関心はあるものの、日々の慌ただしさのなかで先延ばしにしがちな「セカンドライフ」への備え。「時間が1番の味方。気づいた今が始めるチャンス」と語る、ファイナンシャルプランナーの久谷真理子さんにお話を聞いた。

久谷 真理子●くたに・まりこ
株式会社フリーダムリンク
専務取締役 ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)
大学卒業後、都市銀行において融資業務を経験。CFP®取得後、個人向けにライフプランから見た住宅ローンや相続・不動産・資産運用などの相談業務および実行支援業務を行う。各種セミナー講師を務めるほか、ウェブサイト・新聞・雑誌等でも活躍。

購買力を維持・向上
させることが大事

──40代、50代の現役世代のお金の悩みでは、どのようなものが多いのでしょうか。

久谷 この世代は働き盛りで収入もそれなりですが、「教育費」や「住宅ローン」など、支出も多いのが特徴です。一方で、ひと昔前の右肩上がりの経済成長の時代ではなく所得は頭打ちのため、ある種の閉塞感がありますね。セカンドライフへの備えを意識しつつも、仕事では責任のある立場で忙しく、「目の前の課題で手一杯。先のことなど考えている時間がない」というのが実情でしょう。

多くの方が最初の1歩を面倒に思うのかもしれませんが、まずは始めることが肝心。「お金」の準備には時間がかかりますが、逆に言えば、早めに気づいて「時間を味方につける」ことで未来を明るくすることもできます。まずは、小さな行動から始めていただきたいですね。

──「漠然と将来は不安だが、具体的な手は打っていない」という人たちに、どのようなアドバイスがありますか。

久谷 何から手をつけたらよいのか分からなければ、まず、“お金のシミュレーション”をすることをお勧めしたいです。私たちのような専門家を活用してもいいですし、最近ではインターネットなどでも簡易的なシミュレーションを行うことができます。

具体的には、子供の進学やご自身の退職、家のリフォームなどライフイベントを挙げ、今後必要になる費用を予測してみます。その上で現状の資産(貯蓄等)と今後見込まれる収入・支出を含めたキャッシュフローをシミュレーションするのです。

実際の数字に落とし込んでみると、例えば「60歳以降の収入を補うために、貯蓄がいくらくらい必要」「そのためには、固定費を抑えなければ」など課題が明らかになります。その課題に応じ、「収入を増やす」「支出を減らす」「お金に働いてもらう(資産運用)」、場合によっては「ライフスタイルの見直し」など、個々の解決策を練ればよいのです。

このときに大切なのは、単年の決算で一喜一憂しないこと。なかには収支がマイナスの年もあるでしょうが、長い目で見て赤字にならなければよいと考えます。まずは、現状の課題を知ることで漠然と抱えていた不安もなくなり、具体的な対策が可能となるでしょう。

──投資や資産運用については、「危険なもの」「難しいもの」といったイメージもあります。

久谷 確かに、金融商品や運用手法については「商品が多すぎる」「金融機関に都合の良い商品を勧められそう」などの声を聞きます。その一方、一般の方の質問で多いのが「安全で儲かる商品はありませんか」というもの。残念ながら、そんな都合のいい話はないと思ったほうがいいでしょう。

とはいえこれからの時代、投資や資産運用は重要です。「定期預金」なども1つの運用手段と考えますが、インフレリスクを考えれば必ずしも安全とは言えないでしょう。資産運用で重要なのは、「金額」を維持したり、増やしたりすることではありません。大事なのは、「モノやサービスを買う力」を維持、向上させることなのです。

投資、運用といっても、対象はリスクの高い値動きがある商品ばかりではありませんし、かつてと比べてずいぶん取り組みやすくもなっています。ですから、自身に合った商品・手法を複数選んで、預け先を偏らせない"分散投資"をお勧めしています。ここでも早めの対策が有効なことから、「時間を味方にする」ことが大切です。