開成の留学支援体制はなんと生徒発信!

開成の校長に就任することが決まったとき、まず真っ先に考えたのが、「若いうちに海外に出ることで得られる力は計り知れない。だから、海外の大学に進学しても苦労しない、留学レベルの英語力を早く生徒たちに身に付けさせるため、開成の英語教育強化の手伝いをしよう!」ということでした。私が開成で学んでいたころの英語教育は、ご多分にもれず受験英語でしたから、使える英語教育に進化してほしいと思っていたわけです。ところが、久しぶりに開成に戻ってびっくりしました。英語教育のあり方は、すでに昔とはまるで変わり、進化していたのです。

ネイティブの教員は常勤が2人、非常勤が6人いて、日本人教員も英語ができる人ばかり。本格的に海外大学を希望する生徒に向けて、平日の放課後に「7・8限目英語特別講座」を高1から設けています。ネイティブの教員によるディスカッションや小論文(エッセイ)の書き方と添削、そして留学情報の提供なども行っています。

こうした体制になったきっかけが生徒発信だったと聞いて、さらにびっくりです。先ほど話した塩野さんや笠井さんたち、13年卒業の海外大学進学組の生徒たちが中学生のとき、「自分たちは将来海外に留学したいので協力してほしい」と申し出たそうで、「そういうことならば」と、学校側も支援体制をどんどん拡充していったとのこと。私の前任の、柳沢幸雄校長の時代です。

生徒たちが自主的に自分たちの夢や希望を表明し、それを実現させるべく学校が協力するというのが、いかにも開成らしく、さすがはわが母校、と誇らしく思いましたね。

具体的な海外留学支援としては、13年から始まった「カレッジフェア」があります。イエールやスタンフォード、コロンビア大学といった海外の大学に留学経験のある開成卒業生や各大学の入試担当者を招いて、希望する生徒とその保護者に対し、説明会や個別相談をしてもらうのです。始めたころは50~100人程度でしたが、現在は200~300人も集まるようになりました。

こうした熱意の高まりを如実に表しているのが、海外のサマースクールに参加する生徒数の伸びです。学校主催の海外語学研修はまだないため、生徒は自主的に海外のサマースクールに出願して参加していますが、15年ごろから増え始め、コロナ禍の時期を除けば、1年に50~70人が参加しています。一定レベル以上のサマースクールに参加する生徒は、欠席扱いにしない制度もつくりました。また、参加者には、留学報告会で自分が経験したことを同級生や後輩に話してもらっています。このことがさらなる海外志向の高まりに寄与しているようですね。

【図表】開成卒業生が進学した主な海外大学
「Times Higher Education(THE)」世界大学ランキング100位以内(2025年)に入る上記大学を含め、61人が海外進学している(2025年5月時点)。

※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。