経営コンサルティングで知られる武蔵野では現在、新卒採用支援サービス「kimete(キメテ)」を展開中だ。中小企業向けに特化、経営サポートで蓄積したノウハウに基づく採用コンサルティングに加え、マッチングサービス、学生の個別紹介、独自の適性検査サービスも提供する。同社でkimete事業を指揮する、kimeteCOO事業執行責任者の小嶺淳氏にお話を伺った。

武蔵野のノウハウを生かした採用サポート

経営者向けコンサルティング会社である武蔵野が、新卒採用支援に乗り出した背景はどこにあるのか。

「武蔵野の750社に上る経営サポート会員さまの中で、採用にお困りの会社が非常に多かったためです」と小嶺氏は説明する。

知名度は低いが企業として素晴らしい会社が、日本にはたくさんある。しかしその存在を学生は知らない。そこで武蔵野は「お互いを知る場をつくり、学生と企業のミスマッチをなくしていきたい」という狙いで、2018年5月にkimeteを創設したのだ。特に新型コロナが収束し始めたここ1年ほど、採用についての相談が急増しているという。

kimeteの公式サイト。新卒採用で悩んでいる企業の助けになるサービスがそろっている

kimeteの特長は武蔵野の経営サポート会員からの要望に即した、実践的なプログラムであること。武蔵野自らが蓄積した人材採用ノウハウを生かして、採用担当の育成・仕組みづくり・選考内容の策定などさまざまな形で即実践可能なコンサルティングを行う。また、サポートプログラムにはkimete会員による事例共有会があるという。

事例共有会はkimete会員企業が集まり、それぞれの成功事例を共有する勉強会で、特別ゲスト講演や情報交換も実施している。非会員による体験参加も可能なので、kimete導入を検討中の企業は、まずここで雰囲気を知るのがお勧めだ。

また、武蔵野が行っている学生向けのインターンシップを、見学を希望する企業に公開することもできる。こちらはインターンを通じた採用のノウハウを知りたい企業に最適だ。

人材マッチングサイト『kimete match』には、kimeteカウンセラーが面談をした学生が登録されており、面談の印象も知ることができる。マッチングイベント「kimeteフェス」は選考直結型の合同企業説明会で、1回のイベントへの参加を数社限定とし、学生全員ときちんと話せることが、一般の企業説明会との違いだ。参加企業の6割で内定につながっているという。

「サイトで登録しただけの学生を紹介することは基本的にはしていません。イベントに来てくれた学生や、就活生の教育講座に参加してくれた学生を、kimeteのカウンセラーが面談をした上で会員企業に紹介しています」と小嶺氏は言い切る。

それができるのは、kimeteが学生向けにも就職応援・支援サイト「就活カレッジ kimete」を運営し、専任のカウンセラーによる就活カウンセリング、無料のオンライン就職講座等で学生との接点を確保しているからだ。

さらにkimeteにインターンとして入ってくれた学生を会員企業に紹介したり、武蔵野自身の採用選考で出会った学生を、「うちよりこの企業に向いていそうだ」と紹介したりすることもあるという。

「一般的な内定承諾率が30%強であるのに対して、kimeteで紹介した人材の内定後の入社率は92%にもなります。これは人材紹介した学生には内定後も研修に参加してもらうなど、責任を持って一貫した人材教育を行っている結果と自負しています」(小嶺氏)。

独自の適性検査サービスと内定辞退を激減させる人材教育

適性検査分野では「人の輝き方発見ツール」とうたい、「マルコポーロ」「ミルメ」「ネット探偵」の三つを中心とした検査サービスを提供している。

小嶺 淳(こみね・あつし)
株式会社武蔵野
kimeteCOO
事業執行責任者
1980年生まれ。2003年に株式会社武蔵野に入社後、9カ月で課長に抜てき。自身で企画した内定者研修には、年間延べ300社1000名が参加している。

「マルコポーロ」は人格の基礎となる「ヒューマンコア(深層心理)」を可視化する検査で、当人の基本的な価値観、企業との相性を知ることができる。

「ミルメ」は武蔵野が自社開発した、武蔵野の小山代表独自の検査結果の読み解き方をセッティングしたツールだ。「その人材がどういった職種や会社に向いているのか」「どういった上司の下なら力を発揮できるのか」といった、人事が一番知りたいが、一般的な適性検査では提示されない内容に踏み込んでアドバイスを行う。アドバイスに従って組織の人材構成を変えることで、退職率が大きく下がったという結果は、ミルメを導入した会員企業の実績にも表れているという。

「ネット探偵」は、求職者のネット上のログを多方面から収集し、求職者がネット上でどのように振る舞っているかを可視化するもので、武蔵野による人物健全度調査サービスという形で提供されている。

「おかげさまで、『一般的な適性検査と比べて、kimeteの適性検査ツールセットは費用対効果が高い』という声を多く頂いています。世の中には、採用段階で適性検査ツールを使っている企業が多くいらっしゃるので、それを最大限有効活用する方法を広めていきたい」と小嶺氏は語る。

その他、内定者教育もkimeteの特長の一つだ。カード金融やネットトラブルなど、どの会社でも起きかねない実在の事例を取り上げ、内定者に注意を促している。これは武蔵野社内で実証済みの教育プログラムを内定者用に応用したもので、導入した企業では、「80%だった内定辞退率が9%にまで下がった」「3年以内の退職率が41%から6%に減った」といった顕著な効果が出ているという。内定辞退に悩む企業には、とくにお勧めといえそうだ。

「採用の決め手」を目指す

kimete会員は、現在は武蔵野のパートナー企業が中心だが、今後は全国に展開、新卒紹介だけでなく、中途採用や第二新卒、専門職の採用にも領域を広げていくという。

「採用の世界からミスマッチをなくしていくことがkimeteの目標です。学生の皆さんはまだ就職に関して視野が狭い人が多いので、就活教育を通じて、ベストマッチとは何なのかを理解してほしいです。企業にはぜひ、『求職者から選んでもらえる会社を目指す』意識を持っていただきたいです。そうした啓発活動を通じて日本の採用の概念を変えていきたいですね」。意気軒高の小嶺氏だった。

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