1995年、京セラの経営情報システム事業部が分離独立して、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が誕生した。その後、KDDIからも出資を得て発展を続け、2012年3月期には連結売上高が1,000億円の大台を突破。同年4月、新社長に就任したのが、佐々木節夫氏である。KCCSの現在と未来、そしてユーザーがICTを真に活かすための視点を、佐々木社長に聞く。

佐々木 節夫●ささき・せつお
京セラコミュニケーションシステム株式会社
代表取締役社長
1981年、早稲田大学理工学部卒業、京都セラミック株式会社(現・京セラ)入社。米国勤務など要職を経て95年、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)設立時に出向し、新規システム開発事業部長に就任。専務取締役などを歴任し、2012年4月より現職。

高度化・多様化したICTの
本当の価値を引き出すべき

――佐々木社長はKCCS設立時からのメンバーのお一人です。自社を取り巻く今日までの環境変化をどうとらえていますか?

佐々木 今日、KCCSグループにはICT事業、エンジニアリング事業、経営コンサルティング事業の3つのドメインがあります(下図)。なかでも連結売上高の約60%、単体では約75%を占めるのがICT事業で、その世界は非常に大きく変化しました。かつてもっぱらITと呼ばれたころ、システムの役割は過去の数字をスピーディに取りまとめ、効率アップをサポートすることでした。ITに"Communication"を足してICTとも呼ばれるようになったのは、インターネットの活用を含めてシステムのネットワーク化が急速に進んでからです。いまやICTは、ビジネスプロセスの見える化や情報共有をリアルタイムで実現し、事業そのものを行うために不可欠な技術となりました。

当社では、ITからICTへの進化を「経営の道具から武器へ」と表現しています。それだけに、私たちは過去のデータを瞬時に計算するシステムづくりの域を出て、現在はユーザーの事業に直接的に貢献できるパートナーとなるべく努めています。

――ICTシステムはあまりに高度化・多様化していますが、ユーザーが追求すべきICTの本当の価値はどこにあるのでしょうか?

佐々木 ICTが提供するのは単なる数字でなく、意味をもった情報であることが重要で、少なくとも事業のありのままの姿を正確に表さなくてはならないはずです。そして、その情報を端緒とし、具体的なアクションをとることができる。そこが肝心だと思うのです。行動を起こすのは経営者だけではありません。適切でタイムリーな情報は、社員たちのやる気を高め、行動を促す刺激となるでしょう。

例えば、売上だけをリアルタイムで追っていても、必ずしも「ありのままの姿」とはいえません。前段階の「受注」も重視してこそ、先々まで見通した売上管理を行うことができるのです。また、企業グループで各社・各部門に共通のKPIを設定しておけば、現場ではリーダーを中心にKPI向上を目指し主体的な創意工夫を重ねていくでしょう。ICTは、そうしたことを可能にするために活かすべきだと思います。