ポイント4
「ここまではできている」自分を出発点に

「目標を立てる前に、自分の現在位置を確認しましょう」と関谷さんは言う。自分の英語力はどの程度なのか。それがわからないと、学習の道筋が定まらない。高望みしても能力が追いつかなければ「やっぱりダメだった」と思い込むはめになってしまう。

「例えば力量を測るのに、英語検定やTOEICテストなどを受けるのもいいと思います」

自分の英語レベルがわかったら、そのレベルに合わせた学習から始めればよい。英会話教室の無料体験レッスンを受けるのも、レベルチェックになる。いろいろな英会話教室の体験レッスンを受けてみれば、自分に合った教室を探し当てることもできる。

「自分は英語力が低い、英語ができないと思うのではなく、ここまではできるのだからもう少し高めようと、自分をポジティブにとらえることが英語の上達につながります」

目標も「ちょっとがんばれば手が届く」くらいに設定したほうが励みになる。

また、TOEICテストと並行して、「TOEIC SWテストも活用してみてほしい」と関谷さん。

「スピーキングとライティングのテストです。スピーキングは課題の回答を音声録音したものを採点する。ライティングは、写真の描写やEメールを書くといった課題で、文章を採点するものです」

これはアウトプットの上達度合いを測るのに適している。「半年ごとか、4カ月ごとに受けてみるといいでしょう」と関谷さん。上達の手応えがつかめれば、よりポジティブに取り組める。

ポイント5
初心者は日本人バイリンガルの先生がおすすめ

話を切り出すときの「ちょっといいですか」とか「誠に恐れ入りますが」などは、日本語に特有の表現。それを英語に持ち込むと、相手を戸惑わせたり、誤解を生むことがある。

「例えば、『誠に恐れ入りますが』を直訳しようとして、“We are sorry to ask you this, but?”と言う人がいます。文法的には合っているかもしれませんが、言われた相手はびっくりしますよ。それが仕事の場面なら、対等なはずの相手がなぜ謝ってくるのかと、奇妙に思われます」

このような日本語と英語の言語・表現上の差異はたくさんある。だから、英語によるコミュニケーションでは、その差異を知っておくことがとても重要だ。そこから関谷さんは「とくに初心者は、日本人のバイリンガルに習うのがおすすめ」だという。

先生が日本人なら、自分の求めることを日本語で説明できる。日本語と英語の言語・表現上の差異も、よく理解している。最近は、英会話学校でネイティブ講師に日本人のスタッフをつけたり、相談係を置くところも多い。これも、くじけない英語学習の留意点だ。

繰り返しになるが、どんどん英語で話そう。積極的に英語で話す機会をつくろう。海外旅行をするも良し、短期の海外語学研修を受けるのも良し、英語で習うクッキング教室に通ってみるという手だってある。

英語力が一定のレベルに達した日本人のなかには、発音が悪い、文法が間違っているなど、他人の英語を批判する人がいる。しかし、そんな声を気にすることはない。

「英語以外の言語圏の人が英語を話せば、訛るのは当然。日本人訛りの英語でかまわない。目的は自分の意思を伝えることです。相手もそのつもりで聞きます。ですから、臆せず話すこと。そして『えっ?』と聞き返されてもたじろがず、どう表現すれば通じるか、いろいろ試してみましょう」

試して通じれば、発見になる。もっとうまい言い方はないかと思えば、次の探求につながる。「そのフィードバックが、英語を上達させる踏み台」と関谷さん。アウトプットからのフィードバックをインプットに生かすサイクルをつかめば、英語学習に挫折はない。

(高橋盛男=インタビュー&文 鶴田孝介=撮影)