三菱自動車が9年ぶりにフルモデルチェンジし、2021年12月に販売開始したSUV『アウトランダー』が話題になっている。PHEVモデルとして2代目となる新型『アウトランダー』はプラグインハイブリッドEV(PHEV)。走行距離を伸ばしたことで、キャンプなどの遠乗りにもちょっとした買い物にも便利だ。今回、試乗したのは最上級のPグレード。一体どんなクルマなのか。

日常はEV、遠出はハイブリッド

PHEVは三菱自動車のお家芸だ。アウトランダーは、その象徴的なクルマ。先代以降その魅力を追求してきた。新型においては「日常はEV、遠出はハイブリッド」をより活かすため、バッテリーを大容量化し、EVとしての走行距離を先代から約5割増の最大87km(WLTCモードでの比較)まで伸ばした。

ガソリンタンクの容量も従来よりも2割大きくし、総合航続距離はなんと1000kmを超え、キャンプ場への往復も燃料の心配は不要だ。開発の責任者である同社製品開発本部セグメント・チーフ・ビークル・エンジニアの本多謙太郎さんによると、先代アウトランダーはエンジン音が大きいとの意見もあったので、新型では静音性を高め、EV走行とエンジン走行が切り替わっても乗り手はほとんど気づかないという。

「メーターを見ないと分からないぐらいにしようと開発した結果です」と本多さん。

乗り手からするとEVかガソリン車か分からないが、EVならではのトルクと四駆によって、曲がりくねった道も上り下り関係なく安定感がある頼もしいクルマと言える。

どっしりとした構えの新型『アウトランダー』は見た目通り、2トンを超す車重で、同じサイズのガソリン車より2~3割重いにもかかわらず、運転してみると軽快な加速性と快適な操縦性に驚かされた。

走る姿も存在感抜群。直線的な外観が、力強さと同時にエレガンスも感じさせる。大人を満足させるデザインと言えるだろう。

開発コンセプトは“威風堂堂”

それもそのはず、同社が得意とするEVの技術を集大成として、モーターの出力を上げ、バッテリー容量を拡大したことで、応答性の高い走りが生まれたのだ。20インチ大径タイヤホイールも安定感につながっている。

「20インチといえば海外の高級SUVなどに使われているサイズです」と言う本多さんによれば、大きなタイヤを採用することは当初から決まっていたという。

「自動車開発ではコンセプトが後から生まれる場合もありますが、今回は早い段階でコンセプトが決まりました。走りも外観も力強さを感じてもらいたいということで、“威風堂堂”を掲げました」

先代アウトランダーが発売されたのは2013年1月のことで、SUVでは世界初のPHEVだった。当時は限られた車種しかプラグインハイブリッドがなかったのでエコカーとして広く受け入れられたものの、エコ重視の設計のあまり、デザインなどにおいてアピール力に欠ける物足りなさがあった。欧州のプレミアムブランドでもPHEVを発売している現在において、新型アウトランダーはプレミアムブランドに負けないという開発陣の意気込みが感じられる。

威風堂堂のコンセプトを象徴する20インチタイヤ。走破性はもちろんのこと、ドライビング中の安定感にも頼もしさを感じること間違いなし。

先代でやり残したことをすべて実現

9年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型アウトランダーは、“威風堂堂”とした外観、内装、走行性能を追求して全面的に刷新された。本多さんによれば、この威風堂堂を表しているポイントは4つあるらしい。

まず第1に「力強い外観」、第2に「質感の高い内装」、第3に「四駆(4WD)の安心安全」、第4に「PHEVの滑らかな力強い走り」だ。

外観では、新型は先代と比べて車幅が60mm広く、車長が15mm長く、車高が35mm高い。20インチのホイールということもあってどっしりとした構えだが、流れるようなデザインやフラットなルーフが軽快さを感じさせる。高速で走っても車高の割にはブレなく安定感がある。

実はフラットルーフは生産上、やっかいなのだという。というのも平らだとゆがみやすく、開発・生産現場での負担が大きい。しかし、「今回、デザイナーの厳しい要求を開発陣が実現していきました」と本多さん。

内装もゴージャスだが、すっきりした品のいいデザインで統一されている。本多さんが先代のアウトランダーで特にやり残したと思っていたのが、内装の質感不足と3列シートだった。

今回、設計の工夫でフロアスペースを広げ、3列目を追加し、3列7人乗りを実現した。7人乗りを求める利用者は多く、現在、注文した人の8割以上が7人乗りを選んでいる。

ただし、3列目はどうしても前列よりはスペースが小さくなってしまうので、乗り心地には工夫しているものの、身長160cm以下の人が主な対象となる。

さらにうれしいことに、購入時には令和3年度補正予算「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」で(※)最大55万円が交付されるほか、自治体からの補助金や新車新規登録時の自動車重量税等の優遇が受けられるエコカー減税の対象になっている。ラグジュアリーな1台が補助金を活用することで実にお買い得といった印象だ。

※補助金に関する情報は、問い合わせ先「補助金に関する詳細はこちら」からご確認ください。

技術的に難しいフラットなルーフ。サイドの微妙な曲線美と相まって、車体の重量を感じさせない流麗なフォルムが印象的だ。
左/ダッシュボード周りもすっきりとしたデザインで上質を感じさせる。車内ではなく“室内”と呼んだ方がしっくりくるほど。右/2列目のシートを倒すと大きなラゲッジスペース(写真)が、3列目のシートを床下に格納するとフラットな荷室が現れる。7人乗りかつ大容量でSUVとしての使い勝手はこの上なし。

三菱自動車らしさとは走破性と安全性

新型アウトランダーのターゲットイメージは40~50代の「頼りがいあるお父さん」であり、利用シーンとしては週末にサッカーや野球クラブに参加する子供達の送迎や、両親も含めた大家族での移動などが想定される。

「もちろん女性のお客様も運転しやすいつくりになっていますが、頼れるお父さんにふさわしいクルマを目指しました」(本多さん)というだけに、遠出でも疲れない座り心地にも神経を使っており、フロントシートはコーナリングでもしっかりと運転手を守ってくれる。

また、シートポジションとドアミラーの位置を記憶させるメモリー機能もあり、いちいち運転手が代わる度に設定し直さないですむ。加えて、フロント・セカンドシートともに3段階で温度調節ができるシートヒーターが装備されており、ユーザごとに設定が可能だ。

四駆技術は三菱自動車が培ってきたDNAそのもの

新型アウトランダー開発を主導してきたセグメント・チーフ・ビークル・エンジニアの本多謙太郎氏。今回の開発にかけた思いを熱く語ってもらった。デザインチーム、エンジニアチームなど各関係者をまとめ上げ、アウトランダーのコンセプトを貫いた立役者だ。

本多さんを含む開発陣は「三菱自動車らしさとは何か、ということは社内でもいろいろと話し合ってきました」という。本多さん自身は、なんといってもワールドラリーチャンピオンシップやパリダカ(ダカール・ラリー)でパジェロが見せた走りのイメージがそれだと考えている。岩や砂漠などの悪路を安全に速く走ることのできる走破性と耐久性、さらにドライバーを疲れさせない視認性など、それこそが三菱自動車らしさだろう。

同社としてはこの四駆技術を活かしたい。しかし、ユーザからするとこの技術は感じにくい。そこで、今回は前後輪をそれぞれ独立したモーターで駆動する『ツインモーター4WD』を搭載し、車両運動統合制御システム『スーパーオールホイールコントロール』(S-AWC)、さらに7つのドライブモードによる自在な操縦性を感じられるような設計にした。

S-AWCとドライブモードについては別記事で詳しく説明するが、S-AWCをひとことで言えばセンサーによって四輪を検知、制御する技術である。

これによって操縦性、安全性が高まる。また、ドライブモードは雪や砂利、ぬかるみなど路面状況ごとに最適な走りを実現する技術で、走りながら簡単に切り替えられる。切り替えたモードがドライバーディスプレイに表示されるので、すぐに確認もできる。今年は雪の多い年だったが、ドライブモードはなんといっても雪道で威力を発揮する。ちょっとした悪路も敢えて走ってみたくなるクルマだ。

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