林 文子 横浜市長
1946年東京都生まれ。BMW東京㈱代表取締役社長や(株)ダイエーCEOなどを歴任し、2008年、米フォーチュン誌「世界ビジネス界で最強の女性50人」に選出。2009年8月より現職。2013年、全国ワースト1位だった保育所待機児童数をゼロに導いた。

 

玉木 伸弥 タマホーム株式会社 専務取締役
1978年福岡県生まれ。2001年タマホーム株式会社入社。広告人財本部長などを経て、2012年より現職。自身も2児の父親として子育てに奮闘しながら、社員が家庭と仕事を両立できる環境整備、街づくりへの貢献を目指す。

民間の力で保育サービスを
充実させる

玉木 私たちタマホームは、深刻化する日本の少子化を打開するため「住宅の提供者」として何かできないかという思いでいます。そこで保育所待機児童ゼロを実現した横浜市の取り組みについて、ぜひお話を伺いたいと思っていました。

 待機児童ゼロは、区役所と市役所の職員が一丸となったことはもちろん、ご企業や幼稚園など関係する皆様の力を結集したからこそ達成できました。でも、ゼロはゴールではなく、あくまでスタート。ゼロを維持し、保育の質を向上していくのが今後の使命です。

玉木 全国的にも都市部の保育事情は厳しいようですね。なかには保育園に通わせるためにフルタイムで働くという女性もいる。柔軟に勤務時間を調整し、子育てしながら働きたいという女性は多いのではないでしょうか。

 そのとおりです。2008年に、市内で子育てをしている保護者の方で、就労していない方を対象に実施したアンケート調査では、全体の7割の方が「働きたい」と回答されました。そのうち9割の方が、「週3日」や「1日4時間」など、フルタイムではない働き方を希望していました。

玉木 いわゆるワークライフバランスですね。タマホームでは社員一人一人が充実した人生を送れるように、さまざまな施策を打ち出しています。今年6月には、社員の望む生き方と、会社の求めるキャリアとの調和を図るために、社内に「キャリアデザインセンター」を設置。時短勤務なども検討し、家庭と仕事の両立を支援しています。

 素晴らしい取り組みです。横浜市でも、仕事と子育てを両立したいという切実な声に応えるべく、さまざまな支援策を強化しました。例えば、認可保育所整備を進めるとともに、市が独自に認定している「横浜保育室」や、幼稚園の預かり保育などを増やしました。保育所整備では株式会社の参入を促し、全体に占める企業立保育所の割合は、全国平均が2%弱のところ、横浜市はおよそ30%に達しました。そして、多様な受け皿を用意すると同時に、保護者の皆様それぞれのご事情に合った保育サービスをご紹介する専門の相談員「保育コンシェルジュ」を市内18区すべての区役所に配置しました。認可保育所に入所できなかった際も、単に通知を郵送するだけでなく、お一人お一人に電話でご連絡し、他に利用できるサービスがないか一緒に考えるなど、きめ細かく、丁寧な対応を心がけています。

玉木 個に寄り添う、素晴らしい試みですね。こうした横浜市のさまざまな取り組みに対する保護者からの反響はいかがでしたか。

 「さまざまなサービスを教えてもらい、働き方の選択肢も増えた」などのお声をいただきました。一方で、ご希望の認可保育所に入ることができず、育児休業を延長された方などもいらっしゃいます。さらに施策を充実させていく必要性を強く感じています。