日本における資源・エネルギーの安定供給を確保するため、調査・探鉱・開発・生産等の各フェーズにおいて、地質構造調査、金融支援、技術開発・支援、資源備蓄、鉱害防止、情報収集・提供などさまざまなサービスを提供する。
JOGMECの使命は「日本の資源・エネルギーの安定供給を確保すること」。これに一言加えるならば、「その時々に必要なものを、必要な形で調達できるようにすること」だと私たちは考えています。なぜなら、資源やエネルギーのニーズは決して一定ではありません。例えば、燃料の主役は石炭から石油、天然ガスへと変化し、近年産業界ではレアアースの需要が高まっている。こうした時代の移り変わりにしなやかに対応することが、国の経済安全保障にも関わる私たちには求められています。
まさに今回の機能強化も、そうした変化への対応の一環といえます。今年はちょうどJOGMECの前身となる組織の設立から60年。人間で言えば還暦で、原点を見つめ直し、新たな歩みを始めるのに絶好のタイミングです。エネルギーは戦略物資であるが故にそれを求めて戦争をも引き起こし得るものです。明治維新以降、富国強兵を目指し、外地に進出し終戦までが77年。そこからまた77年経過したのが2022年。まさにこれからの国の在り方、その基盤の一つである資源・エネルギーについて改めて自問自答し、進むべき道を真剣に考えるべき時期といえるでしょう。
最近は地政学的リスクの高まりもあり、石油や天然ガスの確保が世界的な課題となっています。一方で、カーボンニュートラルへの要請は強まり、実際的な対策が求められています。こうした複雑な状況こそ、私たちの長年の実績、専門の知見がいっそう生かされる場面です。一般に資源開発やエネルギー関連のプロジェクトは初期投資が多額で、成果が出るまでに時間がかかるため、民間企業が独自に取り組むにはリスクが大きい。そこに資金援助などを行い、事業を後押しするのがJOGMECの重要な役割です。
水素・アンモニアの製造も新たにサポートの対象に
今回の機能強化によって新たに加わった業務に、「二酸化炭素の回収・貯留(CCS)等」「水素・アンモニア等の製造・貯蔵」への出資・債務保証業務があります。いずれも時代の要請に応える大事な任務。CO2を分離・回収して地下に貯留するCCSについては、JOGMEC自身が地下評価技術や施設技術のノウハウを有しています。「脱炭素」と一口に言いますが、問題なのは「大気中に大量放出されたCO2」であり、CCSは今後大きな役割を果たすに違いありません。
そしてこの技術は、実は水素・アンモニアの製造でも力を発揮します。現状、水素やアンモニアは化石燃料から製造されることが多く、その際どうしてもCO2が発生します。ここにCCSを組み合わせることでクリーンな水素・アンモニアの製造が可能となり、非常に有望かつ現実的な課題解決策となるのです。
他方で今回、JOGMECは国内における洋上風力発電に必要な地質構造調査、海外における地熱の探査への出資業務なども担うことになりました。事業領域の拡大は重責を伴いますが、それは私たちがバックアップできる事業者、プロジェクトが増えることを意味し、日本の資源・エネルギーの安定確保の可能性を広げることになると期待しています。資源・エネルギーのほとんどを海外に頼る日本にとって、多様な選択肢を保持し、不測の事態にも対応できる体制を整えておくことは極めて重要です。
困難ではあるがやらねばならないことがある
私は、資源・エネルギー開発に携わる者は、ロマンチストであり、同時にリアリストであるべきだと思っています。先ほどお話ししたとおり、私たちが関わるプロジェクトの多くはすぐには成果が出ません。それでも未来を見据えて地道に理想を追い求めていかなければ新たな道は切り開けない。その意味である種のロマンが必要です。しかし当然ながら、理想だけを追求しているのでは、日々必要な足元での資源・エネルギーの安定確保は実現できません。冷静に現実を見つめ、シビアに判断するリアリストの視点が欠かせないのです。
今回の法人名の変更で、英文名称は「Japan Oil, Gas and Metals National Corporation」から「Japan Organization for Metals and Energy Security」と改められ、「Energy Security」が明示されました。世界情勢、そして資源・エネルギーを取り巻く環境が刻々と変化する中、まさにエネルギー安全保障においても、リアリストの視点はいっそう重要になるでしょう。
国の基盤を支える資源・エネルギーを確保することは、“困難ではあるが、誰かが必ずやらなければいけないこと”です。それを全力でバックアップするのが私たちの仕事に他なりません。今回の機能強化、名称変更を契機に、理想と現実を見極める力にさらに磨きをかけ、使命を果たしていきたいと思います。