1878年の創業以来、「至誠」を社是に箱根の発展に尽くしてきた富士屋ホテル。従来、持続可能な地域の実現を最優先課題と位置付け、SDGs(持続可能な開発目標)の潮流ともリンクしながら、取り組みのさらなる強化を図っている。その推進力として活用しているのが、横浜銀行のサステナブルファイナンスだ。共に神奈川県が拠点で100年超の歴史を有する2社のトップが、「価値を生み出し続ける企業」の在り方について語った。

存在意義や提供できる価値を改めて深く考えた

——まずは勝俣社長、現状についてどのようにお考えでしょうか。

【勝俣伸社長(以下、勝俣)】箱根町は「環境先進観光地」を宣言し、SDGsやサステナビリティを意識した地域づくりを進めています。私たち富士屋ホテルもその一翼を担うべく、町と協力しながら、国内はもとより世界の人々に選ばれる観光地・箱根の確立を目指しています。

勝俣 伸(かつまた・しん)
富士屋ホテル株式会社
代表取締役社長
1976年、立教大学社会学部観光学科卒業後、富士屋ホテル株式会社入社。湯本富士屋ホテル支配人、富士屋ホテル支配人、富士屋ホテルチェーン総支配人などを経て、2004年6月より現職。

コロナ禍が始まった2020年、富士屋ホテルは2年間に及ぶ耐震補強工事などを経て、創業記念日である7月15日のグランドオープンを控えていました。営業再開を心待ちにしてくださっていた多くの皆さまから祝福の言葉を、そして宿泊者アンケートでは数々の温かいコメントを頂戴して、改めて当社の存在意義や提供できる価値について深く考えさせられました。

——大きな契機になったのですね。

【勝俣】SDGs、サステナビリティへの配慮は、当社にとっては昔から当たり前の取り組みとして継続してきたことです。特にここ数年の経験によって、どのような状況下でもこれまで通りに続けていくことが「選ばれる企業」としての評価につながるのだと再認識しました。SDGsの領域における当社の理念・ありたい姿として掲げる「多様な社員が自信と誇りを持って働ける」「全ての顧客が安心・安全・便利に利用できる」「社会と地球とも共生できる」会社を目指し、活動をさらに具体化して発展させたいと考えていたところ、横浜銀行さんのサステナブルファイナンス「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」を知ったのです。

【片岡達也頭取(以下、片岡)】日本を代表する名ホテルがこの商品の第1号ですから、行員のモチベーションも非常に上がっています。なぜ当行を選んでくださったのですか。

【勝俣】一緒にやりましょうと力強くおっしゃってくれた、横浜銀行さんの「熱い思い」に尽きると思います。例えば大量生産・大量消費のイメージが根強いホテルでの婚礼宴会では、フードロス削減、ごみ全体の排出量低減に努めています。地域との共生を最も重視していることからレストランメニューの地産地消を促進し、災害発生時には、当ホテルが観光客や住民の皆さんの避難場所となる受け入れ契約を箱根町と締結しています。また、積極的な障害者雇用、女性役職者登用など、ホテル事業の根幹である「人」に関する多くの項目に注力している点も特徴です。取り組みの成果を、定量的、定性的により明確に示していきたい当社の方向性と、横浜銀行さんのポジティブ・インパクト・ファイナンスが持つ評価機能が合致しました。

七つの建物が国の登録有形文化財に指定されている富士屋ホテル。写真はレストラン「メインダイニングルーム ザ・フジヤ」改修工事中の様子。

持続可能な地域の未来は1社だけではつくれない

——片岡頭取としては、期待にどう応えたいと思われますか。

【片岡】当行は地域金融機関ですから、地域の成長があって初めて私たちの事業が成り立ちます。SDGsへの関心が高まり、神奈川県内外の多くの企業さまが社会的課題と向き合っておられる中で、やはり横浜銀行に求められる役割は本業によるファイナンスを通じて支援していくことだと感じています。

片岡達也(かたおか・たつや)
株式会社横浜銀行
代表取締役頭取
1990年入行。ロンドン駐在員事務所長、個人営業部長などを経て、コンコルディア・フィナンシャルグループ執行役員兼東日本銀行取締役などを歴任。2022年4月より現職。

——支援のポイントは。

【片岡】ディスカッションを通じてお客さまの事業が環境、社会、経済にどのようなポジティブインパクト(良い影響)、あるいはネガティブインパクト(悪い影響)があるのかを包括的に分析・評価し、横浜銀行グループのシンクタンク・浜銀総合研究所が課題を整理して評価書を作成します。また、ポジティブインパクトの拡大とネガティブインパクトの緩和に向けて、KPIと数値目標を定め、継続的にモニタリングをしていきます。お客さまと当行が常に取り組みの状況を共有していくことで、サステナブル経営を後押しします。富士屋ホテルさまの場合、フードロス削減、歴史的建造物の維持など、五つのインパクト分野で目標を設定しました。

【勝俣】持続可能な地域の実現は、一つの企業だけで成し遂げることはできません。近年、東京や海外などで経験を積んだ若手たちが事業承継のために箱根に戻り、新しい発想で地域に力を注ぎ込んでいます。活動の根底にあるのは「箱根全体が良くならなければだめだ」という思いです。

【片岡】それは素晴らしいですね。共存によって全体が元気になっていくことが本当に大事だと思います。当行では神奈川県内の各エリアで地域に根差した活動を推し進め、自治体や企業の皆さまと一緒に何ができるのかを探っています。銀行として融資などの業務で貢献するのはもちろん、こうした人的ネットワークも財産だと捉えています。企業さまと企業さまをつなぎ合わせるなど、当行が皆さまと課題を共有し、ハブとしての役割を担うことで、さまざまな課題の解決に貢献できるのではないかと考えています。

【勝俣】まさに、横浜銀行さんからはいつも有益な情報をいただいています。それだけ多くのノウハウをお持ちということですね。

——最後にひと言ずつお願いします。

【勝俣】これまでも幾多の荒波を乗り越えてきた富士屋ホテルの歴史的な建造物、そしておもてなしの心を2028年の創業150年、さらに創業200年に残していくことが、私たちのサステナビリティだと考えています。同じく100年を超える歴史を持つ横浜銀行さんには、ぜひ今後も地域に根差した活動を期待しています。

【片岡】ありがとうございます。先ほど当行を選んだ理由を「熱意」とおっしゃってくださったことは、横浜銀行の従業員が大切にしていることですから、そのようなお言葉をいただけてとても光栄です。今後も熱意を持って、地域の未来のために尽力していきます。