全国公私病院連盟の調査によれば、近年の赤字病院数の割合は6割~7割で推移しており、病院経営は淘汰の時代を迎えている。そうした中、病院・介護・医療機関職員の接遇力向上を目指すコンサルティングや研修を実施し、結果的に患者の満足度を向上させ、選ばれる病院づくりに結びつけているのが、ラ・ポールだ。接遇のコンサルタント、研修講師として全国を飛び回る福岡かつよ社長に、今、個人・組織問わず求められる「おもてなし力」向上の勘所を聞いた。
ラ・ポール株式会社

医療・介護機関を中心に、コミュニケーション力および接遇力向上のためのコンサルティング事業と研修事業を実施する。個々の組織の現状分析を行い、それぞれに合ったカリキュラムを提供する点に特色がある。

福岡かつよ●ふくおか・かつよ ラ・ポール株式会社 代表取締役鹿児島県生まれ。全国で年間150本(2011年実績)を超える研修を実施。メディア出演も多く、執筆活動のほかラジオ番組ではマナーコーナーをレギュラー担当している。

福岡かつよ氏は会社設立以来、営業活動はほとんど行っていないという。口コミで広がる評判を聞きつけた病院や医療機関などから、接遇研修やコンサルティングの依頼が次から次へと舞い込むからだ。

「お声がけいただいたら、最初に行うことは、組織の現状や悩み、そして最終的に目指すラインまで細かくお聞きした上で弊社が提案できる内容をご説明し、ご理解いただいた上で『本当に私どもでいいか』を改めて判断していただくこと。研修をすることは、組織にとって最も大切な人材をお預けいただくようなもの。最も重要な資産への投資をお任せいただくわけですから一分の齟齬(そご)があってもいけません。相互の信頼が成り立って初めて成果が生まれるからです」

そうした相手の意図を的確にくみ取ろうとする姿勢、自分の意思を明確に伝える能力、そして行動力こそが、顧客から厚い信頼を得ることにつながっているようだ。

福岡氏が医療機関における接遇に着目したのは、厚生労働省の外郭団体に勤めていた時代に遡る。介護保険立ち上げを控えた1998年、医療や介護の現場を対象にしたさまざまな調査研究に携わったことがきっかけだった。

「医療の現場はとにかく忙しく、スタッフは疲労困憊しているため、患者が病という命にかかわる大きな不安を抱えているにもかかわらず、その立場に思いを至らせることが困難な状況。そこでミスコミュニケーションが生じ、せっかくの医療技術が有効に生かされないという事態が起こります。適切な医療が患者に提供されるためには、双方のコミュニケーションの改善、すなわち医療を施す側の接遇力向上が有効と考えました。また、それが患者=顧客の満足度を高め、病院にとっても大きなメリットをもたらすと考えたわけです」