「経験知と共に、新しい世界へ。」を掲げ、プロ人材活用事業を展開するCYEST(サイエスト)。祖業であるグローバルビジネス支援事業を通じて、海外事業の経験を積んだ5000人に上るプロフェッショナルが登録する独自データベースを構築、世界90カ国への企業進出をサポートする。データベースをフル活用し、人材紹介、グローバル人材育成へと事業を広げる同社の北村嘉章代表取締役にお話を伺った。

VUCA時代に必要な人材戦略とは

――先が見通せないVUCAの時代、ビジネスパーソンのキャリアについての考え方も変わりつつあるのでしょうか。

【北村】人生100年時代といわれるなか、政府も女性やシニア・副業人材の活用を求めるようになり、かつては定年まで1つの組織に在籍することを前提としていた日本企業の会社員にも、雇用形態にとらわれずに「自分のスキルをより広い土俵で活かしたい」「定年後も働き続けたい」という考えを持つ方が増えてきました。

リクルートで人材事業に携わっていた経験から申し上げると、リーマン・ショックが起きた2008年頃まで、日本の転職マーケットには45歳以上の募集はほとんどありませんでした。その後私は中国のEC大手アリババに転職し、日本企業の海外進出の支援をしたのですが、全国各地の中小・中堅企業とお付き合いをするなかで気が付いたのは、海外事業に精通したシニア人材や、高い専門性とスキルを備えたプロ人材を活用し、海外進出を成功させている事例が多いということでした。

そこで「国内・海外を問わず新しい事業への取り組みには、豊富な実務経験に裏打ちされたプロの力を活かすことができる」と感じ、「新事業推進の即戦力をすべての企業に」というコンセプトで13年に起業したのが、サイエストです。現在は国内外のビジネスに精通した「サイエスト・プロフェッショナル」およそ5000人にご登録いただいています。

VUCA時代の流れを受け、新規や未知の領域にはフルタイム雇用ではなく業務委託による外部人材活用に舵を切る企業が増えています。サイエストでも最近は個別の海外事業案件に加え、グローバル経営やESG経営、イノベーション創出といったより大きな経営テーマに関する支援依頼が増え、プロ人材が扱うテーマも組織風土改革からクロスボーダーPMI(海外企業買収後の統合)、ダイバーシティ・女性活躍推進、ウェルビーイングなど幅が広がっています。

サイエストは、個々の登録者の特性を経歴やスキルといったハード面、性格やコミュニケーションスタイルといったソフト面の両方からきめ細かく把握するため、すべての登録者と面談を行っています。高まるプロ人材へのニーズに応えられるよう、登録者数をもっと増やしたい気持ちは強いのですが、一気にとはいかないのが悩ましいところです。

――どういった人材が登録しているのですか。

【北村】登録するプロ人材は、大きく3つに分類できます。

第1に、大手企業や外資系企業で役員や事業責任者、現地拠点長などを務めた元エグゼクティブの方たち。第2に、高い専門性と知見、ネットワークを持ち、それらを活かして国内および海外でフリーのコンサルタントとして活躍されている方たち。そして第3に、先の2パターンと若干重なりますが、グローバルな環境で多様な実務経験を積み、ダイバーシティ推進の先陣を切ってキャリアを構築してきた女性のプロ人材です。

創業当初は大手企業OBの方々が中心でしたが、その後、兼業や副業を始めた方、フリーランスの方の登録が増え、今は40代後半から50代が登録者の中心となっています。

みなさんに共通するのは、「培ってきた経験や知見をもって世の中に貢献したい」という動機をお持ちだということです。中でもサイエストには、「日本企業のグローバル化を後押ししたい」「地方企業の支援を通じて地方を活性化したい」「新しい働き方を通して自身も成長したい」という志向をお持ちの方が多く登録してくださっているように感じます。

サイエスト株式会社
代表取締役
北村嘉章(きたむら・よしあき)
株式会社リクルートの人材コンサルティング営業を経て、中国IT企業アリババ株式会社に入社。日本企業の海外事業戦略立案や販路開拓支援に従事した後、2013年サイエスト株式会社を創業、現職。

プロ人材の活躍の場は大きく広がっている

――プロフェッショナル人材は顧客企業をどのような形で支援しているのでしょうか。

【北村】2つの形態のサービスを通じて、顧客企業にプロ人材を活用いただいています。

1つは、プロ人材が経営陣の右腕となって、既存事業の課題解決や新規事業開発といった重要な取り組みを即戦力として支援する形です。サイエストのプロコーディネートチームが5000人の中から顧客企業のニーズと合致する人材を厳選し、最適なマッチングをサポートしています。

もう1つは、オンラインの講座やセミナー、メンタリングなどを通して、プロ人材のノウハウを習得する形です。月額定額制で、いつからでも手軽に始められ、主に自社社員育成の目的で使われています。

――経営陣の右腕として動ける人材となると、相当深い経営への理解が求められますね。どういったテーマでのニーズが多いのでしょうか。

【北村】大企業の場合、新規事業開発やESG経営、DX推進など、自社で取り組むのは初めてであり社内に知見やノウハウの蓄積がない重要課題について、プロ人材を求めるケースが多いです。一方でベンチャー・中小企業では、企業経営や事業運営全般で経験豊かな人材が不足していることが多く、プロ人材を必要とするテーマは多種多様です。

プロ人材の具体的な活用イメージですが、まず経営顧問やアドバイザーとして業務委託契約でプロ人材を登用し、経営陣の「壁打ち相手」として月1~2回のペースで活用します。その後、具体的なテーマの推進プロジェクトが立ち上がったら、そのプロ人材がプロジェクトチームの「伴走者」として半年から1年ほどの期間、ハンズオンで支援していくという流れになることが多いです。さらにその人材に中長期的に事業や経営に関わってほしいという企業には、業務委託からフルタイム雇用への契約切り替えも可能です。

こうしたスキームのサービスを、現在、大企業向けに「CYEST ProMatch(サイエスト プロマッチ)」、ベンチャー・中小企業向けには「日本経営人材バンク」として提供しています。予算や状況に応じて、必要なときに必要なだけプロ人材を活用できる、そのフレキシブルさもこれらのサービスの特徴です。

――女性プロフェッショナル人材へのニーズも高いと聞いています。

【北村】はい。サイエストに登録する女性プロ人材は、グローバルな環境下で多様なビジネス経験と経営経験を積み、自ら道を切り開いてきた女性活躍のフロントランナーたちです。そうした人材に「ダイバーシティ推進の仕組みを構築してほしい」「女性リーダー候補たちのロールモデルになってほしい」と、女性プロ人材を社外取締役やアドバイザーに登用する企業が増えています。

プロの知見に手軽にアクセスできるナレッジプラットフォーム

――もう一つのプロ人材活用の形として、オンラインでプロのノウハウを学ぶサービス「Global Business Premium Club(GBPC)」を始めましたね。背景や狙いは?

【北村】海外進出しているベンチャー・中小企業の多くは収益化に苦労しています。こうした企業に共通する特徴は、海外事業を推進できる人材がいないことと、海外ビジネスに必要な情報や知見にアクセスしにくい環境に置かれていることです。社内に知見やノウハウの蓄積がないまま海外進出の準備を始めてしまい、進出後に壁にぶち当たるといった事例を私は数多く見てきました。まずは、こうした企業の経営者や事業責任者が海外ビジネスのリテラシーを高められる環境をつくることが必要だ、そう痛感して、海外市場に挑戦する企業が気軽に知見や情報にアクセスできるナレッジプラットフォーム「GBPC」をローンチしました。

GBPCではプロ人材が講師となり、豊富な実務経験で培った海外ビジネスのノウハウを伝授する全70本のオンライン講座を学び放題で視聴できます。月1万円(税別)という低コストで始められ、幅広いトピックスについてプロ人材のリアルな経験談を聞きながら、実践ノウハウを習得できるのは大きなメリットです。

オプションサービスとして、海外ビジネスのプロ人材に個別に相談できる「メンタリング」もあります。相談内容は、経営者の方からは戦略策定や組織運営、事業責任者からは自身の能力開発に加え、事業計画策定や実行に関するものが多いようです。このサービスは月1回15万~30万円から開始できます。プロの経験知を活用して失敗リスクを軽減し、事業を着実に前へ進めるための支援として、顧客企業にお使いいただいています。

VUCA時代を乗り越えるには、地方経済の活性化もとても重要です。サイエストは全国の地方銀行と提携して日本各地から海外に進出したい企業を支援することにも注力しており、すでに伊予銀行さん、中国銀行さんそれぞれとの提携によるGBPCの提供を始めています。今後は他の地域の地方銀行とも連携の輪を広げ、地方創生に貢献していきたいと思っています。