リスクはある程度
コントロールできる

──山崎さんはこれまでも、老後資金を準備することの重要性を説かれています。

山崎 まず、「リタイアしてから老後のための資金を貯めることはできない」という認識を持つことが重要です。公的年金というのは、おおよそ基礎的な生活費で消えてしまいますから、引退後にゼロから資産形成をしていくのは難しい。現役のうちにどれだけ資金を積み上げられるかが、老後の豊かさを決める大事な要素になります。

例えば30代、40代の方たちも、皆さん将来の年金について危機感はお持ちです。しかし、具体的な対策を始めているかといえば、必ずしもそうではありません。住宅ローンや子供の教育費などを理由に後回し、という人が少なくないでしょう。とはいえ、現実に住宅ローンを完済したとき、また子供が大学を卒業したとき、いったい何歳になっているのか。そこからお金を貯め始めて間に合う人は決して多くないはずです。

──では、実際に資産運用を始める際に、心がけるべきことは何でしょうか。

山崎 第1に、自分はどこまでリスクを取ることができるのか、明確に線引きをすることです。初めに“誤解”のお話をしましたが、投資のリスクは自分でコントロールできないと考えている人が少なくありません。しかし実際は、下の表で示したとおり、「手持ちの資産のうち、どれだけリスク資産に投資するか」を決めることによって、一定の条件下でのリスクは制御することが可能なのです。

リスクの許容範囲を決めたら、できるだけ早く行動を起こすことが大切でしょう。資産運用における現役世代の最大の武器は“時間”です。当然、損失を被ることもあるでしょうが、それも貴重な経験。自転車と一緒で、初めは転んで膝を痛めないと上手にはなりません。

多彩な資産運用の手法が
用意されている時代

──不確実な時代だからこそ、行動することが大切なわけですね。

山崎 将来に向けて、十分な備えを蓄える──。現在、それが難しい時代であるには違いありません。しかし一方で、株や投資信託、不動産への投資、土地活用など、現在はさまざまな資産運用の手法が用意され、一昔前と比べればずいぶんと取り組みやすくなっているのも事実です。確かな「知恵」を身に付け、行動することで、リターンを得られる可能性は広がっています。

なにも、時々刻々と変化する相場と向き合うことばかりが投資ではありません。普通に仕事をしているサラリーマンの方であれば、自分の生活に負担をかけない範囲で資産運用を行うべきでしょう。仕事やプライベートを犠牲にする必要はないのです。実際、そうしたニーズに応えてくれる投資対象や運用方法も数多く存在します。

不確実ではありますが、そのなかで先を読むためのツールや情報は豊富に提供されているのがいまの時代です。頭を働かせて、前向きに行動できる人こそがチャンスを掴めるに違いありません。