Q 偏差値の高い学校は有利? >>マイナス影響に要注意
なるべく偏差値の高い学校に行ってほしいと願う親は、周囲の優秀な学友からの影響を受けて、わが子の学力も上がってほしいと期待してのことでしょう。このように友人や周囲の人から受ける影響を、経済学ではピア・エフェクトといいます。
よく知られているのは、スタンフォード大学のキャロライン・ホックスビィ教授の研究です。学年の平均的な学力が高いほど、属する生徒の学力が上がることを示しました。優秀な子たちの集団に属していることは、かなりのプラスの影響力があると分析したのです。
同級生の国語の平均点が1点上がると、自分自身の点数が0.3〜0.5点上がる程度の効果があり、同級生の算数の平均点が1点上がると、自分自身の点数が1.7〜6.8点も上がる効果があるというのです。
一方で、日本の研究では、正反対の結果がでています。
埼玉県の公立小学校と中学校で実施している学力テストを使った分析によると、クラスの平均的な学力が上がると生徒の学力が下がるというマイナスのピア・エフェクトが示されたのです。
国語では、クラスの平均的な学力スコアが1上がると、本人のスコアは0.09〜0.23下がりました。算数のほうがマイナスの影響は大きく、クラスの平均的な学力スコアが1上がると本人のスコアは0.16〜0.27低下することがわかったのです。結果に男女差はありませんでした。
この結果から、成績の良い同級生が多いクラスでは、相対的な学力が低いという自己意識を持って学習への意欲を失ってしまったと考えられます。
このように、ピア・エフェクトについては、まだはっきりした結論が得られていない状況です。
子供は、集団のなかでの立ち位置を察します。一度学校のなかで成績が下位になってしまうと上がってこられない生徒のことを「深海魚」などと言いますが、その理由の一つは、相対的な順位が低くなることで生徒の意識が低下してしまうことではないかと考えられます。
重要なのは、子供が「自分はあの子よりできない」などと自分の能力を過小評価しないように支えてやることだと思います。そのためにも、「努力をすれば成果につながる」と思える成長マインドセットを育むような接し方が有効です。