「未来に欠かせない」価値あるものを生み出していく
——寄せられた作品について、どのような印象をお持ちですか。
【斉藤】「環境フォト・コンテスト2022」の応募作品については、優秀賞の「霧中桜」、佳作の「風雪の白拍子」「ねぐらへの帰り道」をはじめ、これまでにも増して「訴える力」があり、また幻想的な作品が数多く寄せられました。いずれも力作で、社内での選考もずいぶん悩みながら進めたことを記憶しています。
当社は印刷事業に長年にわたって携わる中で、写真が持つ力を強く認識してきました。さまざまなメディア、コンテンツにおいてビジュアル表現を展開しているほか、国内外で写真プリント用の部材やサービスを幅広く取り扱うなど、写真関連の事業にも注力しています。こうした企業活動によって写真の力をさらに引き出しつつ、同時に地球環境への負荷軽減、持続可能な社会の実現に貢献する取り組みの一環として、環境フォト・コンテストへの参加は有効な手段だと考えています。
——「写真」で表現することの魅力は、どのような点だと思われますか。
【斉藤】写真の魅力の一つは、やはり偶然の一瞬を捉えることができる点にあるのだと思います。当社の募集テーマ「大気のうた」に寄せられる作品の多くに共通して感じるのは、撮影地に足繁く通って自然環境と向き合い、さまざまな思いを巡らせたプロセスを経たからこそ、偶然の一瞬を切り取ることができたのだろうということです。
作品に添えられたコメントを拝見すると、「この光景をずっと見ることができるのだろうか」「もしかしたら二度と目にすることができないかもしれない」といった、地球環境のこれからを憂慮する声も目立ちます。例えば優秀賞「霧中桜」は、凛とした空気に包み込まれる中、緊張感と幻想的な雰囲気が調和し、水、空気、霧、桜といったさまざまな自然界にあるものが対話しているかのよう。その様子は、撮影者がいつまでも残したいと願っている「自然の美しさへの深い敬愛の念」と一体となっているようにも感じられたため、優秀賞として選出しました。人間は、自然と向き合い続ける心を忘れてはならないのだと、改めて教えてくれた作品です。このように、応募者の皆さんが自然との対話を積み重ね、その大切さを社会に発信しようとする姿勢は、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」ことを企業理念に掲げる当社としても大いに共感します。
——事業活動の方針について教えてください。
【斉藤】DNPは、社会課題を解決するともに、人々の期待に応える価値を生み出すことを目指しています。当社の製品やサービスを、世界中の一人一人の生活者にとって身近な「なくてはならない価値=あたりまえ」へと高めていくことによって、当社そのものも社会や皆さんにとって「欠かすことができない会社」であり続けたいと考えています。いまや、環境保全や持続可能な社会の実現を意識した企業活動は、誰にとっても「あたりまえ」のこととして浸透しています。では、これから先にはどんな価値が必要とされ、何が「あたりまえ」のものになっていくのでしょうか。当社にはそれをつくり出す使命があると考え、設定しているのが「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントです。
当社は「DNPグループ環境方針」を定め、あらゆる事業活動において地球環境との関わりを考慮しています。また2020年3月には、2050年のありたい姿として「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定しました。「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を目指し、2050年までに自社事業活動による温室効果ガス排出量実質ゼロを達成することなどを掲げています。独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めることで、より良い社会、より快適な暮らしの実現に努めていきます。
——環境フォト・コンテストに期待することをお聞かせください。
【斉藤】地球環境の持続可能性をより高め、次の世代へと引き継ぐことは、一企業の取り組みだけでは成し遂げることはできません。国内外の生活者・企業・自治体・団体などとの協働が不可欠です。環境フォト・コンテストへの参加を通じて、環境やサステナビリティに対する意識が高く、写真を撮影するという行動力のある応募者の皆さんとコミュニケーションを図れるのは、とても貴重な機会だと思っています。また、当社の活動における受賞作品の活用なども検討したいと考えています。コロナ禍によって、コミュニケーションの在り方の変化が加速しています。ただ、人が地球環境に思いを馳せることの重要性は変わらないはずですし、新しいコミュニケーションの姿も形成されるでしょう。人と社会と自然のつながりを再認識するきっかけとしても、環境フォト・コンテストが毎年開かれる意義は大きいと思います。