50歳で老後や終活について考えるのは早いか、遅いか──。内閣府が行った世論調査によれば「自身の老後の生活設計について考えたことがある」人の割合は、40代で69.2%、50代で76.2%だから、決して早すぎるということはなさそうだ。50歳の平均余命は男性が32.74歳、女性が38.36歳(平成30年簡易生命表)。確かなプランがあるか、ないかで、大きな差が付く年数といえるだろう。
引退後の二大不安と言えば「お金」と「健康」だが、見逃せないのが「生きがい」の有無だ。明治安田生活福祉研究所(現 明治安田総合研究所)の調査では、セカンドライフを迎えた65~69歳の人の生活全般の満足度と「生きがい」が強く関連していることがわかっている。関連の度合いは「現在の貯蓄額」よりもずっと高かった。
考えてみればお金や健康は生きていくための手段である。充実した人生を送るには、目的となる生きがいが欠かせない。自分は何に生きがいを見いだすか──。将来の備えを行うにあたって、これは非常に重要な視点だ。
“自分の親”の問題も50歳頃から検討すべき
一方、50歳以降安心して暮らしていくために、多くの人がもう一つ頭に入れておくべきなのが“自分の親”の問題だ。存命であれば、親世代は80代が中心になってくるだろう。ちょうどこの頃から、要介護認定率が一気に上昇し始める。
グラフのとおり、国の介護保険における要介護認定率は、80歳から84歳の男性が23.0%、女性が33.9%。さらに85歳から89歳では、これが男性40.8%、女性57.3%に高まる。
実際、株式会社オールアバウトが介護経験者にアンケートを取ったところ、親の介護を始めた年齢は「45~54歳」が35.9%で最多。自身の後半戦のスタートは、親の介護のスタートでもあるわけだ。同アンケートによれば回答者の6割が「介護に対する心構えができていなかった」というから、やはり親の問題は十分に検討しておくべき課題の一つといえるだろう。
「備えあれば憂いなし」の言葉は、中国最古の文献とされる『書経』に収められているという。確かな準備が将来の安心、安全を手に入れる大事なカギであることはいつの時代も変わらないのである。