就職している人は、前職の上司や同僚、友人に紹介してもらっている“口利き就職”のケースが多いですね。その人の働きぶりや人柄がわかっている分、有利に働くのです。だから20~30代のときに、いかに与えられた仕事に一生懸命取り組んでおくかということが大事になってきます」(金澤さん)

マネー管理&投資のコツ

「このコースは世帯収入の増減が激しいので、減ったときに対応できるようにしておくことが重要。理想は夫の収入だけで暮らせること」と大竹さん。

貯金も無理のないプランで。たとえ正社員時代に老後の資金として毎月10万円の保険を積み立てていたとしても、退職するとその支払いは厳しくなる。解約して引き出して、といった使い方のできる投資信託など、機動力のある積み立て方法がよいという。また不動産投資は主婦にもおすすめだとか。

「私は“簿外資産”という言い方をするのですが、たとえば投資用マンションを持っていれば、家計に影響のないところで、ちゃんと自分名義の資産が積み上がっていく。キャッシュフローがとんとんでも家計には影響しません。専業主婦になると、なかなか自分名義の資産はたまっていきませんが、そういったものを正社員時代に買っておくとつぶしがききますよ。それこそ離婚や旦那さんが亡くなったときのリスクヘッジにもなります」(大竹さん)

はぴきゃり代表取締役 金澤悦子
東京都出身。1991年、リクルート入社。営業に従事し、新人MVP賞を受賞。広告営業局局次長、広報室室長を歴任するも、仕事との距離感がつかめず心と体を痛めてしまう。これをきっかけに、「幸せに働くってどういうこと?」という問いへの答えを求め、2001年、総合職女性のためのキャリア転職マガジン「ワーキングウーマンタイプ(現ウーマンタイプ)」を創刊、編集長に就任。05年独立。
ファイナンシャルプランナー 大竹のり子
1975年生まれ。編集者を経て独立。だれもが気軽に利用できる女性による、女性のためのマネー相談サービスを実現したいとの思いから、2005年、エフピーウーマンを設立、代表取締役に就任。経営の傍ら、講演や執筆、TV出演など、幅広く活躍している。『マネーセンスを磨けば、夢は必ずかなう!』(東洋経済新報社)などお金の分野での著書は40冊以上。