経営、IT部門、社員が
討議してルール構築

ROI以外にも、スマートデバイス導入時のポイントがある。「社内システムとの連携」や「セキュリティー」など技術面での課題だ。特に情報漏洩やマルウェア(不正なアプリケーション)などのセキュリティーリスクは、企業の根幹を揺るがす大問題となりがち。何よりも入念な対応策が求められる。そこで藤吉氏が提言するのが「MDM(モバイルデバイス管理)ツールの導入」だ。

「MDMとは、IT資産・アップデート・情報セキュリティーの3つの観点から端末を管理するツール。セキュリティー・ポリシーに応じた端末の設定からアプリケーションの自動配信、端末情報の取得、バックアップなど、ライフサイクル全般を管理します」

運用管理については当然、情報システム部門が取り組むべきテーマ。藤吉氏は、加えて「経営層との連携、さらに社員ユーザーを含めた討議が欠かせない」と念を押す。まずスマートデバイス導入で何を目指すのかという最終ゴール、さらにそのために必要なルールや体制づくりを行うのだ。「地道に仕組みづくりをやっておかないと、望む効果を得ることは難しい」と言うのである。

さらに、いま関心が集まる「BYOD(Bring Your Own Device/個人所有端末の業務活用)」への対応などで、「あまりに守りの姿勢が強いと、デジタルネイティブ世代の社員がもつ可能性を狭めることになりかねない」という藤吉氏の指摘も重要だ。

スマートデバイスは「ワークスタイルの変革」を担うかたわら、新たな顧客チャネルとしての期待も大きい。その意味では付加価値創造への扉を開くべく、利用者へ一定の裁量を与えることは必要なことなのかもしれない。