自立への意識が高く、就労や社会活動に対しても意欲的とされるアクティブシニア。国もその活動を後押ししている。例えば就労関連では、2021年4月に「改正高年齢者雇用安定法」を施行し、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とした。

「令和4年版高齢社会白書」によれば、65歳以上で「収入を伴う仕事をしている」(自営業を含む)と回答した人は30.2%に上る。この割合は、今後さらに高まっていく可能性が高いだろう。

ただ、ここで注意しておきたいことがある。それは年代による差だ。同白書を詳しく見ると、65~74歳の男性で「収入を伴う仕事をしている」と回答した人が50.7%なのに対して、75歳以上は25.1%と半分以下に。女性は同様に33.0%から8.1%へと大きく低下している。

当然といえば当然の結果かもしれないが、シニア層を単純にひとくくりで捉えてしまうと、その本質を見誤ることにもつながりかねない。その点は押さえておくべきだろう。

親世代と子世代で意識のずれも

アクティブシニア層の活躍の機会をつくる一方、日本人の平均寿命が男性81.05歳、女性87.09歳(※1)となる中、80代以上の年齢層の生活にも目を向ける必要がある。近年、老年学の分野でも「超高齢者(概ね85ないし90歳以上)についての研究が盛んに行われる」(※2)ようになっており、その理由は「この時期が平均寿命を過ぎ、心身の健康度低下や社会的役割の喪失が顕著に認められるようになるためである」(※2)という。

実際、70~74歳の要介護認定率は5.5%に過ぎないが、75~79歳のそれは12.4%、80~84歳で26.4%、そして85~89歳になると48.1%(※3)と急激に高まる。まさに高齢者をひとくくりにはできないことをよく示している。

「令和4年版厚生労働白書」より。資料:厚生労働省老健局介護保険計画課「介護保険事業状況報告」、総務省統計局「人口推計」より厚生労働省老健局総務課において作成。(注)2020年9月末の要介護認定者数及び2020年10月1日の人口推計(平成27(2015)年国勢調査を基準とする推計値)から作成。

今や大きな社会課題である高齢者の介護については、親世代(高齢者本人)と子世代の意識のずれがしばしば指摘される。子世代はこの問題に関して、作業に伴う心身への負担、兄弟姉妹間での分担の在り方やトラブルなどさまざまな不安を思い浮かべるが、親世代の多くはそもそも子どもに介護してもらうことを求めていない。内閣府の調査(※4)によれば、「将来、排せつ等の介護が必要な状態になると考えた時の不安点」の1位は「家族に肉体的・精神的負担をかけること」(65.6%)だ。また、「将来、排せつ等の介護が必要な状態になった時、誰に介護を頼みたいか」に対して、「子」「子の配偶者」と答えたのは13.9%。1位は「ヘルパーなど介護サービスの人」(46.8%)である。

親の考え、思いが事前に分かっていれば、すれ違いはある程度避けられる。そこで今注目されているのが、「アドバンス・ケア・プランニング(愛称、人生会議)」だ。いざというときに備え、本人が望む医療やケアをあらかじめ考えて、家族や医療、ケアチームと繰り返し話し合い、共有するこの取り組み、一般の認知度はまだ低いが、医師や看護師の間では重視すべきとの声が高まっている。人生の最終段階でどのような医療、ケアを受けたいか、また受けたくないかは、その人の人生観とも深く関わってくる。そこには本来多様な選択肢があるはずだ。

充実したシニアライフを手に入れるには、本人、家族とも固定観念に縛られないことが大切だろう。「老後とはこういうもの」「介護とはこうあるべき」といった考えにとらわれず、年齢による変化なども考慮して、より良い人生の在り方を柔軟に発想することが、豊かな時間の実現につながるに違いない。

※1「令和4年簡易生命表」(厚生労働省)より。
※2「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書」(日本老年学会・日本老年医学会)より。
※3「令和4年版厚生労働白書」(厚生労働省)より。
※4「令和4年度 高齢者の健康に関する調査」。

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