企業の社会的責任(CSR)はいまや国際的な動きとなっている。その領域は単なる社会貢献にとどまらず、企業価値の向上に資する「戦略的CSR」へと進化をしている。社会と企業のあり方はどう変わっていくのか。CSRに詳しい創コンサルティングの海野みづえ代表に聞いた。
サスティナビリティの視点が
企業価値を高める
企業がCSRを果たすことは、いまや国際的な潮流となっています。2010年にはCSRの国際的なガイドライン、ISO26000もスタートしました。
これまで日本でCSRというと社会貢献やコンプライアンスの側面が強調されてきましたが、これらはCSRの基本部分でしかありません。近年のCSRは、事業活動を通じていかに社会の課題を解決できるのか、という方向へシフトしています。重要なのは、企業が自身の利益のみを追求するのではなく、地域社会とともに成長できるサスティナビリティ(持続的な発展)の視点を持つことです。
2010年に米国で行われた調査によると、企業経営者の半数以上が、「サスティナビリティが今後の事業の上で非常に重要になっている」と回答しています。さらに「サスティナビリティが企業の評判やブランドに及ぼす影響が大きい」との回答は72%に達しました。CSR発祥の地である欧州では、米国以上にサスティナビリティを重視する傾向が強くなっています。
これに対して日本は、社会貢献やコンプライアンスを行えば「CSRを推進している」と考える経営者がまだ多いように感じます。こうした方はCSRの本質を見誤っている、といわざるを得ません。
本来のCSRとは、コンプライアンスやリスク対応など消極的な対応にとどまらず、企業価値の向上という積極的な役割も果たすものです。こうした効果的なCSRブランディングを実践するには、本業とリンクしたCSRの仕組みを構築する必要があります。
寄付などの社会貢献そのものは素晴らしいのですが、あれもこれもと手広くやっていると、結局その企業が何をやっているのかが伝わりにくく、十分なブランディング効果を発揮できません。例えば水に関わる企業であれば、水資源保護の基金を設立し、海や川の保全に特化した寄付などに取り組むのもいいでしょう。CSRに“自社らしさ”を取り入れることで、ブランディング効果が高まります。