展示会や会議、報奨旅行などのビジネスイベントは、すでに欧米ではコロナ禍前と同様のリアル開催に戻りつつある。その流れは、今後日本でも強まっていくだろう。そうした中、“独自性の高い印象的なイベントを”と考える企業等が関心を寄せているのが「ユニークベニュー」だ。美術館や博物館、歴史的建造物、屋外空間など特別感を演出できる施設。東京は、個性あふれるユニークベニューが充実している都市の一つだ。

今年2月、江東区の東京国際クルーズターミナルとスモールワールズTOKYOをメイン会場に、今後のMICE(※)の在り方の一つを示す催しが実施された。東京観光財団がユニークベニューの活用法を提案するショーケースイベントだ。

※MICEとは、M:Meeting(企業系会議)、I:Incentive(企業の報奨・研修旅行)、C:Convention(国際会議)、E:Exhibition/Event(展示会、イベント等)の頭文字を取った総称です。

2022年2月8日、東京国際クルーズターミナル、スモールワールズTOKYOで実施されたショーケースイベントの様子。施設の特徴を生かしたさまざまな演出が行われた。東京国際クルーズターミナルは延床面積約1万9000m2の4階建て。ほとんどの什器が可動式のため、柔軟に活用できる。

「オンライン開催となりましたが、2会場での分散開催で、サステナブルな未来都市・東京をテーマに地産地消を意識した飲食の提供、インタラクティブアートによる演出などを行いました。おかげさまで反響は予想以上。『こんなことができるのか』など驚きの声を多く頂きました」

中村隆一(なかむら・りゅういち)
公益財団法人 東京観光財団 コンベンション事業部誘致事業課 主任

東京観光財団の中村隆一氏はそう語る。そして、これからのニーズについて同財団の毛受めんじょう由美氏は次のように続けた。

「オンライン開催の利便性や経済性が周知される一方、対面でこそ生じる偶発性、会場での没入感などは代え難い体験です。実際にリアル開催を望む声は多く、今後、着実に戻ってくるはず。しばらくはハイブリッド開催、小規模開催の流れが続くとみていますが、これまで以上にインパクトある会場選びがポイントになってくるに違いありません」

毛受由美(めんじょう・ゆみ)
公益財団法人 東京観光財団 コンベンション事業部誘致事業課

まさにそこで力を発揮するのが東京のユニークベニューだ。

「和を体現する神社仏閣、文化を感じさせる博物館や美術館、最先端のテーマパークなどから希望の場所を選ぶことで、それぞれの企業が大切にしているブランドイメージや事業姿勢などを参加者に感じてもらうことができます」(中村氏)

「また、MICEには宿泊、飲食、会議、レセプションなどさまざまな要素がありますが、その中にユニークベニューでの特別な体験があると、大きな感動と忘れられない記憶が残ります。最近はイベントの様子がリアルタイムでSNSにアップされる時代。写真映えする空間はイベントの印象と価値を高めることに貢献します」(毛受氏)

環境対応や斬新な演出も支援窓口がサポート

個性ある特別な場所でイベントを開催するなら、よりエモーショナルな演出を行いたいもの。東京には、それを実現できる貸し切り可能なユニークベニューが充実している。

「美術館、博物館、水族館でのファッションショーや商品発表会、商店街を丸ごと会場としたイベントなどがこれまでに行われています」(中村氏)

その他、神社や文化財となっている建物でレセプションが開催されたり、チームビルドのプログラムが実施された例もあるという。「ユニークベニューを貸し切ってイベントを行うことで、その付加価値はぐっと上がります。そうしたことをもっと多くの企業やイベント主催者に知ってほしい」と毛受氏は話す。

そこで、東京観光財団は平成30年よりワンストップ総合支援窓口を設置。ユニークベニューを活用して自社のブランドイメージを高め、参加者の期待を超えるイベントを開催したい──。そんな企業を強力にバックアップしている。

「イベントの目的やビジョンをしっかりと伺い、施設の提案や紹介、現地での打ち合わせ、調整など幅広くサポートしています」(毛受氏)

経験を生かした施設との交渉がものをいう場面も多い。

「難しく思える演出も、施設と相談し、工夫することで実現が可能なケースがあります。常に『どうすればできるか』という姿勢で、ユニークベニューと主催者の間に立ち、合意点を探っていきます」(中村氏)

ユニークベニューには環境問題やエネルギー問題、SDGsを意識した施設も多い。そのため主催者は、イベントの開催によって環境面への貢献をアピールすることが可能だ。

また、斬新な演出でイベントを盛り上げたいが、ノウハウがない。そんな企業には、東京観光財団が600を超える賛助会員の中から音響、照明、配信、ケータリングなどの専門事業者を紹介するという。

「東京でイベントを開催するに当たって、主催者は“東京ならではのイベント”にしたいと思うはず。ユニークベニューであれば、まさに東京でしかできない多様なイベントを実施することができます。その切り口も、先端技術、伝統文化、サブカルチャーなどいろいろなものがありますので、ぜひ私たちの知見をご活用ください」(毛受氏)

最後に中村氏は、MICEの主催者等に向け、改めて次のようなメッセージを送った。

「企業の個性とユニークベニューの個性を掛け合わせ、自社の理念やビジョン、ブランドイメージを発信していく。そんなビジネスイベントを開催したいとお考えの方は、お気軽にご相談いただければと思います」

MICE主催者の多様なニーズに応える「東京ユニークベニュー」の例

3×3 Lab Future

3×3はサステナビリティの3要素「経済・環境・社会」と、自宅でも会社でもない「第3の場所」を意味している。新たな発想を生み出すのに最適な空間。

すみだ水族館

東京スカイツリータウン内の5階、6階の2層で、約7000点の生き物を展示する都市型水族館。ライトアップされた水槽のあるフロアの貸し切りも相談可能。

梅若能楽学院会館

新宿へのアクセスも良い中野区の閑静な場所に立地。約300名収容の能舞台は観世流一門の公演の場として活用されている。趣のある伝統的な空間が特徴。

夢の島公園アーチェリー場

東京2020大会時にアーチェリーの予選会場として使われた施設。スポーツ競技での利用の他、CM撮影なども相談できる。アーチェリーの体験教室も可能。
ユニークベニューワンストップ総合支援窓口(東京観光財団内)へのMICE主催者等からよくあるご質問

【Q1】イベント内容や施設の希望など、どの程度固まった段階で相談すればいいでしょうか。

【A1】イベントのアウトラインができた段階でぜひご相談ください。内容に沿って施設の提案や紹介をいたします。また、利用希望の施設がある場合は、企画書や計画書があると施設との調整がしやすいので、ご用意されると良いと思います。

【Q2】イベントの開催日がすでに決まっている場合、どのくらい前に相談するのが適当でしょうか。

【A2】ユニークベニューは、半年あるいは1年前に施設本来の目的でスケジュールが決まることが多く、開催予定日に利用できない場合もありますので、すぐに、お問い合わせいただくことをお勧めします。

【Q3】施設との打ち合わせに同行してもらうことは可能ですか。

【A3】可能です。ワンストップ総合支援窓口では電話やメールによるサポートだけでなく、スタッフが施設に同行し、調整や交渉のフォローを行っています。また、一緒に複数施設の視察をして、会場選びのアドバイスをすることもあります。

【Q4】施設での感染症対策について教えてください。また、リアルとオンラインのハイブリッド型のイベント開催に当たって、どのような点に注意したら良いでしょうか。

【A4】感染症対策については、いずれの施設も国や都、および各々の施設が所属、または関連する団体のガイドラインに基づき対策をしています。入場者数や飲食の可否は施設により通常時と同じ受け入れができない場合がありますので、最新情報を必ずご確認ください。ハイブリッド開催を実施する場合は、施設により通信環境が異なりますので、会場選びの際に配信設備の確認が必要です。ワンストップ総合支援窓口では、これらの情報も提供していますので、ぜひお問い合わせください。

【Q5】「こんな使い方もできる!」というユニークベニューの活用法を教えてください。

【A5】パーティー、レセプション、ファッションショー、商品発表会、チームビルディング、戦略会議、体験プログラム、それ以外にも、ユニークベニューはアイデア次第で利用の可能性が広いです。主催者様のコンセプトやイメージでぜひ新たな活用方法を開拓してください。