霞が関といえば、長時間労働の代表格。しかし、3割に達する20代の女性職員たちが子育て期に入るこれからは、限界が見えている。そこで、霞が関で働く女性有志たちが立ち上がった!

価値観、働き方を転換させるには時間制約のあるワーママこそがエンジンになれる

提言は、霞が関だけでなく、長時間労働の職場なら、どこでもヒントになる改革案が盛り込まれている。日本全体の働き方が男性も含め変わらないと、「両立や女性の活躍などありえない」という問題をつきつけているのだ。

厚生労働省 河村のり子さん(写真=共同)

「男性が家に帰らない社会だから、女性は、かろうじて働き続けられても、キャリアダウンしなければいけないのだと思います」と「霞が関で働く女性有志」のひとり、厚生労働省の河村のり子さんは語る。

働き方の転換は価値観の転換でもある。「霞が関的な働く価値観」にも一石を投じている。例えば、「完成度を高めるためにどこまでも努力しなければならない」ということは、本当に国民に貢献しているのか? 審議会の資料に誤字がひとつあっても紙文化の役所ではすべて刷り直しだ。

「役所の文化として、労働コストはゼロであるという価値観の転換をしてほしい。男性だって疲弊しきって良い仕事ができません。最大限費用対効果を真剣に考える仕事のやり方を、霞が関もしていかないと。時間制約のある働き方になって、この政策の最終的なアウトプットは国民の生活の向上につながるのか、厳しい目で判断するようになりました。寝ないで働いていた頃はそこまでは考えられなかった」

女性だけの問題ではない。「政策の質の向上」「コスト削減」にも関わる問題でもあるのだ。

要求するだけでなく、「私たち自身が『隗(かい)より始める』18の事項」「女性職員が心がけること」という項目もある。「配慮への感謝」や「限られた中での最大限のアウトプット」などだ。

「価値観、働き方の文化の転換をやりたい。その牽引力として、物理的に時間制約のある、私たちのようなワーキングマザーが最大のエンジンになれるのです」

霞が関が変われば、日本の働き方全体も変わる。霞が関だけでなく、多くの企業でワーキングマザーたちが「働き方改革」のエンジンとして始動している音が聴こえる。今が変わるとき、そして変わる最後のチャンスなのかもしれない。

■霞が関の「働き方改革」実行に向けた10の提言

▼提言1
【働き方改革」のためにPDCA体制を確立する】
事務次官のリーダーシップの下この問題を継続的に推進する

▼提言2
【霞が関の働き方の根っこにある価値観の変革】
長時間勤務をいとわない働き方から、効率性や成果を重視する働き方へ

▼提言3
【価値観の変革に向けた人事評価軸の転換】
時間当たりの成果や、最小の負担で最大の成果をあげるため的確な指示を行ったか

▼提言4
【価値観の変革に向けた管理職研修の実施】
定期的に管理職の意識を変革する研修を

▼提言5
【政府部内の仕事に対するチェック体制を確立する】
ご意見箱などを設け、省庁横断的な場で改善を図る仕組みを

▼提言6
【査定に伴う勤務時間外の待機・対応の改善】
予算ヒアリングは原則として勤務時間内に終わるように

▼提言7
【法律等立案作業の改善】
深夜・早朝まで及ぶことの多い立案作業を効率的に処理する

▼提言8
【テレワークを当たり前に】
定時にいったん退庁し、各個人の事情に応じた時間に自宅で処理することが可能な職場にする

▼提言9
【女性職員に対する雇用管理】
出産・育児と経験を積む時期が重なるため、重要な業務は20代のうちに経験させるなど、柔軟なキャリア形成を

▼提言10
【国会質疑関係業務の改善】
国会での質問通告時刻を早める

※内閣人事局HPをもとに編集部で作成