鍛えるどころか「使っていなかった」教育現場

私がこれまで見てきた日本の教育現場の多くは、「創造力」を鍛えるどころか、使おうとさせていませんでした。

現在の日本の学校は、依然として暗記型授業が中心です。国立青少年教育振興機構の「高校生の勉強と生活に関する意識調査報告書」(2017年)によると、日本の高校生の41.7%が「教科書に従って、その内容を覚える授業」に対し「ほとんどそうだ」と回答しています。

これに「半分以上はそうだ」と答えた49.5%を加えると、実に9割の高校生が「学校の授業は暗記が多い」と感じていることになります。その結果、子供たちは創造力や発想力が鍛えられないまま育ち、自分で考える力が衰えてしまっているのです。

昨年の夏、私はあるサマースクールに教師として参加しました。リサイクル素材をたくさん用意し、「これを使ってお祭りのゲームを作ろう」とか「街を作ろう」といったワークショップを行ったのですが、そこに参加していた日本の子供たちからはほとんどアイデアが出てきませんでした。自由に使ってよいと伝えた四角い箱を前にしても、「ここから何かを作りだそう」という発想がなかなか湧いてこない様子でした。

そのとき私は気づきました。今の子供たちは与えられた課題をこなすことはできても、何もない状態から自ら考え、創造することが苦手なのだと。ただ、サマースクールは数日間かけて行われるため、何日かたつと、子供たちから徐々にアイデアが出てくるようになりました。

創造力は訓練次第で伸ばすことができます。枠にとらわれず何かを生み出す経験が不足しているため、子供たちがその力を十分に発揮できなくなっているだけなのです。

創造力が向上…「感受性」を育てる感情チャートとは

何かを創造する際に、「感受性が豊かである」ことは有利に働きます。例えば椅子を作るにしても、「座ったときに心地よいか」「どの素材が最適か」といった視点をもてることで、より良いものを生み出せるようになります。

しかし、この「感受性」は教育の中で意識的に育てなければ、次第に失われてしまうものです。人間の赤ちゃんや幼い子供は本能的に感受性を働かせながら成長しますが、成長するにつれて意識しなければ使わなくなり、次第に鈍くなってしまいます。

この点に注目し、私たちの学校では「感情チャート」という取り組みを導入しています。喜び・ワクワク・落ち着き・緊張など、さまざまな感情を表すスマイルマークが用意されており、朝、学校に来たら「How do you feel today?(今日の気分はどう?)」という問いかけとともに、生徒たちは自分の気持ちを意識して選び、スマイルマークのクリップを付けます。

こうしたチャートを活用することで「今日は朝バタバタしてイライラしたな」とか「すごく興奮して学校に来た!」といった気持ちを子供は認識することができるのです。これを繰り返すことで、子供たちは、シートがなくても自らの意識を外に表現できるようになっていき、豊かな創造力にもつながっていくのです。

中内さんの学校で実際に使用している「感情チャート」
筆者提供
中内さんの学校で実際に使用している「感情チャート」。

これは家でも真似できる手法だと思うので、ぜひ試してみていただければと思います。