——名刺の管理は、企業ごとにルールがまちまちであるのが実情です。企業はどのように名刺に関するルールを作るべきでしょうか?

【金井】名刺自体は紙に印刷されたものですが、多くの企業・組織では、従業員個人の判断で、今後、必要となると思われる名刺の情報だけを社内システムに入力し、電子データ化することも多いのではないでしょうか。

信頼性の高い名刺管理サービスを導入し、名刺情報を営業支援に使うことが重要
金井孝三(かない・こうぞう)
Sky株式会社
ICTソリューション事業部 副本部長
IT運用管理システム「SKYSEA Client View」、営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE」など、自社製品を開発、販売し、安全性の高い運用を目指す企業をサポートしている。

また、名刺情報に含まれる名前や部署、役職などは秘匿性が高い情報とはいえず、不正競争防止法でいうところの「営業秘密」として保護されるものではないという裁判の判例があります。名刺交換で得られる顧客情報は、営業する上で極めて重要なものなのに、「営業秘密」と認められず、企業にとって非常に困った状態になっています。

そういう状況でありながら、企業側も名刺管理について研修することはほとんどない。つまり名刺の取り扱いルールを会社として定めていないことが多いのです。名刺を適切に管理するためには、入社時に名刺交換のマナーだけでなく、名刺の情報が会社の重要資産であることを従業員に説明し、退職時には必ず返却するといった取り扱いルールを決めて周知することがとても大切です。

——名刺情報をデータ化する従業員が増えている一方、従業員個々のデータ管理や安全性に不安を抱いている企業もあるようです。名刺を管理する上での注意点を教えてください。

【金井】名刺に関する企業の管理が不十分な中で、従業員個人がフリー(無償)の名刺管理サービスを使うケースが増えてきました。そもそも、これらフリーの名刺管理サービスの多くは、利用登録時の約款にも「個人で利用するためのもの」であることが明記されています。ところが実際には、従業員が業務で得た名刺情報を登録・管理しているのです。また、従業員個人が契約しているので、例えば転職時に紙の名刺を会社に返却したとしても名刺データは元従業員が閲覧可能なまま。従って転職先に名刺情報を持ち込むことができてしまいます。

本来、個人情報保護法の観点からも蓄積された名刺情報を会社の業務で使う場合には、企業が管理すべき「個人情報データベース等」という扱いになります(※個人で私的な名刺をデジタルデータ化して管理すること自体は問題ない)

フリーの名刺管理サービスでは、会社にルールがないことから個人情報取扱規定等に沿ったものであるかの確認も行われず、従業員の個人契約で会社の重要資産である名刺データが管理されており、非常によくない状況といえます。

また、フリーの名刺管理サービスは、マネタイズを目的に、事前に約款などで利用者の同意を得た上で広告主に個人情報が提供されることがあります。名刺管理サービスに登録した利用者の情報とその利用者が管理している名刺データの情報を基に、商品広告や求人広告等の表示も行われているのが実情です。

このような事態を防ぐためにも会社として名刺管理のルールをきちんと定めた上で、信頼できる法人向けの名刺管理サービスを導入し、個人ではなく会社全体で名刺を適切に管理し営業支援に使っていくことが重要です。

——蓄積した名刺情報データを会社の重要資産とし、より積極的に守り、かつ活用するためには、どのような方法があるでしょうか?

【金井】先述したように、名刺に含まれる情報を「営業秘密」として扱うことができれば、不正競争防止法の観点からも会社の重要資産として守ることができます。しかし、「営業秘密」として扱うためには、その情報が「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の3つの要件を満たしている必要があり、特に「秘密管理性」が裁判でも争点になることが多い。

「秘密管理性」とは、情報が秘密として管理されているということです。通常、名刺管理サービスではIDとパスワードによって、名刺情報を確認できるユーザーが限定されているため、この点はクリアになると思います。

次に課題となるのは、名刺情報自体の秘密性です。名刺情報だけでは「秘密性が高い」とはいえない。ですから名刺管理サービスに名刺を登録する際には、お客さまを訪問した際にどんな商談をしたのかといった、営業活動の中でしか得られない情報などを追記することがポイントになってきます。そうすれば、名刺情報を法的にも重要な資産として守ることができる有用な手段になります。

また、最終的には名刺管理の情報を売り上げにつなげていくことが目標になってくると思います。では、名刺管理サービスを導入することで営業活動にどんなメリットがあるのか。それは、これまで名刺交換をした個人に委ねられてきた取引先の選定を、会社全体で戦略的に検討できる点だと思います。

会社として導入する名刺管理サービスでは、まず全ての従業員が交換した名刺を必ずスキャンしてサービスに登録するというルールになります。そこから会社にとって有益な取引先となり得る顧客を選定する作業は、営業担当者個人ではなく、会社全体で判断することになります。これにより、個人の管理の下で埋もれていた名刺情報を会社の資産として生かし、売り上げアップ、業績の向上につなげられるのではないかと弊社では考えています。

これまで企業の中で当たり前のように使われてきた名刺ですが、個人情報に関する法律の整備やITサービスの普及によって、その管理の在り方、コンプライアンスが問われる時期にきています。「SKYSEA Client View」などの情報セキュリティ対策商品を開発するメーカーとして、営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE」を通じ、企業の皆さまのセキュアな名刺管理をサポートしていければと考えています。また、管理された名刺情報を有効活用することで、営業支援につながるようなサービスも引き続き提供してまいります。

セキュアな情報管理を実現するオンプレミス型の名刺管理サービス「SKYPCE」とは

名刺スキャン・登録画面

名刺情報閲覧画面

名刺の電子データをクラウドに保存せず、利用者の手元で管理できるオンプレミス型の営業支援 名刺管理ツールが「SKYPCE(スカイピース)」だ。使いやすさに定評があるSkyが開発しており、名刺情報を共有することで、個人の中に埋もれていた顧客ターゲットをチーム間で活用できる。強力な営業支援となるはずだ。

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