「チョコラBB」シリーズなどのブランドで知られるエーザイが、2015年に販売を開始した高めの血圧をケアするサプリメント「ヘルケア」は、2年連続でカテゴリー売り上げ第1位を記録する。歴史ある製薬会社が本気で血圧ケアのサプリを手がけた背景と、販売をダイレクト通販にした狙いについて、同社ダイレクト通販担当マネージャー、佐藤友昭氏に聞いた。

すべての社員が業務時間の1%を患者様、生活者様と過ごす

――エーザイは「ヒューマン・ヘルスケア」という理念で知られていますが、その理念は、エーザイの事業にどのような形で具現化されているのでしょうか。

エーザイでは、企業理念に基づき、単に製品を出してお客様に満足してもらうだけでなく、常にお客様の声に耳を傾け、言葉にならない喜怒哀楽をくみ取りながら、ご要望を充足させていくことを重要と考えています。

最も特徴的な取り組みとしては、社員一人ひとりが患者様、生活者様と共有する時間を業務時間の1%を使って遂行していることです。もちろん、アンケートや直接のお客様のお声としていただくご要望、ご意見は、日々受け取り、製品・サービスに反映しているのですが、何よりも「言葉にならない思い」を感じ取ることが重要であると、当社は考えています。そのため、各部門で患者様、生活者と同じ空間・同じ時間を過ごし、お客様の視点に少しでも近づけるよう全社員一丸で取り組んでおります。

お客様の声を製品開発に生かした一例を挙げれば、「ヘルケア」という血圧ケアのサプリメントは、2015年の販売当初から飲みやすい「個包装」を採用しました。

本来、個包装にするとコストがかかってしまうのですが、朝早くから仕事をして夜は会食などがある方、オフィスワークだけでなく家事もされている方々など、忙しい毎日を過ごされる方にとっては、手軽に持ち歩くことができて、衛生面でも良い個包装は喜んで頂けるのではという願いからです。

よい製品を届けることがゴールではない

――40~60代の働き盛りの世代で、特に男性の多くはビジネスの要職に就き、部下を抱え、家族を持ち、忙しい日々を送っています。一方で、偏った食事や運動不足、飲酒、喫煙、ストレスなどにより糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こす懸念があります。この世代に対してエーザイではどのようなアプローチをしてきたのでしょうか。

佐藤 友昭
エーザイ株式会社 コンシューマーhhc事業部
トラスト本部 ライフタイムパートナー部 マネージャー

いわゆる「責任世代」の男性には、これまで肩こりを緩和する「ナボリン」や胃もたれを緩和する「セルベール」などのブランドを通じたセルフメディケーションのご提案をしてまいりました。しかし近年は生活習慣にまつわるお悩みを持つ方が増えていることから、それにお応えする製品づくりを始めています。

中でも、加齢とともにほとんどの方が抱える「高めの血圧」に着目し、2015年に「ヘルケア」というサプリメントを販売しました。発売当初からご好評をいただき、多くの方々に継続的なご利用をいただいています。

――「責任世代」の男性に「ヘルケア」が支持されている要因とは何でしょうか。

まずは、トクホ(特定保健用食品)であること、また、身が引き締まる思いですが、やはり製薬会社のサプリであることがご支持いただいている理由の多くを占めていると考えております。

また、多くの方に「体にいい」と知られている青魚、イワシのサーデンペプチドを採用したことも要因です。ヘルケアでは4粒でイワシおそよ3匹分の抽出成分がしっかり確保できるように仕上げていまして、全製品を約20項目で検査し、クリアしたものだけを出荷するという厳しい品質管理の体制もとっています。

さらに、形状についてもご好評頂いております。先ほどご紹介しましたが、ヘルケアではおよそ1日の量となる4粒を個包装にしています。1日およそ1袋、2泊3日の出張なら3袋を鞄の中に入れておけばいいという、わかりやすさと携帯のしやすさで好評をいただいています。加えて、飲みやすい錠剤タイプであることも継続しやすさにつながっているようです。

製薬会社エーザイが開発した血圧サプリ「ヘルケア」。消費者庁許可 特定保健用食品。高めの血圧をおだやかにする「サーデンペプチド」を配合する。ヒト試験で機能性を実証済み。写真は4粒×30包(約1ヵ月分)入りの箱商品。通常価格5756円(税込)
飲みやすい、続けやすい「粒タイプ・個包装」を採用。1日目安量4粒が個包装パックに入っている。

――今では一般的になった「高血圧」という言葉は、もともとエーザイの創業者、内藤豊次氏の発案だとうかがいました。

まだ当社を設立する前のことですが、1924(大正13)年、田辺元三郎商店(現:田辺三菱製薬)にて日本で初めての血圧降下剤を売り出す際に、「高血圧」というキャッチコピーをつくり、この三文字を大きく掲載した新聞広告を展開しました。結果、売り上げが増えたようですが、当時は相当頭を悩まして出した用語のようです。

――近年、日々の健康管理にサプリメントを利用する方が増えてきました。

今はセルフメディケーションの時代です。当社としても、お客様ご自身が体調に合わせて血圧の管理、対策をとっていただくのが今の生活スタイルに合っているということで、これまでの知見を生かして、高めの血圧ケアのサプリメントをお出しすることになりました。より良い製品を開発し、お届けすることがミッションであると自負しておりますが、製品だけでなく、それ以外の対応策(ソリューション)を提供することも、製薬会社の責任だと考えます。

現在は、飲み方などの相談などを、メールやお電話でお答えして、また、日々の生活習慣に活用できる情報(楽しく運動習慣を取り入れる方法や料理の減塩レシピなど)を冊子にまとめてご提供したりしています。最近では、一部ではありますが、ご購入のお客様を対象に減塩レシピの料理教室を開催するなど、生活に役立つ情報や講座を提供しています。

言葉にならないユーザーの感情をくみ取る

――生活習慣病にならないために、エーザイでは「ヘルケア」のほかにどのような製品がありますか。

年齢が高くなるに従って朝の疲労感が気になるというお悩みを持つ方向けに、眠りの質(※)を高める「ネムケア」という商品があります。まだサプリメントとしての商品数が少ないですが、これから、多忙でストレスの多い責任世代の生活習慣をサポートする製品のラインアップを拡充していきたいと考えています。

――ヘルケアも含めてこれらの製品をダイレクト通販で販売していますが、ダイレクト通販も手がけるようになった理由とは何だったのでしょうか。

お客様お一人おひとりの抱えているお悩みを、リアルタイムでより深く知りたい、というのが最大の理由です。これまではグループインタビューやアンケート調査によってお客様の声をうかがってきましたが、それだけではお客様の本音や言葉にならない思いを感じ取るのが難しい場面もありました。

直接、お客様とつながることによって、個々のお客様のご要望を知ることはメーカーにとって非常に貴重なことなのです。

一方で、お客様も最近では自宅に商品が届く便利さを感じられる方が増えています。特に緊急事態宣言によって外出が制限される現在、より健康に関心が強まる中で直接自宅にお届けできる通販は好評で、注文も急増しています。こうしたお客様のご要望にお応えするため、当社も進化していきたいとの思いがあります。

エーザイのダイレクト通販サイトでは、血圧ケアサプリ「ヘルケア」をはじめ、さまざまなサプリ商品を揃える。ダイレクト通販事業を通じて、お客様の様々な声を直接吸い上げて、製品開発や顧客サービス向上などに役立てている。

――今後のダイレクト通販についてのお取組みや、構想についてお聞かせください。

多くのお客様からご評価をいただいており、ダイレクト販売には今後も力を入れていく方針です。とはいえまだ通販で販売できるブランドが少ないのが課題。ヘルケアに続く製品を増やしていきたいと思っています。

そのためにも、ヒューマン・ヘルスケアの理念に基づく実践により、これまで声にならなかったお客様の思いをくみ取って、今後の製品開発のアイデアや既存製品のリニューアルなどに生かしていきたいと思っています。

(※)起床時の疲労感や眠気を軽減