「クリエイティブによるサポート」とは、どんなサポートか?
TEKOは広告代理店博報堂を母体とするクリエイティブ集団である。TEKOがうたう「広告制作で培ったスキルを用い、企業の成長をクリエイティブの力でサポートする」とは、具体的にはどういうことなのか――。
あらゆる業界でコモディティ化が進み、商品やサービスそのものでライバル企業に明確な差をつけ続けることが難しくなっている。これからの企業は自社の長所を冷静に見極め、それを社内外にどう伝えていくかが成長のカギになる。
「実力があるのに過小評価されている企業はたくさんあります。そういう企業をサポートしたい」とTEKOの大澤智規エグゼクティブクリエイティブディレクターは語る。
「われわれはまず、経営者へのインタビューから始め、お客様が気づいていない長所を見つけることに重点を置いています。クリエイティブは弱点を解消するものではなく、長所を活かして成長を加速させるものだからです」(大澤)
そして成長のツボが見つかると、クリエイティブを実践するフェーズに移る。
例えば社長のメッセージのコピーワーク。リクルーティングのための映像制作。顧客を集めたイベント開催。新事業のサポート……とクリエイティブは多岐にわたり、最適なものを組み合わせて提供する。これがTEKOの仕事である。
「企業成長という、広告の仕事を超越したことをやろうと決めて、それを得意としているメンバーをチームに集めました。広告制作で培った『世の中の人は今、こういうことを求めている』という視点からの提案力が僕らの強みです」(大澤)
では実際にどのように企業の成長をクリエイティブしているのか。事例とともにメンバーの役割を紹介してもらおう。
TEKOのチーム編成。4つの職種のプロが集まる
「世界進出」というビジョンを社員に信じてほしい
●A社の場合(メーカー、売上30億円、従業員数130人)
業績は堅調だが、思うほどの成長ができていない。社長は競争力のある事業体への転換と海外進出という大きな目標を持っている。課題は社員の生産性アップとリクルーティングの2つである。
▼
成長のカギは、ローカル企業で終わらないという社長の強いビジョンを、いかに社員、関係者に浸透させるか。社長の「思い」を明瞭に言語化。それを新しいブランド名とし、新ブランド名を冠した商品を販売。同時に社長が思い描く会社の未来図を約1分の映像にして、社員総会、商談会、ホームページで流した。
「『私たちが目指す未来はこれだ』というビジョンを可視化しました。社員の意識に変化が現れ、生産性が向上、業績が上がるとともに入社希望者は4倍に増え、社員数が2年で1.5倍になりました」(大澤)
============
TEKOのプロフェショナルたち①
企業を俯瞰し、成長に効くツボを探す
クリエイティブディレクター(CD)
マーケティングディレクター(MD)
左から大澤智規、原田朋、吉澤到、市耒健太郎(以上CD)、中村信(MD)
経営者のマネジメントインタビューを通じて、現状を正確に把握し、成長に直結するポイント、領域などを洗い出すのがCD、MDの最初の仕事。そして最も効果的な方針を提案し、実際にクリエイティブアイデアを生み出すチームを率いて、形にしていく。
============
大宣伝する予算はない。どう営業を強化するか
●B社の場合(メーカー、売上40億円、従業員数100人)
一般には知られていないが、その道のプロならみんな知っているメーカー。製品はいいものなのに顧客にクオリティの高さを伝え切れていない。どうすれば次のステップに成長できるか。「課題は会社の知名度のなさだ」というのが社長の認識で、広告を打つ予算はない。
▼
TEKOのメンバーは、売れないのは知名度の問題ではなく、商品の価値を伝えられていないからだと判断。そこで営業現場を広告宣伝の場と位置づけ、1対1の商談の席で商品力を端的に伝えられるツールを開発しようと考えた。
「パンフレットと映像を見せれば商品のよさが一発で伝わる営業促進ツールをつくりました。これは広告会社の一番得意なソリューションでもあります。何となく感じていた自社商品の価値を社員全員が認識。営業部員はプレゼンできるツールを武器にして、自信にあふれてきたそうです」(大澤)
============
TEKOのプロフェショナルたち②
見えない価値をコトバとビジュアルで可視化
コピーライター(CW)
アートディレクター(AD)
左から佐藤益大、山崎南海子(以上AD)、豊田丈典(CW)
企業活動には、価値を共有し、共感を得る必要がある場面が無数にある。経営陣のメッセージは伝わっているか? そして共感を得られているか? 社員全員が自社の商品、サービス価値を同じように理解しているか? 企業、商品、サービスの価値をコトバやビジュアルで端的に可視化する。
============
「社内SNS」導入で、職場の空気が変わった
●C社の場合(サービス業、売上80億円、従業員数200人)
いわゆる老舗企業。着実に経営してきたが、新興のグローバル企業と競合するようになり、「うちはもうダメなんじゃないか」と社員のテンションが低下。丁寧かつ真剣に顧客と向き合う企業DNAが老舗の強み。こうした新興勢力との違いを社員に再認識してもらいたいというのが社長の願い。
▼
事業が何十年も続いてきたというのは、実はそれ自体すごいこと。どうすれば会社のあちこちに潜む「強み」に気づいてもらえるか。そこでスマホアプリの「社内用SNS」を開発し、社員に発信してもらおうと考えた。投稿のルールは一つ。嘘や悪口は絶対ダメ。いいところしか書いてはいけないと決めた。
「社員のモチベーションアップの事案です。アプリにしたのは、みんなから声を上げてもらう必要があったからです。
アプリが盛り上がるまでに少し時間がかかるだろうなと思っていました。そこで社長はご高齢でしたが、『恥ずかしくても、つぶやき続けてください』と頼んで自ら進んで投稿してもらいました。社長のつぶやきが真剣だったゆえに、徐々に社員がみんな発信するようになり、仕事でも積極性が増していったそうです。社長から『雰囲気が変わったよ』とめちゃくちゃ喜ばれました」(大澤)
============
TEKOのプロフェショナルたち③
人を動かす機会や装置を開発
アクティベーションディレクター(ACD)
アクティベーションプラナー(ACP)
左から白根由麻、井川優衣子(以上ACD)、飯田有佳子(ACP)
価値を「どう」シェアすれば最も効果があるかを考え、実践する仕事。例えば社長がメッセージを発信するとき、メールで送るのと、総会でプレゼンするのと、映像で届けるのでは、意味合いが全く異なる。いろいろな手法があるなかで、どの方法が一番伝わり、人は動くのか。そこに必要な演出は何かなどを考える専門職。
============
会社が大きくなって社員の心がバラバラ
●D社の場合(メーカー、売上120億円、従業員数300人)
M&Aを重ね、出自の違う会社が集まったグループ企業。グループ会社間の一体感やシナジーが発揮されていなかった。一体感を出すには何をすべきか。
▼
「会社がどこに向かっているのか。共通のビジョンは何か」がひと目でわかるポスターをつくり、全事業所に貼り出した。加えて、会社のパソコンのスクリーンセーバー用映像を作成。なぜそうした手法を選んだのか。
「出自の違う会社が一緒になるケースは増えていますので、それにともない企業の一体感をつくってほしいというリクエストは多くなっています。
クリエイティブにポスターを選んだのは、社風に合わせました。『営業行くぞ!』『オー!』というやり取りがあるような体育会系の会社でしたから、アナログな手法のほうが伝わるだろうと考えました。しつこく何度も同じフレーズに接することで、社員はだんだん話のネタに使ってくれるようになります。そのうち社内の流行語になり、グループ会社間の交流が活発化し、『一体感のある会社になってきました』と評価を受けました」(大澤)
============
TEKOのプロフェショナルたち④
プロジェクト自体をクリエイティブする
ビジネスオーガナイザー(BO)
クリエイティブビジネス・プロデューサー(CBP)
左から長田陽介(BO)、平野雄大(CBP)
企業を成長させるには、「何をするか」だけでなく、「どう進めていくか」も重要。シナリオを描き、どういったステップで成長していくか、そのためにはいつまでに何を仕上げなくてはいけないかなど時系列で考え、進行をプロデュースする。プロジェクトのゴールを見据えながら、事業のコンディションや景気情勢などに合わせ変革を進めるのが役割。
============