日本の女性は子育て、孫育てで幸福度が低下する

日本ではこれまで女性の社会進出を促進し、結婚、出産後も働き続ける女性が増えるよう制度改革を行ってきました。この流れの中で、女性が抱えていた育児負担を保育園等の社会制度や家族へと少しずつ移動させてきました。この結果として、以前よりも祖母を中心に「孫育て」へと費やされる時間が増えていると考えられます。

ただ残念なことに、孫育ては祖母、とくに母方の祖母の幸福度を低下させています。以前の記事で指摘した通り、日本の女性は自分の子育てでも幸福度が低下する傾向があるため、若いときは子育てで幸福度が低下し、年老いてからは孫育てで幸福度が低下していると考えられます。

ストレスを抱えたシニア女性のシルエット
写真=iStock.com/kumikomini
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日本の女性は、その生涯にわたって、子どもを育てる負担が大きすぎるのかもしれません。

この背景には女性に家事・育児負担が偏る性別役割分業意識、そして日本社会の子どもの捉え方が影響しているため、私たちの社会の根底にある意識のアップデートが必要となるでしょう。また、祖父の孫育てへの積極的な参加も求められます。

(*1)Yamamura, E., & Brunello, G. (2021). The effect of grandchildren on the happiness of grandparents: Does the grandparent’s child’s gender matter? IZA Discussion Paper, 14081.
(*2)八重樫牧子・江草安彦・李永喜・小河孝則・渡邊貴子(2003)「祖父母の子育て参加が母親の子育てに与える影響」『川崎医療福祉学会誌』,13(2), 233-245.
(*3)Brunello, G., & Rocco, L. (2019). Grandparents in the blues. The effect of childcare on grandparents’ depression. Rev Econ Household 17, 587–613.
(*4)Dunifon, R. E., Musick, K. A., & Near, C. E. (2020). Time with grandchildren: Subjective well-being among grandparents living with their grandchildren. Social Indicators Research, 148(2), 681–702.
(*5)Powdthavee, N. (2011). Life satisfaction and grandparenthood: Evidence from a nationwide survey. IZA Discussion Papers, 5869.
(*6)Wang, H., Fidrmuc, J., & Luo, Q. (2019). A happy way to grow old? Grandparent caregiving, quality of life and life satisfaction. CESifo working paper series, 7670.

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。