少量の採血で将来の疾病リスクが予測できる「フォーネスビジュアス」。本検査サービスで人々の健康意識はどう変わるのか。自身の健康はもちろん、チームや家族の健康もパフォーマンスに影響するという元ラグビー日本代表の田中史朗選手と、サービスの技術開発・提供を行うNECソリューションイノベータ代表取締役 執行役員社長の石井 力氏が語り合った。

認知症、心筋梗塞、脳卒中などの将来の発症リスクが分かる

【石井】世界的に活躍するトップアスリートである田中選手は、人一倍健康には気を配っておられるのでしょうね。

【田中】はい。スポーツ選手にとって健康であることは何より重要ですから。とくにチームスポーツであるラグビーの場合、怪我や病気でプレーできないと仲間に迷惑をかけてしまうので、毎年健康診断を受けていますし、日々のトレーニングでは怪我をしないようにケアも行っています。

石井 力(いしい・ちから)
NECソリューションイノベータ株式会社 代表取締役 執行役員社長
1985年に日本電気株式会社入社。執行役員、NECソリューションイノベータ株式会社取締役を経て、2016年に日本電気株式会社執行役員常務に就任。22年より現職。

【石井】それは素晴らしいですね。いま、日本の20歳以上の約67%が健康診断を受診しているというデータがあります(※1)。それにもかかわらず、医療費や介護給付費などの社会保障費は増え続け、2040年には190兆円に達するとみられています。これは、健康診断が病気の早期発見には有効でも、病気になる前にそのリスクを知ることはできず、かつ、病気にならない生活習慣への行動変容を促す力は弱いことに起因しています。

そこで当社は「早期発見よりも、もっと早く」のコンセプトの下、少量の血液検査で将来の疾病リスクを可視化できる世界初(※2)の技術を活用したサービスを開発しました。認知症、肺がん、心筋梗塞などの罹患りかんリスクをデータで解析し、個人に合わせた生活習慣改善までサポートする「フォーネスビジュアス」を、2020年から医療機関の医師を通して提供を開始しています。

※1 健康診断受診率:平成25年 国民生活基礎調査(厚生労働省)
※2 世界初:7000種類のたんぱく質を少量の血液で一括分析する技術として(2024年2月時点。NECソリューションイノベータ株式会社調べ)

【田中】病気の発見や予防ではなく、「予測する」というのは新しい概念ですね。私は年齢的にベテランの域なので、トレーニングでどれくらい自分の身体に負荷をかけてもいいか、あと何年現役でプレーできるのかなどは常に気になっています。自分の今の身体の状態から将来の疾病リスクが分かれば、トレーニング強度やアスリートとしての人生設計を立てやすくなるので、心身共に安心できます。パフォーマンスも向上して、その分アスリート寿命も長くなるのではないでしょうか。

田中史朗(たなか・ふみあき)
NECグリーンロケッツ東葛
1985年京都府生まれ。2013年に日本人初のスーパーラグビーに参戦。W杯では11年、15年、19年に出場し、19年は日本代表を初のベスト8に導く。21年にNECグリーンロケッツ東葛に入団。

【石井】まさに私たちが目指しているのはそこなのです。5年後、20年後の疾病リスクが分かれば、食事や運動など行動を変えていこうと思いますよね。今や「人生100年時代」といわれ、自分らしく暮らし続けるためには健康寿命を延ばすことが不可欠ですが、健康で生き生きと暮らしていくためには、一人一人の、この健康に対する意識と行動変容が非常に重要です。

当社には「いつかを、いまに、変えていく。」という企業理念があります。将来の疾病リスクを可視化して、一人一人の健康意識・行動変容を促すことで、個人のウェルビーイング(心身共に満たされた状態)を高め、それを企業、社会へと広げて社会全体のウェルビーイング向上を目指す。そして、ひっ迫する医療費・介護費用の軽減にもつなげていきたい。それを目標に掲げています。

ところで、プロスポーツの世界では、メンタルケアも非常に重要だと伺っています。自分や家族の健康に不安があると、試合のパフォーマンスに悪影響が出ませんか。実は私自身、海外出張している時に母が脳卒中で倒れたことがありまして。幸い、大事には至らなかったのですが、出張中は母のことが心配で、著しくパフォーマンスが低下しました。もしこの時、母が脳卒中を発症するリスクを事前に予測できていたら、出張時期を変更するか、あるいはその前から、リスクを減らすような意識・行動変容ができて、パフォーマンスを維持できたのにと悔しく思いました。

【田中】それはご心配でしたね。いまのお話を伺って、離れて暮らしている父のことが頭に浮かびました。父はお酒が大好きなので、もし長年の飲酒習慣によって発症する可能性のある疾病リスクが事前に分かれば安心できますし、私自身も小さい子どもを持つ親として、自分の将来の疾病リスクが分かるのはうれしいです。ちなみに、「フォーネスビジュアス」では具体的にどのようなリスクが分かるのですか?

【石井】検査日から5年以内(※3)、20年以内の認知症、4年以内の心筋梗塞・脳卒中、5年以内の肺がん、4年以内の慢性腎不全の発症リスクが分かります。現在の状態と将来の発症リスクが一覧で見られるので、検査結果を基に、健康状態の把握や生活習慣の見直しができます。また、胃がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん、膵臓すいぞうがん、うつ病も研究開発中です。

※3 5年以内の認知症発症リスクは65歳以上の方のみ提示

検査結果報告書および検査結果のサンプル。検査結果は、医療機関の医師の診療として個人に提供される。
フォーネスビジュアスはNECグループのフォーネスライフとNECソリューションイノベータが共同開発したサービスです。

※4 各疾患リスクのカッコ内の年数以内で疾患リスクを提示。5年以内の認知症発症リスクは65歳以上の方のみ提示

5ccの採血で約7000種類のタンパク質を分析し可視化

【石井】これは、わずか5ccの採血で約7000種類のタンパク質を一度に測定する世界初の技術によって実現できました。

【田中】たった5ccの採血で、なぜここまで分かるのですか?

【石井】タンパク質の数や種類を調べて、ある疾患に関係のあるタンパク質を特定します。そして「こういうタンパク質の構成の人は、5年後に認知症を発症する傾向がある」といったデータをたくさん集めて、ビッグデータとして解析することで、リスク予測をしていくわけです。当社は血中タンパク質測定技術を持ったアメリカのソマロジック社と提携し、NECグループが持つビッグデータ解析・ICT技術を活用しています。現在世界でリリースされている疾病リスク予測の中で、非常に高い精度で結果を出しています。

検査時間も短くてすみますし、健康経営の推進サポートツールとして自治体や企業からのお問い合わせも多く頂いています。実際、2023年3月には、高齢化率が36.23%で3人に1人が高齢者という熊本県荒尾市が、「スマートシティプロジェクト」の取り組みの一環として、市民61人に検査を実施。検査を受けた市民からは「5ccの採血で身体の状態が分かるのはうれしい」と、喜ばれました。また、愛媛県今治市でも健康で長生きできる仕組みづくりや介護給付費の増加抑制など、市の財政健全化に向けたモデルの構築を目指すプロジェクトが始まり、「フォーネスビジュアス」が導入されています。

田中選手のようなアスリートのみなさんにとっても、検査前日や当日の食事・運動制限なく受診できるのは、予定調整がしやすく、気軽にご活用いただけるのではないでしょうか。

【田中】そうですね。健康診断の日は前日から食事制限があり、当日は血液検査もあって健診後の練習ができないので、受診日程の調整には苦労していたのです。でもこれなら日常生活に支障なく短時間で受けられるので、調整がしやすくなりますね。検査に抵抗がある親世代にもすすめやすいです。

【石井】そう言っていただけるとうれしいです。ただ、「健康第一」と思っていても、生活習慣を変えるのは大変ですよね。そこで、フォーネスビジュアスでは受診者一人一人の結果に寄り添う、コンシェルジュサービスもご用意しています。1回の血液検査につき、検査結果を基にオンラインで40分間/2回の保健師による健康相談が個別に受けられるサービスです。一人一人に最適なアドバイスを提供し、生活習慣改善を後押ししています。

【田中】個別にアドバイスまで頂けるのは頼もしいですね。データで分析してもらえると説得力がありますし、一人一人がもっと自分の身体や健康について意識するようになると思います。スポーツ業界なら、チーム全体のパフォーマンス向上につながり、ひいては日本のスポーツ選手全体の能力向上になっていくと思います。これはぜひ、ラグビー協会にも広めたいです。

【石井】ありがとうございます。NECグループは「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現」というパーパスを掲げ、ICTの力を最大限に活かして社会価値を創造しています。今後も当社は「今」と「将来」の健康状態・疾病リスクを可視化し、一人一人にフィットした改善策を提案するフォーネスビジュアスで、誰も病気にならない未来を目指し、誰もが生き生きと、自分らしく生きられる社会を応援していきたいと思っています。

●本検査は、健康保険の対象ではありません。医療機関の自由診療として実施されます。●本検査は、特定の年齢層の方のデータを対象として行われた分析結果に基づき判定します。●医師の判断によることなく、本検査の結果を、疾病の診断・治療・予防等に用いることはできません。●本検査は、その結果の正確性や、他の検査方法と同等の結果の提供を保証するものではありません。●将来の疾患予測に関する検査結果は、生涯にわたってのリスクを予測するものではありません。●コンシェルジュによる健康相談は、フォーネスライフからご利用者に直接ご提供するサービスです。これらは、ご利用者の生活習慣の改善、健康意識の向上をご支援するものであり、検査結果の改善や、疾病の診断、治療、予防等を目的とするものではありません。●本検査の結果に対する理解と行動は、個人の判断に委ねられます。