希望を叶えるための助走は
ぜひ40~50代のうちに

──資産運用では、投資商品のリスクを恐れる人も少なくありません。

和泉 リスクを避ける選択もあって当然です。ただ同じリスク商品を購入しても、その後の状況への対処が重要でしょう。個人として資産運用や投資を行うのであれば、やはり長期的な視点は不可欠。機関投資家にはある意味で短期的な結果が求められますが、セカンドライフを考える個人にとっては、今年、来年よりも、10年後、20年後が課題なはずです。

日ごろビジネスでリスクをとらない人はいないはずです。もちろんリスクのレベルは重要な問題で、常に判断力、決断力が求められます。その力を、プライベートな資産運用にも生かさない手はないだろうと思うのです。

運用の実行では、商品の流動性、安全性、収益性を考え、短・中・長期に配分するようお勧めします(図参照)。私自身は収入が変動しやすい小規模な会社を経営しているので、何かのときにすぐ使える流動性の高い資金も厚めにするよう心がけています。特に長期運用に関しては、何をいつ購入するかも大事ですが、成否は値動きに狼狽しないメンタリティと適切な対処にかかってきます。仮に金融商品の値が下がり始めても、損失を確定させたいからとすぐに売却するのではなく、「長期的に保有を続け、いずれリターンが確保できるのを待つ」といった姿勢が大切になるでしょう。

むろん投資可能額をはっきりさせておき、資金的な余力を残すことは必須の前提条件です。市況が悪くなったときに打つ手がない、というのが最も良くないパターン。余力があれば、金融商品の価格が下がったときに購入するといった対応も可能になります。

──一方、介護も大きなテーマです。関連するNPOの理事もされていますが、どう考えておけばいいでしょうか。

和泉 現役世代であれば、ご両親のケアが当面の課題だと思います。事情により在宅介護が困難であれば、専門施設の利用が選択肢となってきます。

お元気で自立しているときから入居できる有料老人ホームと、要介護となってからの施設に大別されますが、どちらも要介護度が増していく場合にどこまで対応してもらえるか、という確認が不可欠です。また、高齢者にとって新しい環境への適応は重い負担を伴いますので、見学や体験入居は欠かせませんし、入居時の一時金や、その後の維持管理費もしっかり確認・検討すべきです。

40~50代の方々ご自身の将来については、現状以上に施設の不足が懸念されています。不確定要素の多い課題ですが、早くから関心をもち、情報を集め、可能な範囲で先を見通し、その費用計画も考えておくのがベターでしょう。

──セカンドライフを楽しむためのアドバイスもお願いします。

和泉 65歳までは仕事をするかもしれず、75歳を超えると身体的な制約も生じてきます。65歳からの10年が、本当に楽しめるセカンドライフとなるでしょう。心身とも元気で、子どもも完全に独立し、いよいよ自由。でも、それを満喫するには資金の準備とは別の助走期間も要します。工芸や園芸のスキルを学ぶ、山歩きに慣れる、船舶免許を取る……ご自身が打ち込みたいことに向けて準備を始めるのは、やはり40~50代のうちが望ましいでしょう。一緒に楽しめる友人づくりは最も大切だと思います。

どなたにも充実した毎日を過ごすチャンスが待っています。白いキャンバスに絵を描くように希望の計画を立て、ぜひいまから動き始めましょう。