立て替え、精算の手間が当たり前になっていた
――これまで、事故後のお客さまの移動にはどのような課題がありましたか。
【吉本】以前からタクシーでの通院などはありましたが、料金の立て替えがやはり大きな課題でした。一時的でもお客さまに金銭の負担が生じ、その後も精算のため領収書、利用区間などを当社に郵送いただくことになります。中には領収書が数十枚、数百枚に上る方もいらっしゃる。その整理や送付は大変です。
一方で当社にも、日々届く領収書の内容や金額を確認して一件一件指定の口座に振り込んだり、領収書をPDF化して保管したり、作業が発生します。正直、長年それが当たり前になっており、潜在的な課題になっていました。そうした中「GO」が普及するのを見て、「使えるのでは」と考えたのが今回の取り組みのきっかけです。サービスの運営会社であるGOと連携し、2021年に東京都内で実証実験を行いました。
――結果はどうでしたか。
【吉本】高齢者や交通の便が悪い場所にお住まいの方などからも「スマホの操作がとても簡単」「これならタクシーに乗りやすい」といった声を頂き、立て替えや精算に伴う心理的な負担がタクシー利用の障害になっていたこと、逆に負担がなければタクシー移動のニーズが高いことが確認できました。
保険会社にとって、交通事故に遭われたお客さまの早期回復のサポートも大事な仕事。事故自体が大きなストレスですから、その後の安全・安心な移動の確保は重要な課題です。無理な移動をして二次被害に遭うリスクは極力減らしていきたい。実証実験で、「GO」の活用が精算の大幅な効率化に加え、お客さまの精神的な負担の軽減にも貢献することがよく分かりました。
チケット発行、送付や利用履歴の確認も簡単
――「GOチケット」を使った新サービスの具体的なメリットを教えてください。
【吉本】今回の仕組みでは、チケット利用分の料金がGOからあいおいニッセイ同和損保にまとめて請求されるため、お客さまも当社も個別の精算に掛かる手間はなくなります。チケットは、法人向けサービスの「GO BUSINESS」を使って当社がオンラインで簡単に発行可能。お客さまにはチケットコードやURLをSMS(ショートメッセージサービス)で送っています。有効期限や上限金額の設定、乗車地の制限も任意で細かく行えるので、適正な利用を促すことができる。「GO BUSINESS」の利用に、初期費用、月額固定費がかからない(※)ことも助かっています。
そしてもう一つ実感しているのが、個々のお客さまのタクシー利用履歴を管理画面でいつでも確認できることのメリットです。当社スタッフは事故に遭われたお客さまに、治療状況の把握などのため連絡を行います。治療が終わると関連の手続きもあるからです。その際、いつからどの程度通院されているかが分かっていれば、やりとりはとても円滑になる。今回のサービスは、補償完了までのスムーズかつシームレスなお客さま対応の実現にも大きな効果を発揮しています。
――サービスの今後の展開、抱負などをお願いします。
【吉本】1月からはあいおいニッセイ同和損保のスマートフォンアプリと「GO」の連携を開始し、より使いやすくしました。今の時代、デジタル活用によるサービスの利便性向上は必須。それは、お客さまが企業やサービスを選ぶ際の基準にもなっています。事故後のお客さまの他にもタクシー利用に関わる課題はあるはずです。それを掘り起こし、これまで当たり前になっていた手間や不便を今後も解消していければと思います。
※タクシー利用実績に応じたサービス利用料がかかります。
GO担当者より
URLをクリックするだけで「GOチケット」を登録可能。分かりやすさを追求し、誰もが使えるサービスに
今回のサービスはデジタルツールに慣れていない方も利用するため、いかに分かりやすいものにするかがポイントでした。そこで、お客さまはスマートフォンに届いたURLをクリックするだけで簡単にチケットを登録できるようにしています。また、「GO」をダウンロードされていない場合はすぐアプリのストアに誘導。操作に迷わない仕組みになっています。下の図のとおり、チケットや料金のやりとりもとてもシンプルです。
「GOチケット」の特徴は“ワンタイム”、つまり「1回限りの利用」のため管理しやすいこと。利用金額は100円単位、利用時間は分単位で設定でき、個々の目的に合わせた利用、提供が可能です。その特徴を生かし、ブライダル業界で招待客の送り迎えに使ったり、横浜市で待機児童がいる世帯にチケットを配布して自宅から離れた保育所等への移動を支援したり、活用のシーンは広がりを見せています。今後も「GO」の新たな利用価値を追求し、当社ミッションである「移動で人を幸せに。」を実現していきたいと思います。