忙しいビジネスパーソンが英語の学習時間をどのように捻出すればいいのか。通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチであり、早起きの達人でもある松岡昇さんに、早朝学習を取り入れた学習法を教えていただいた。

英語はその気になれば1年で使えるようになる――。こう断言するのは、国際コミュニケーションや社会言語学を専門とし、英語およびグローバル人材育成セミナーでも講師を務める松岡昇さん。英語独習のための著作を発表している英語のプロは、ほとんどの日本人は英語を使えるほんの一歩手前にいると指摘している。

「言い換えればプールサイドでハウ・トゥ・スイムの本を読んでいるようなものです。水に入って練習すれば泳げるのに、やらない。英語も同じで、使う練習さえすれば使えるようになります」

では具体的にどう行動すればいいのか。松岡さんは、目標とする学習時間を決めることと、それを継続するための工夫をすることが重要だと言う。

学習時間の目標は
すばり1,000時間

松岡 昇●まつおか・のぼる
獨協大学、立教大学講師。青山学院大学大学院国際政治経済研究科修了。専門は、国際コミュニケーション、社会言語学。通信講座『1000時間ヒアリングマラソン』のコーチとして活躍し、多くの英語セミナーで講師を務めている。著書に『日本人は英語のここが聞き取れない』(アルク)など多数。

「アメリカの外交官が日本語を学ぶプログラムの時間数は1,000時間です。一方で日本人の留学生が英語を学ぶとき、かなり聞く力がつき積極的に自分から話せるようになるのにかかる期間はおおむね5カ月。1日7時間英語を学ぶとして5カ月でやはり1,000時間ほどになります。つまり、1,000時間やればかなりできるようになる」

松岡さんは1,000時間の学習を1年間でこなすことを推奨する。

「1,000時間の学習に2、3年かけてもいいとは思います。しかし、それ以上の期間をかけても効果があがりにくいのは経験上わかっていることですし、やると決めたら1年で決着をつけるくらいの覚悟があったほうがいい。問題はその時間をどう捻出するか、です」

年間1,000時間。果たして仕事をしながら英語を学び続けることは本当に可能なのか。松岡さんが解説する。

「1年で1,000時間は、週に約20時間、ということは毎日3時間程度の勉強ということになります。片道1時間の通勤時間があるなら往復2時間のすべてを英語学習にあてることができる。残りは1時間。私は早朝学習を推奨します。電話もかかってこず、雑音もない早朝こそ勉強には最適です。睡眠時間は短くなりますが、それくらいしないと学習時間は作れないし、時間をかけないと、英語を使えるようになるのは難しい。

私自身、今も4時半に起きる生活をしていますが、慣れればなんともない。自分がやりたいことのために取れる貴重な時間だと思います」

座学と“マ学”を
組み合わせて反復を

1日3時間として、毎日どんな勉強をすべきか。松岡さんは12のステップにわけて解説している。

「CDを聞きながら概要をつかんだり書きとったり、それを自分で添削して自分の弱点を発見したり。これら語句のチェックを含めての最初の4、5ステップまでは机に向かってやります(座学)。その後、音読したり、暗唱したり、あるいは文字を見ずにCDの音声を追いかけて発音したり、さらには口頭英訳、要約など、最後の12ステップまでについては、実は電車での移動中にもつぶやきながらできることです。これを私は、隙間時間を使った学習、通称“マ学”と呼んでいます。座学とマ学をうまく組み合わせ、自分のペースでやっていくと効果的です」