高まる企業の立地意欲 その背景にあるものとは

企業の立地意欲が高まっている。一般財団法人日本立地センターの「2023年度新規事業所立地計画に関する動向調査」によれば、事業拠点に関する立地計画(新設・増設・移転)について、「計画がある」と回答した企業は25.0%で3年連続の増加。さらに、「製造業は過去30年で最高の水準に、物流業は統計開始の2012年度以降最高となった」とのことだ。立地戦略は成長戦略とつながっている。今、多くの企業が新たな成長の機会を見いだしているということだろう。

また、立地動向活発化の背景として、「生産の国内回帰」も考えられる。製造業については、安定した調達の実現、円安への対応、地政学的リスクへの対応などの理由から、海外の生産拠点を日本に戻す動きが強まっているのだ。

一方、海外の先端産業が日本に工場を新設する動きも見られる。安定した事業インフラの確保、優良な製造装置メーカーや部品メーカーとのサプライチェーン構築などを目的に日本に進出しているのである。

こうした状況下で課題となっているのが国内の産業用地不足だ。企業側には、いかに自社に適した用地を見つけ、どのようなプロセスで拠点をつくり上げるか、より精緻な立地戦略が求められるようになってきている。

分譲可能面積の推移
経済産業省「自治体担当者のための産業用地整備ガイドブック」(日本立地センター「2023年度版産業用地ガイド」より算出)より。

今、企業が立地先に求めているもの

戦略策定における重要な作業の一つは、優先順位を決めることだ。実際、自分の会社が新たな拠点設置を考えているとして、どのような要素を重視するだろうか。

もちろん「用地価格」や「交通アクセス」などは外せない検討条件となるが、それ以外で近年重視されている項目に「人材」がある。先の日本立地センターの調査によれば、「自治体等に求める立地環境向上の取組み」(製造業)で「人材確保・育成の支援」と回答した企業は51.4%に上り、21年度と比較して6.1ポイント増加している。その他、「事業連携等のマッチングへの支援」「BCP策定への支援」なども21年度より23年度の方が割合が高く、企業の関心度が増していると見られる。

一方、進出先候補の自治体を知ることも戦略策定における欠かせない作業だ。それを支える有効なツールとして、経済産業省と内閣官房が提供する「地域経済分析システム(RESAS)」がある。自治体ごとの人口の増減や産業構造、地域経済循環などを調べられ、複数の自治体を比較するのにも便利だ。

いずれにしても全ての条件を100%満たす自治体や産業用地を見つけるのは難しい。まず自社が求めるもの、その優先順位を明確にすることがやはり重要だ。その上で、進出後の自社の姿を具体的にイメージできるかどうか。これが、立地先選びにおける大事な判断基準となるだろう。