子どもの世界は子どもにまかせる
それで、「死のう。でもぼくが死んだら、お母さん悲しむだろうな」と思って家に帰ると、やっぱり母親だから、元気をなくしているのがすぐにわかっちゃう。
そのときに、母親がどうしたか。
じーっとぼくを見て、「ちょっとおいで」と呼んで、こう言った。
「言っとくけどね、お母さんはね、あんたが元気ならよかとばい」
それから、ぎゅーっと抱きしめてくれた。そして、「ほら、行きなさい」って言って、送り出してくれた。
これは、大正解のやり方だったと思う。今は、いじめを事件化しちゃうお父さん、お母さんが多い。すぐ、「あのー、うちの子がいじめられたって言ってるんですけど」って学校へ連絡しちゃう。これはよくない。
キミだって、親にこんなことをされたくないでしょ。いじめられた自分が、被害者あつかいされてさ。親も先生も、何かやってあげたい気持ちはわかるけど、「子どもの世界は、子どもにまかせる」という方針で、変な介入はしないでほしいよね。
ある中学校では、いじめた子を先生がつきとめて、いじめられた子の自宅へ謝りに行かせた。そうしたら、いじめられた子が自殺してしまった。大人が、やってはいけない介入をしてしまったんだね。
でもね、大人だって不完全。悪気があってやってるんじゃない。もし、親がいじめに対してまちがった対応をしてしまっても、死んじゃだめだよ。
笑いを武器にする
いじめられていたぼくが、どうなったか。
家ではいじめられているつらさを忘れて、学校では死ぬ思い。これを繰り返していたわけ。そうすると、人間、自然と強くなるんだね。ドストエフスキーの言葉に「人間は、どんなことにでも慣れる生き物だ」っていうのがあるけど、本当にそのとおりだと思う。1カ月続くと、例のでこっぱちコールが始まっても「あいつ、今日はいつもよりこっちに来るのが遅いな」って感じで、冷静に見られるようになっていった。
そして5月に、児童会の副会長に立候補したんだ。全校生徒1500人の前であいさつをするそのときに、ぼくはピンとひらめいた。
「おはようございます! ぼくが頭のデッカイ高濱正伸と申します‼」
と言って、パッと横を向いた。大きな頭が丸見え!
「お~!」と沸く子どもたちに、
「みんなの2倍、3倍は脳みそがあります!」
これがバカ受け。次の日、いじめは終わってた。
ここからわかるのは、笑いにもっていかれたら、いじめてる側としてはまったくかいがなくなっちゃうってこと。ぼくは、「常に周りを笑わせ続けていたら、いじめは降りかからない」ということを体得したわけ。
お笑いタレントの自伝を読むと、いじめられた経験を持っていることが多い。いじめられている渦中の人は、今本当につらいだろうけど、応援しています。いろんな経験は必ず生きるから。


