2001年、世界で初めて商用の個人向け光インターネット接続サービスの提供を開始したUCOM。全国の主要都市を中心とした戦略的なエリア展開で、コストパフォーマンスの高いサービスの提供を実現してきた同社は、インターネットを取り巻く環境が刻々と変化するなかで、どのような新展開を考えているのか──。新たなサービスの開発を積極的にリードする鈴木孝博社長に聞いた。

Q インターネットを取り巻く環境は変化を続けています。鈴木社長は現状をどのように認識されていますか?

鈴木 日本でインターネットが本格的に普及したのは2000年以降ですが、2000年からの10年間と2010年以降ではネット環境は大きく様変わりしています。2000年からの10年というのは普及期であり、ブロードバンドによって高速・大容量化が進んだことにより利用者が拡大しました。2000年から事業をスタートした我々としても、とにかくアクセス(接続)サービスの利用者拡大に力を注いできました。

しかし2010年以降はブロードバンドサービスが普及期から本格展開期に入り、ネットが“日常化”しました。もはや「インターネットが趣味」という人はいなくなってきた。これからは蓄積された情報をいかに活用していくかという時代に入って、ネットと結びついたビジネスは加速度的に変わっていくと認識しています。

Q そうした時代にあって、UCOMはどのような役割を担っているのでしょうか。

UCOM
株式会社UCOM 代表取締役社長
鈴木孝博●すずき・たかひろ

1952年、東京生まれ。75年に慶應義塾大学商学部を卒業し、野村證券に入社。97年、CSK(現SCSK)へ。その後、CSKホールディングス代表取締役副社長などを経て、2010年8月にUCOMの社長に就任。

鈴木 我々は都市部を中心に、自前でゼロから設備を構築した光回線でサービスを提供してきました。そうした我々の強みが生きるのは都市部の中堅企業やマンションを中心とした集合住宅です。そこで、それらのターゲットに特化したサービスを展開してきました。

今後、日本経済が「失われた20年」を経て再生の展開へと動いていく中で、ネット環境から新しく生み出されるビジネスの仕方にしても、ライフスタイルにおいても、変革をリードするのは数も多い都市部の事業者であり、生活者です。そのマーケットは、都市部を中心に展開している我々にとって一番地の利があります。

都市部の事業者や生活者に、安定かつ高品質のアクセスサービスを提供していく役割というのは今後も変わりません。しかし、サービスの差別化は年ごとに難しくなり、単にアクセスサービスを横に広げていくだけでは限界がある。そのため、インターネット事業を基盤として、その次の段階、つまりネットワークにアクセスしてどんなことが実現できるのか、「インターネットの活かし方」という次元に事業ドメインを拡張していかなければならないと思っています。